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異なるスキルの使い方  作者: 黒服
42/47

42:火の鳥

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過去本文での門番を衛兵に変更しました。

 ヒルデさんの教えは十日間続いた。

 これを長いと思うか短いと思うかは個人によるところだろうけど、終わって考えてみると俺は長いなと思った。


 継続的鍛練が必要な技術の部分は召喚陣のみで、それは初日に教わって、尚且つ個人でも出来る。

 歴史やら何やらも五日目までに全部教わったし、残りの五日間は街の散策やら街外周部で魔物を狩ったりとかで召喚には直接関係の無い過ごし方をした。

 律儀に付き合ってくれたミーナの時はどうだったかと言うと、内容は殆ど一緒。しかも街出身者だったから後半部分は無く、五日で全部終わったそうだ。

 スキルに至っては確実に覚えられる方法なんてないから、後は各々精進するように。って。

 

 だから俺は長いなと思ってしまった訳だ。



 で。

 五日目で俺が召喚スキル覚えてる事がバレた。

 いや、その日初めて魔力で召喚陣を描いたんだけど、どうも召喚スキルを覚えていると召喚陣が反応するらしくてさ。

 具体的にはちょっと光る。

 描いた時に光ってて綺麗だなぁとか思ってたら突っ込まれた。

 実はヒルデさんがイノセントグリフォンを召喚した時もちょっと光ってたらしい。

 そんなん気付かないってば。

 

 でも、コピーキャット関係無く黙ってた理由が一応ある。


「ミーナってスキル覚えるまでどれくらい掛かった?」

「ミーナは半年くらいなのです!」


 笑顔なミーナの手前、五日で覚えましたとか凄い言い辛いじゃないか。

 しかも半年ってかなり早いらしくて、平均で二、三年掛かるところをなんと半年なのですよ!

 とか、得意気に言われたらもうね。

 結果としてミーナには尊敬の眼差しを向けられたから俺の考えは杞憂だった訳だけどさ。



 まぁそんなこんながありまして、十一日目の今日。総括と実践を兼ねて街から少し外れた平原に来ている。

 宝千種を使うから念の為ってヤツだな。

 アルマはまだ覚えていないし、ミーナは前日にお手本として小鳥を召喚している。

 この場で召喚するのは俺だけだ。

 ……だけなんだけど。


「まさかこの短期間で覚えるとは」

「最初から覚えてたとかじゃないよな?」

「それは無いわよ」

「私でも二ヶ月掛ったのに」


 何故かゴッチさん達も居る。


「ワシが声をかけたのさ。それだけの媒体を使おうってんだからねぇ。この街の人間なら気になって当然だよ」


 基本引きこもりなエリックさんが此処に来ている事が何よりの証拠だそうだ。


 そういう事なら……いやまぁそうでなくても別に居てくれて構わないんだけどね。

 何でかな? ってちょっと気になっただけでね。

 つかサラッと言ってたけどウノさん二ヶ月で覚えたのか。流石天才だな。


「じゃ、いきます」

 

 目を閉じ、左手を地面に付ける。

 熟練者はそんな事しなくても片手間で余裕らしいが、俺はまだ覚えたてほやほやだからな。


 左手に魔力を集中させ、思い浮かべるはこれまで散々書き写してきた召喚陣。

 媒体からの魔力ロスが少なくなるように念入りに確認。

 ここで確認を怠ってミスがあると魔力が漏れてランクが低くなるからな。

 ミスは……無い。大丈夫。

 よし。

 そのイメージを焼き付けたまま魔力を放ち描いていく。

 

 そこまで早く描ける訳じゃないし、急いで描いてミスをしてしまったら元も子もない。

 焦らずにゆっくりと。早さを求めるのはホントのホントに一番最後。


「……こんなもんか」


 じっくり時間を掛けたからか、俺の足元には今までで一番良い出来と自負したい召喚陣が描かれている。

 とりあえず一段落。

 

「マジで覚えてんのな」


 足元の召喚陣が光ってるって事は、その中心に居る俺が召喚スキルを覚えてるって事。

 普通五日で何かしらのスキルを覚える事は無いだろうから、エリックさんの驚きも尤もだと思う。

 俺の固有スキルが反則なだけだ。


 さて、後は宝千種(これ)を中心に置いて……こんなもんだな。


 後は召喚スキルを使うだけ。

 周りの皆も固唾を飲んで見守ってくれて…………はないな。

 今か今かと心待ちにしてる目だ。


 ――いいでしょう。

 その期待に応えてあげようじゃないか。


 俺は召喚スキルを使用する。

 そうすると宝千種に魔力が流れ込むのが分かった。


 光を放った召喚陣が宝千種へと収束されていくと、内包されていた魔力が溢れ出し召喚獣の身体を形成し始めた。






 形容するならそれは夜空だ。

 果てしなく深い、何処までも拡がる漆黒に近い青。

 星の瞬きは無く、見ていると吸い込まれそうな程の。


 俺は()()()を見上げていた。

 俺だけじゃ無くてその場に居た全員が同じ様に見上げていたと思う。

 さっきまで青空だった場所に夜が浮かんでいるんだから。

 

