41:ランク
その後も座学が続いて……流石に夜が明けるまでって事は無かったけど陽は落ちたから、ヒルデさんに許可を貰って裏庭で一泊。
馬車を取り出した時ヒルデさんに感心されたものの、大きく驚かれるって事は無かった。
年長者の余裕ってヤツだろうか。
「あー、久し振りに勉強したって感じだー」
俺はベッドに倒れこみ腕を伸ばす。
リコッタでエルドさんに冒険者心得を教えて貰って以来だから、一年振りくらい?
……あれ? じゃあそんなでも無いのか?
「うん。楽しかった」
アルマは俺とは対照的に満足気だ。
今日教わった事の殆どは歴史やら何やらで、スキルそのものや召喚陣についてはまだなんだけど……アルマにしてみればそんなの関係無いか。
その日の夜は、どんな召喚獣が呼び出されるか、こんな召喚獣だったらいいなぁと言い合いつつ、結果「何でも愛せる」という風に落ち着いて眠りについた。
翌日。
ここから本格的に召喚に付いて学びだす。
今日のお題は召喚陣。
ヒルデさんが黒板に召喚陣を描いてくれて、ここの部分はこうだ、ここの部分はああだ、と丁寧に教えてくれる。
因みに黒板に描いた召喚陣からでも召喚は可能だそうだ。
「最初は魔力は使わずにこうやって描くもんさ」
最初から魔力のみで描ける人も居るけどそう数は多く無いっぽい。
ミーナに目を向けると「私には無理なのです」と首をふられた。
うん。ごめん。そんな感じはした。
「これを描けないとお話にならないよ」
という事なので今日はひたすら召喚陣を書き写す一日だった。
腕が痛い。
二日目。
今日は呼び出せる召喚獣について。
事前にアンジュさん達からも聞いていたので復習みたいなものと、そこから先に進んだちょっと細かな部分。
「もう知っているだろうけど、召喚獣を呼び出すには媒体が必要だよ」
世の中に存在している全ての物には魔力が含まれており、理論の上では昨日食べたミカンの皮を使っても召喚は可能との事。
ただそんな媒体で呼びだされる召喚獣はまず居ないだろうし、居たとしても……って話だ。
「魔力媒体が良い物であればあるほど高位の召喚獣を呼び出せる」
確実に、とは言い難いが、逆に質の悪い媒体から高位召喚獣が呼び出される事は確実に無いとの事。
「私達人間が決めた基準だけどねぇ」
その辺り、わかりやすく説明してくれた。
人間が定めた基準にのっとると、召喚獣にはランクがある。最低ランクが1、最高ランクは今の所10。8からが高位扱い。
魔力媒体にもランクがあって、こっちも最低1、最高10だ。
ランク10の召喚獣がランク10未満の媒体から呼び出される事は無い。
これは内包する魔力の量が関係している。
召喚獣の身体は魔力で構成されている為、人間の世界に顕現するには相応の魔力が必要となる。
で、その必要となる魔力は媒体に内包されているものしか使えない。
召喚陣の役割は召喚獣の世界に干渉する為の鍵。
魔力媒体の役割はその扉。
そういう風に考えた上で、ランクのでかい召喚獣程身体がでかいと想像してみろと言われたので想像してみたら、あぁ成程確かに。と納得出来た。
ランク1の扉だと小さすぎて通れない訳ね。
だから低ランク媒体からは高ランク召喚獣は召喚されないし、高ランク媒体からは低ランク召喚獣も召喚される。
「召喚獣に聞けばその解釈で問題無いらしいしね。ま、奴らも扉の前で誰が出ていくかやり合ってるみたいだし、高ランクでもそこまで極端にサイズ差のあるヤツは出てこないさ。それに小さいヤツが召喚されても少しはでっかくなって出てくるんだ」
どういう事かと言うと、媒体の魔力を使って顕現している為、その分がランクにプラスの補正を与えてワンランク上で顕現するらしい。
へぇ。
「1から2程度だと大したこと無いけどねぇ。7から8、8から9、9から10、と上に行くほど馬鹿に出来ないよ」
成程。
「はい」
「はいカナメ」
「ランクの基準ってどこですか?」
魔物に当てはめて考えると単純に戦闘力って話だけど、そこまで単純じゃないようにも思える。
「その召喚獣がもってる魔力量だねぇ。魔力があるヤツ程出来る事は多い。戦闘にしても、そうじゃないにしてもだ」
「……それって誰でも見たらわかるもんなんですか?」
少なくともイノセントグリフォンを見た時はそんなの分からなかったし、今見てもやっぱりよくわからない。
この真実の眼をもってしても。ってヤツだ。
「誰でもは無理だねぇ。専用の魔導具を使うか、専用のスキルを使うかのどっちかだ」
ヒルデさんはそう言うと棚からゴーグルを二つ持って来て机の上に置いた。
話の流れ的にその専用魔道具なんだろう。
「これを使ってみな」
「ミーナは知っているのでお二人でどうぞなのです」
その言葉に従って俺とアルマはゴーグルを一つずつ装着。
うん。まだ普通のゴーグル。
「そのままイノセントグリフォンを見てごらん」
言われた通りに見てみると……イノセントグリフォンの頭の辺りに数字が浮かんで見えた。
「4?」
アルマが見えている数字も俺と同じみたい。
「それが召喚獣のランクだよ」
ほう。
思った通りの専用魔導具で、ランク化された魔力を表示させる効果を持っていた。
最初は総量をそのまま数字化出来る魔導具を作ったそうだけど、情報の管理がし辛いって事でランク表示の魔導具に改良。
ランクのボーダーラインを決めたり召喚しまくったりと結構な年月が掛かったらしく、今でも新種が契約されるたびに更新しているんだってさ。
この魔導具を使って表示されない召喚獣は新種だから、この街の住人で新種を契約した人は召喚士ギルドに申請する義務だそう。
その辺り俺達みたいな部外者は関係ないからそこまで気にしなくてもいいらしい。
野良召喚士? とかもそりゃ居るだろうからな。
因みにこの魔導具、人のレベルやら魔力やらは表示されない。
あくまでも召喚獣専用って事だ。
「で、こっちが媒体用の魔導具だねぇ」
そう言ってヒルデさんが懐から取り出したのはルーペ。
成程。ベタンさんはこれを使ってたのか。
「大物は無理でも小物くらいならこれでわかるよ」
さぁどうぞと言わんばかりに促されたので、手に取って周りを見てみた。
「……何も見えないんですけど」
この世の全てに魔力が存在してるって話なのに最低とされる1すら見えてこない。
どういう事?
アルマに渡して確認して貰っても何も見えない様だった。
「あまりにも低い魔力は数字化されないようになっているからねぇ。カナメ、昨日お前さんが持ってきたヤツがあるだろ? それで見てみな」
そういう事か。
ならば改めて、と、宝千種を取り出し、魔道具で見てみる。
「……何も見えないんですけど」
いや、ここは見えるパターンでは?
「大物小物ってのは物質の大きさじゃなくて魔力量の事さ。その魔道具で見えないって事はランクで言えば8は超えてるって事だねぇ。それ以上は専用の設備が無いと分からないんだよ」
……そういえばベタンさんも「専用の設備が~」とか言ってたっけな。
これ一つに魔導具じゃなくて設備がいるとか……。
……。
《それに数字化される程弱くはないつもりです》
興味本位でクロエを見たら少し悲しげにそう言われた。
ごめんなさい。




