44:単独行動(二人)
報告はあっさりと終わった。
召喚した翌日にギルドマスター本人が訊ねてきて頭を下げられたけど、それくらい。
数十人に囲まれて質問攻めみたいなのを想像してたんだけど、案内された先には誰もいなくて、ウノさんと、案内してくれた張本人であるギルドマスター……ドミノさん二人だけだった。
これはめんどくさそうとブツブツ言っていた俺に対してウノさんが色々と気を遣ってくれたらしく、ドミノさんも俺達に迷惑を掛けることは本意では無いと快諾してくれたからだそうだ。
それならそのまま放っておいてほしいなぁと思ったりもしたけど、流石にこのまま放っておくのは召喚ギルドにとって損失が大きいからと、懇切丁寧に説明してくれた。
内容は、先日火の鳥が話していたことの繰り返しみたいなもんだ。
火の鳥は終始人の姿だったけど、そこはウノさんが説明をしてくれていたし、火の鳥本人も最初に神霊獣の姿を見せたことで問題なく受け入れられている。
とは言え、やはり言葉で聞くのと目で見るのでは情報量が違い過ぎたみたいで、ドミノさんはしばらく固まってたけど。
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりなさいなのです」
この街に来てからずっとお世話になっているアンジュさんの家に帰ってくると、アルマとミーナが出迎えてくれた。
ほんとお世話になりっぱなしだから何かお礼をしなくちゃならんね。
「フィアもお帰り」
「うむ」
アルマはフィアにも声を掛ける。
フィア……火の鳥の名前だ。
今後ずっと火の鳥呼びする訳にもいかなかったからな。昨日の夜に名付けた。
最初は"とり"を反対からよんで"リト"でいいかなーって適当に考えてたんだけど……。
「クロエのように素敵な名前を頼むぞ」
と、こっちの自尊心をくすぐるように言われてしまったからには本気で考えるしかなかった。
で、その考えた結果がフィアンマ。
そのままだと女性っぽくないから、略してフィア。
「意味は?」
「炎」
満足してもらえたと思う。
「あら? ウノは一緒じゃなかったの?」
奥からアンジュさんが出てくる。
ギルドに行くときはウノさんも一緒だったから、帰りも一緒に帰ってくるだろうと思ったんだろう。
「ウノさんはギルドにいますよ。フィアの話を職員総出でまとめあげて、早いうちに発表するんだそうです」
「あー、そうよね」
「召喚獣のランクも一から見直すとか言ってましたよ」
「うわ……それはご愁傷さま」
亜獣とか霊獣やら、新たな……というか正式な基準が判明したからな。
それぞれの魔力最高値となる個体はフィアが教えていたからランクはそいつらを基準にするだけだけど、それでも今まで確認された召喚獣の事を考えると楽じゃないか。
アンジュさんは両手を合わせて何かを拝むように頭を下げた。
……そういえば、タイラントベヒーモスは神獣の中でも中程度って言ってたっけ。
ギルドが確認している中じゃそいつが唯一の神獣だから、ランク付けはそこまで大変じゃないのかな?
「よし、では行くとするか!」
フンッと気合いを入れてフィアが声をあげる。
先の報告だけど、そこまで時間は取らせないとウノさんが言ってくれたので、それじゃあ終わったら街をみてまわりたいとフィアが言ったのだ。
それに同調したのが、ミーナとアルマ。と、アンジュさん。
一日経っても、アンジュさんはフィアとの距離感を掴みあぐねている感じがする。
ミーナが物怖じしないだけか?
クロエもてっきり一緒に行くと思ったんだけど、遠慮した俺に気をつかってくれたのか一緒に残ってくれることになった。
「夕食までには戻ってくるぞ」
召喚獣は食事をする必要はないんだけど、娯楽の一種として楽しむ個体もいるそうで、フィアもその内の一体。
特に人の姿になると味もしっかり感じ取れるからと昨日の夕食を非常に楽しんでいた。
これからも食事当番を頑張ろうと思った。
「あぁ、いってらっしゃい。気をつけてな」
「ふふん、誰に物を言っておる。が、その気遣いはありがたく貰っておくぞ」
ミーナ達を引き連れフィアは颯爽と街へと繰り出していった。
人の家に一人残される俺。
ヒルデさんも俺達とは別でギルドに行ってるからここにはいない。
「さて」
十日間以上お世話になっているから勝手知ったるもんだけど、流石に一人は落ち着かないからクロエの元へ。
ちょっと手伝ってほしい事もあるし。
《皆さんはお出かけになりましたか?》
「ああ。たった今ね。楽しそうに出てったよ」
《人の街は初めてと言っておりましたからね》
「だな」
お小遣いも渡したし……金の使い方とか聞いてこなかったし教えてないけど、分かってる、よな?
