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異なるスキルの使い方  作者: 黒服
36/47

36:召喚士達

 当然というか地下二階も何も無かった。

 ので現在地下三階。


 なるほど、大規模召喚の研究って言ってたくらいだ。

 目の前にはデッカイ召喚陣らしき模様と、驚きつつこちらを窺っている方々が五名。

 そして発動するコピーキャット。

 コピーしたスキルは【天才(ジーニアス)】と【節約上手】


 どちらも常時発動型の固有スキルで、天才の効果が[スキルを覚えやすくなる]で、節約上手が[魔力を消費する際の消費量を半分にする]というものだった。


 思わず変な声が出そうになったけど何とか堪えた俺は偉いと思う。

 場所が場所なら変な声を出した後暫くニヤニヤしていた自信もある。

 そんな事をすれば不審者扱い間違いなしだろう。


 ……ともあれ目の前の五人だ。

 多分だけど話に聞いていたトルネの街の召喚士かな。

 流石の真実の眼もそこまではわからんけど、多分そうだろう。

 とりあえずこちらに敵意が無い事をアピールしないと。


「えっと、こんにちわ」

 

 だだっぴろい部屋に俺の声が良く通る。

 先制挨拶が功を奏したのか、俺が挨拶をするとまだすこし警戒しながらも一人の男性が前に出て来た。


「……あぁ、済まない。ここに人が来るのは珍しくてな。少し警戒させてもらった」


 まぁそりゃそうだろうな。

 向こうからしたら俺達は得体の知れない連中な訳で、状況も状況だ。

 退路は俺達の後ろにある階段のみ。


「それは仕方ないかと……あ、でも自分で言うのも何ですが怪しい者ではないですよ」


 怪しい奴は皆そう言うと昔に聞いたことがあるけど、こちとらやましい考えなんざこれっぽっちも無いですし。


「……」


 でもこれは完全に言葉の選択肢を間違えたな

 こっち見てる、めっちゃこっち見てる。

 

 だがしかしここで目を逸らしたら負けだ。

 ならば負けじと目に力を込め――

 

「まぁそうだろうな」


 ――る前にあっさりと誤解が解けた。


「実際ここには野党の類も殆ど現れないし、キミ達からはそういうヤツら特有の嫌な感じもないしな」


 男性はフッと笑うとすぐに警戒を解いた理由を説明してくれた。


「俺はゴッチだ」

「あ、カナメです」

「アルマです」

《クロエと申します》


 ゴッチさんの自己紹介に合わせて俺も名乗る。

 そんな俺に続いて隣にいたアルマとクロエも自己紹介をする。


 クロエが喋ったことにゴッチさんが特に驚いた様子が無かった事に少しだけ驚いた。

 よくみれば残りの四人……いや、三人か。三人も特に驚いた様子は無い。

 暁の時は結構ビックリされたもんなんだけど。


「私はアンジュ」 

「俺はエリックね」

「ウノです」

「ミ、ミーナなのです!」


 ゴッチさんが名乗り此方への警戒が解けたところで残りの四人も自己紹介をしてくれた。

 アンジュさんはザ・魔法使いといった感じの尖がり帽子を被った女性。

 エリックさんは軽戦士かな? クルスさんと似たような感じのする男性。

 ウノさんはかっちりした服を着込んでいて神官様に見えなくもない。中世的な顔立ちをしているけど真実の眼が示すに女性だ。見た目からして出来る人。天才の持ち主でもある。

 最後のミーナは女の子。背負ったリュックサックをパンパンにしている様からはとても節約上手には見えないけど……まぁアレは魔力に関する事だから物質には影響しないんだろう。


 やはりというか、ミーナという子が新人召喚士で、残りの四人が護衛ってところだろう。

 因みに唯一驚いていたのがこのミーナって子だ。


「折角足を運んだと言うのに、此処には何も無かっただろう?」

「はは……それは知っていたんですけど、トルネの街に向かう途中で、遺跡の雰囲気に誘われて折角だから、と」

「そうか。そう言ってもらえると少し嬉しいもんだ」


 遺跡の雰囲気が良い。という言葉に気を良くしてくれたのか、まだすこしばかり張り詰めていた空気は解け、そこからこの遺跡の事や自分たちの事を話してくれた。

 この五人、じゃなくて四人は全員がトルネの街出身で召喚スキル持ち。

 冒険者なのかと思ったけどそうでは無く、街の自警団の一員で、新人召喚士の護衛兼監督役としてこの遺跡に同行する事も仕事の一つなんだそうだ。

 で、新人召喚士とはやっぱりミーナの事だった。


 それ以外の殆どはクロエの事前情報通り。


 すこし気になったからクロエの事について訊ねてみたんだけど、召喚獣の中には言葉を喋る者もいるそうで、トルネの街にもいるらしい。だからゴーレムもまぁそういうもんだろうと認識していたと。