 そんな誰もが息を吞む静寂の中、その夜空が俺に語りかけた。

 

「其方が主だな?」

 

 と。

 

 夜空の正体は巨大な火の鳥。

 揺らめく炎は漆黒に近い青。

 両翼を拡げたその大きさは装甲馬車を軽く超えてる。

 そんなものが空に浮かんでる。

 

 わかってる。なんでそんなヤツが空に浮かんでるか理解してる。理解した。

 俺が召喚したからだ。

 

「違うのか?」

「……いや、俺で間違いない」

 

 となれば何時までも呆けてる場合じゃないよな。

 俺が召喚主であることを伝えると、火の鳥はその場でくるりと身体を一回転させ地上へと降りて来た。

 

「感謝するぞ人の子よ!」

 

 そしたらめっちゃ感謝された。

 

 

 もうそっからの火の鳥が喋る喋る。

 最初に感じた荘厳さとか高貴さとかは既に無い。

 

 自分の喋りたい事を一方的に話してこっちが口を挟む隙を与えてくれないこの感じ、近所のお喋りだったおばちゃんを思い出す。

 この日をどれ程待ち望んだことかとか、ほんとありがとうとか、感謝されて悪い気はしないけどそろそろこっちの話も聞いてほしい。

 

「――でな、余はチャンスと思った。しかし余の他にも出ていこうとするヤツがおってな、そこはもうパワーでねじ伏せて」

「ストップ、ストップ」

 

 無理にでも止めないとほんと何時までも喋ってそうだ。

 

「ん? どうした? ここからが余のカッコイイ所だぞ?」

「それは後にしてくれ。ちょっと、まず情報を処理させて」

 

 無理にパンチのジェスチャーとかしなくていい。

 

「えっと……」

 

 情報を整理するにも俺一人で出来る気がしない。

 出来れば召喚の先輩であるゴッチさん達に手伝ってもらいたいとこだけど……あまりに予想外過ぎたのか、この状況にかなり困惑した様子。

 多分あれ、俺以上に脳が情報を処理し切れてない。

 ヒルデさんはヒルデさんで、冷静っぽいけど何かブツブツ言ってるし……。

 

 アルマ……もダメだな。整理するどころか余計ややこしくなりそうだ。 

 

 となれば。

 

「クロエ、頼む」

《畏まりました》

 

 クロエの協力の下、隙あらば自分語りをしようとする火の鳥の話を纏めるとこうだ。

 

 一つ。

 火の鳥は世界創世から存在している四体居る神霊獣の内の一体。創造神の使いであり、強さも格も異界ではトップクラス。

 一つ。

 人間が普段契約しているのは亜獣と呼ばれる、一番格の低い存在。

 一つ。

 亜獣の他には霊獣、神獣が存在しており、亜獣より霊獣が、霊獣より神獣の方が格が高い。勿論神霊獣は別格。

 一つ。

 今の今まで神霊獣を呼び出せるほどの媒体が無かった為、皆すっごく暇してた。契約の場で他の神霊獣三体を全員ぶちのめした余ってすごくない?

 

 ……。

 

 細かい部分は省略するけど大体こんな感じ。

 

「歴史的瞬間に立ち会ってしまった」

 

 結構時間を掛けたからか、流石に皆落ち着きを取り戻してる。

 そして落ち着いた結果、召喚士界隈にとったらとんでもない情報のオンパレードだった事を理解したんだろうな。

 ミーナを除く全員が同じ事を口にした。

 

 ……あぁ、そういえばもう一つ聞きたいことがあった。

 

「契約ってどうするんだ?」

 

 場の空気的に何かもう契約した気でいたけどまだ召喚しただけ。

 

 でも、別にコイツと契約出来なくても良いかなって思ってる俺がいる。

 なんていうかさ、色々台無しというか……確かに凄いヤツなんだろうけど、正直気が進まない。

 いっそ他にいる神霊獣とチェンジしてくんないかな。

 

 そんなこっちの考えなぞ知ってか知らずか、当の本人……本鳥は、思い出したように「おぉっ」と一つ声を挙げると、笑顔と思わしき顔で答えた。

 

「もう契約しているぞ」

 

 と。

 

 …………は?


「我ら神霊獣は呼び出される事自体稀であるからな。と言うより今回が初めてだ。余としてもまた何時くるかもわからぬ時を待って過ごしたくはない」


 …………つまり?


「召喚した時点で契約は成立だ」

 

 

 かくして俺は火の鳥と強制的に契約させられてしまった。

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