43:鳥?
「凄い。火の鳥、凄い」
「うむ。もっと褒めてくれてもよいぞアルマよ」
アルマが拍手をしながら火の鳥を褒めている。
何が凄いのかというと、火の鳥が二十メートル程あった自身の巨体を通常の小鳥サイズにまで縮小した事だ。
お互いの自己紹介の後に、とりあえず何をするにしてもそのデカい身体のまんまだと色々不便。何とかなんない?
って言ったらやってくれた。
魔力体だから自由自在だぞと得意気だった。
「こうやって見るとただの青い鳥だな」
尊大な喋り方は変わっていないけど、小鳥サイズになった火の鳥は炎を纏っていない。
「まぁこれが本来の姿だからな」
俺の周りを飛びながら何でもない様に火の鳥が言った。
「どういう事? 火の鳥じゃないのか?」
「神が我らを創る際に基となった生物が居てな。余の場合はそれが鳥だったのだ」
「へぇ」
他の三体も基は普通の猫と亀と蝶らしい。
へぇ。
「まぁこれはこれで可愛いと自負しておるのだが……」
飛ぶことをやめ地面に降り立った火の鳥は、身体を徐々に大きくさせていき二メートル程でストップ。
「うむ。やはりこれくらいはないと威厳が無いな」
バサッと翼を広げると、幅は四メートルくらいになる。
その時に舞い散った炎が綺麗だ。
まぁ炎と言っても視覚化された魔力だから触れても熱は無く、それらが草木を燃やす事もない。
「明確な攻撃の意思を持たせれば可能だぞ?」
そう言うと空気が歪み、周囲の熱量が一瞬だけ上がった。
……これ召喚された時にやられてたら干からびてたろうな。
「まぁこういう事も出来るぞ。という事だ。それよりもカナメ。其方ら三人の事はわかったのだが。先ほどから後ろに控えておるその者達は誰だ? 其方の従者か?」
後ろ……あ、ゴッチさん達の事だな。
さっきからどうぞお構いなくみたいな顔してたけど、流石にそうもいかないでしょうよ。
そう目で訴えたら訴え返された。
この場は全部俺に任せると。
……仕方がない。
「えっと、この人達はあそこに見える街の住人で――」
「トルネの街だな」
「知ってんなら話は早い。職業柄と言うか、街の文化的に今回の召喚の内容が気になったみたいで、要は見学者だ」
さっきは火の鳥の事を中心に話をしたので、今度はこちら側の事をメインに話をする。
と言っても流石と言うべきかこの火の鳥、異界から覗いてた事もあって物を知ってた。
「暇してたから」
他の神霊獣三体とこちらの世界を覗きながら神霊獣トークをするのが日常だったらしい。
ただ全部を全部って訳じゃない。
異界では基本寝て過ごしていたそうだけど、それが人間の様に一日二日のレベルじゃ無く、それこそ数百年単位で寝る事もあるからだそうで。
火の鳥が最後に眠りについたのは百二十年前で、二年前に目を覚ました。
だからその間の事は知らない。
今回は誰か他の神霊獣が起きてくるまで待っている途中の出来事だったと。
「それにしちゃ他の三体と争ったんだよな?」
「うむ。余もびっくりした」
最初の頃は数百年も寝るなんて事は無かったらしいが、その様に過ごし始めてから四体全員が同じ期間に目を覚ました事は今まで数える程しか無く、他の三体が言うには「強制的に起こされた。びっくりした」らしい。
適正サイズの扉が用意されれば起こされるって事だろうか?
……結局火の鳥中心の話題になっちゃったな。
「とりあえず一旦街に戻ろうか。ゴッチさん達もそれで大丈夫ですか?」
振り向き確認すると、問題ないとの無言の頷き。
そして驚愕した顔。
……何か変な事言ったかな?
違う? え? 何?
「いや……あの……後ろ……」
「後ろ?」
後ろって火の鳥?
また何をやっているんだと後ろを振り向くと、そこに火の鳥の姿は無く、変わりに一人の女性が立っていた。
青い髪が首の辺りで切り揃えられた同い年くらいの女性。
……誰?
「では参ろうか」
……。
…………。
「いや、誰!?」
さも当然の様に歩かれましても!!
そして首を傾げられましても!!
「何を言っている。余に決まっておろう」
いや、決まっておろうとか言われましても……余?
今、余って言った? 言ったよね?
……。
《マスター、こちらの女性は先程の火の鳥です》
答えはクロエから返ってきた。
「人の街へ行くとなればこちらの方が都合が良かろう? 自慢ではあるがこの姿も可愛いと自負しているぞ」
髪とお揃いの青を基調としたドレスを靡かせ優雅にターン。
……あぁ……うん。
そっか……火の鳥なんだ。
説明プリーズ。
「人の姿になった」
……もうちょっと詳しく。
「細かい所を気にするのだな。……まぁ良い。カナメも知っての通り、我ら異界の存在は血肉があるわけではない」
うん。知ってる。
後、細かくは無い。断じて。
「魔力体故な。大きさ程度であれば霊獣でも出来るヤツは居るだろうが、神霊獣ともなればその姿さえ自由自在というわけだ」
つまり?
「人の姿になった」
……なるほど。
皆が驚いていたのはそれが理由って事だな。
それはわかった。
「では参ろうか」
説明すべき事は全てしたと言わんばかりに再び歩を進める火の鳥。
それに付いて行くアルマとクロエ。
アルマに関しては、逞しいというか何というか……あのコミュニケーション能力の高さは何処からきてるんだろか。
「……ほんと、とんでもないのを呼び出したもんだねぇ」
アルマと話しながら街へと向かっていく火の鳥の背中を見つめながらヒルデさんが溜息を漏らした。
「こりゃ召喚ギルドの連中が黙ってないよ」
「えーっと、黙ってないって、具体的には?」
その言い方から嫌な予感はするけど、出来れば面倒臭い事は御免被りたい。
「数日間は拘束されるだろうねぇ」
「……黙っていれば分からないんじゃ」
「それは無理だねぇ」
ヒルデさんの視線がウノさんへと向けられる。
「あー」
ウノさんって召喚ギルドの職員でもあるのね。
「街の人間じゃないとか、そんな事言ってる場合じゃ無いからねぇ」
「ですよね」
普段なら俺達外部の人間が気にする問題じゃ無いけど、それはそもそも滞在中に召喚スキルを覚えられない事を前提としているから。
平均で二~三年。そこまでする奴ならもう街の人間扱いでいいだろうけど、殆どの人間はその前にこの街を出る。
その後に必ず覚えられるという保障は無いが、覚えたとしても報告義務なんてものも無い。
でも俺は覚えてしまった。
さらにその上でとんでもない奴をギルド職員の前で召喚してしまった。
発生するよね。義務。
「おーーい。何をしているのだーー? 早く行くぞーー」
……まぁしょうがないか。このまま黙ったまんまってのも気持ちが悪いし。
面倒臭くなかったらいいなぁ。
俺はそう願いながら火の鳥の下へと向かった。