 そんな話を聞いて瞳を輝かせているのはアルマ。

 召喚獣について熱心に質問をしていて、満更でもないアンジュさんが得意気に説明をしてくれている。

 何かを必死に書き取っているミーナの傍にはエリックさんとウノさんが控えており、時折クロエに話しかけている。 

 ミーナはミーナでちらちらと興味ありげにクロエを見てるんだけど、隣にウノさんがいるから話しかけられないでいるみたい。

 勉強中にごめんなさいね。


「まぁ勉強と言っても形骸化されたもので、ただの召喚陣見学ツアーになっているがね」

「そんなもんなんですか?」

「そんなもんだ。昔は学べることも多かったんだろうが、現代ではより効率化された召喚陣が使用されているからな」


 召喚スキルを覚える者は此処に来て、始まりの召喚陣を見て魔力効率やら何やらを学ぶそうだが、先人達のお蔭で学びつくされた今ここから新たに学べることは何一つ無い。

 んでも、召喚陣を昇華させた先人に敬意をって意味で新人をここに連れてくるのが恒例になっているそうだ。


「……じゃあ、あのミーナって子は何をあんなに一生懸命書いているんですか?」


 これが見学ツアーだとするならそこまで何かを書き取る必要は無いと思うんだけど。


「あー……その、ミーナは何事にも一生懸命な子でな」


 ポリポリと頭を掻きながらバツが悪そうにしているゴッチさんの様子から、一生懸命という表現が凄く好意的な解釈である事が窺える。


 窺えてしまった。


「で、出来たのです!」


 ゴッチさんとの間に流れた微妙な空気をぶち壊すかの如く元気一杯な声がフロアに響き渡った。


「うん。ご苦労様です。ミーナ」

「はい! ありがとうございますです!」


 下げられたミーナの頭を優しく撫でるウノさん。


「お? 終わったか?」

「はい! 終わりました!」


 途中から完全にアンジュさんとアルマの会話に混ざっていたエリックさんもミーナへと声を掛ける。


「じゃあこの話はまた後でね」

「はい。ありがとうございました」

「いいのよ。私も彼女の事が知れて楽しかったし」

《それは何よりです》


 女性たちは女性たちで親睦が深まっているな。

 良い事だ。


「終わったって事は皆さんはこの後直ぐにトルネの街に戻るんですか?」

「ああ。さっきも言ったが、ここでやれる事は何も無いからな。後は帰るだけだ。そうだな……よければキミ達も一緒にどうだ?」


 俺達にとってもこれ以上此処に居ても意味がないだろうしな。

 アルマはすっかりその気だし、ご一緒させてもらおう。


「ええ。よろしくお願いします」






「マジで出て来たよ……」

「ホントね。収納スキルってだけでも珍しいのに……」

「大きい、ですね……」

「ここまでの容量がある収納スキルを見たのは初めてだな……」

「す、凄いのです!」


 施設から出て来たので、収納しておいた馬車を取り出したら半ば呆れの様な感嘆の声を頂いた。

 汎用の収納スキルがどれ程の空間が在るのか分からないけれど、この宝物の園の容量は大きいらしい。

 何つったって無制限だしな。 


「んでしかも何この馬車? 予想外が過ぎるわ」

「そりゃこれだけの収納持ちよ? 馬車を引く馬だってクロエちゃんなら問題無いだろうし、同じ馬車なら快適な方がいいわよ」

「そりゃそうか」


 グルっとと馬車の周りを一周して全容を確認したエリックさんが素直な感情を洩らし、アンジュさんがそれについてフォローをしている。

 順番的には馬車が先でスキルが後なんだけど、そんな事はどうでもいいね。


 さて、ここで馬車を出したのは収納スキルを自慢する訳でも、馬車を見せびらかした訳でも無い。

 

 契約した召喚獣は召喚陣と魔力媒体さえあれば何処でも呼び出せるというから、てっきり召喚獣に乗って移動するものだと思ってたんだけど……これがどうにも違った。

 野営をする事も勉学の一つってことで行きも帰りも一晩掛けて歩くんだと。


 それなのに一緒に行くかどうか誘ってくるんだからな。

 ウノさんは俺達が収納スキルを持っていた事に気付いてたっぽいけどまさか馬車が入る程とは思って無かったんだろう。


 まぁそんなこんなで「俺馬車持ってるんでちょっと出しますね」となりました。

 

 帰りの野営も目的の一つじゃなかったかって?

 それはアンジュさんとエリックさんが残る二人を説得してましたよ。

 まぁ説得しなくても、って感じだったけど。


「こ、これ程立派な馬車を出されてしまっては乗らないという選択肢は逆に失礼にあたりますね」


 ウノさんはそんな事言ってるけどウキウキしてるし。


「実は俺、野営ってあんまり好きじゃ無いんだよな……」


 ゴッチさんに至ってはこんな事言うし。


「ら、楽が出来るのです!」


 キミは素直だなミーナ。

 因みにミーナのリュックがパンパンだったのは野営道具をそこに詰め込んでいるからだった。

 そりゃ楽もしたいだろう。


 だからそれを背負ったまんま書き取りをしていたのかはきっと何か理由があったんだよな。


「んじゃ、皆さん乗っちゃって下さい」


 この馬車のドアは俺とアルマの魔力でしか開けられないので、ドアを開け中に案内する。


「……何だこれ? いや、マジで、何だここ?」

「ベッドとキッチンまで……」

「かなり上質そうなベッドですね……」

「……馬車?」

「す、凄まじいのです……」


 この反応、暁を思い出すな。


「何でも自由に、とは言えませんがトルネの街に着くまでゆっくりしてて下さい。シャワーがここで、トイレは、ここです。ベッド使ってもいいですけどシャワーを浴びてからでお願いします」


 かなりの衝撃を受けている皆に馬車の説明をしたら女性三人がシャワーに喰い付いた。

 だからって流石に三人一緒は無理だぞ。


「んじゃアルマ、中頼んでいい?」

「お任せあれ」


 頼もしい返事をしてくれたアルマは早速アンジュさんの傍へ行き話の続きをし始めた。

 ジャンケンに負けた様だ。


「クロエ、人数増えたけどよろしく頼む」

《お任せあれ》


 うん。こっちも頼もしい返事だ。

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