大丈夫か?
大丈夫か。
皆一緒だし。
《マスターはどうされるのですか?》
「ん? 俺は街の外に出て節約上手の検証しようかなって思ってる」
コピーしたスキルだから魔力半減がコピーキャットに適用されないのは確認済みだけど、それ以外……特に異世界憧憬と創造:異がどの程度までなのか確認しておきたい。
《お付き合いいたします》
「実はそのつもりだったからありがたいよ。んじゃ早速だけど、行こうか」
馬車は、アルマ達の方が早く帰ってくるかもだしそのままにしておこう。
鞍と手綱を取り出し、それをクロエに取り付け騎乗スタイル。
そのまま街入り口に向かい、衛兵のおっちゃんに挨拶。
パッカパッカと二十分程歩いた先で検証作業をする事にした。
「とりあえず魔力回復薬をいくつか……」
五本を用意し傍らに置く。
今までなら一口飲むだけで全回復してたけど、念の為。
……。
《風が気持ち良いですね》
「だなー」
風はそよそよ陽はぽかぽか。
目を瞑っているとそのまま眠ってしまいそうな陽気。
……。
…………。
はっ! いかんいかん。このままだと本当に寝てしまう。
それはそれでアリだけど、やる事やってからだ。
「まずは創造:異からだけど……これはこうする以外の方法が思いつかないんだよな」
どこまで創造できるのかという確認は、これは以前やったようにお米を二十キログラム単位で創造していく。
前までは三十キログラムが限界だったけど、節約上手を覚えた今なら単純計算で六十キログラムまではイケるハズ。
「うん。予想通り」
お米を六十キログラム創造した辺りでまだ少し余裕がある程度。限界は六十五ってところだろうか?
まぁそこまで無理をして魔力が無くなる事態は避けたい。
「魔力を回復して、と」
用意しておいた魔力回復薬を一口飲むと、それだけで魔力が全て回復していくのが解る。
まだ一口で全回復するのに驚きだ。
……今後これを全部飲み干す必要が出てくる事ってあんのかな?
余らすのも衛生的にどうかと思うから結局飲み干してるんだけど。
まぁそれは今はいいか。副作用とかないし。
「次は、異世界憧憬だな」
……周りを見ても目に見える魔物は居ない。
街からそんなに離れてないし、見通しもいいからな。この辺りに魔物はあまりいないんだろう。
どうしよう。
《遺跡の奥の森に向かいますか?》
少し悩んでいるとクロエから森に向かってはどうかと提案された。
「そこって、ここに来る時に通ったあの森?」
《はい》
「……遠くない?」
馬車で半日掛かる道のりだぞ?
森に着いた頃には夕方になってる。
《今は馬車を牽いているわけではありませんし、急げば数十分で到着できるかと》
「え? あ、そうか」
クロエに乗って行けばそれくらいで着くのか。
「じゃあ、頼んでいい?」
《お任せを。スピードを出しますのでしっかり捕まっていてください》
再びクロエに騎乗。
言われた通りにしっかりと手綱を握り、それを確認したクロエが森に向かって駆け出した。
あっという間に入り口まで着いた。
早かった。
そして怖かった。
ちょっと認識が甘かった。
疾走するクロエの上に数十分って結構くるものがある。
「これでまだ全力じゃないってんだから末恐ろしい」
快適性を無視すれば馬車を牽いていても同じ速度は出せるって言ってたけど、今後も快適性を重視した走りを期待しています。
「でよ。トルネに向かう時はこの森ガン無視で突き抜けたからな。どんなのがいるか分かる?」
《走っている時にバイトタートルを見かけました。甲羅の強度が中々のものだと記憶しています》
「……甲羅か」
コランダムクラブといい、バイトタートルといい、守りの堅い魔物に縁があるな。
《他にも何種類かの魔物を見かけましたが、異世界憧憬を試すのであれば丁度良いかと》
それは確かに。
「よし、じゃあそいつで。聞き耳使って歩いてたらその内見つかるだろ」
俺はバイトタートルを求めて森に足を踏み入れた。




