35:レンブラント遺跡
ダンジョン以外で外で寝るのは初めてだったけど、ダンジョンで慣れたお蔭か身体のどこかしらが痛いって事もなく翌朝を迎える事が出来た。
何だかんだとスキルの事考えてたからそれが原因で若干寝不足ではあるけど、それは自業自得だし。
「結局は今まで通りに落ち着いたな」
コピーキャットの消費魔力が減った事で併用出来るスキルの幅が拡がったか?とも思えたけど、何だかんだ余剰魔力は異世界憧憬に回した方が良い事に気が付いた。
聞き耳に関しちゃそっちに魔力回した方が高い効果は得られるけど、そこまで必要とする場面もそうそう無いし。
あ、でも手加減が必要なダンジョン内じゃ幅が拡げられるかな?
「カナ、そろそろ」
「はいはい」
ま、とりあえず今はそれは置いといて、トルネの街を目指しますか。
「この先の森って結構深いって話だけど、どんくらいで抜けられそうなん?」
《急げば二日程で抜けられるかと。地脈結界の森と違って景観も無く、ただの鬱蒼とした森ですので急ぐことをお勧めいたします》
特に急ぐ理由は無いけど、だからってこの森をゆっくり散策する理由にはならんよなぁ。
そんな森を散策する気も起きないし。
「んじゃ急ぎで宜しく」
《畏まりました》
で、本当に特に見所もアクシデントもないままに森を駆け抜け、クロエの言葉通り二日目の朝に森を抜ける事が出来た。
「本当に二日で抜けちゃったね」
「夜通し走るとは思わんかったけどな」
《ゴーレムですから》
とは言え休憩って身体だけじゃなく心のリフレッシュでもあるんだよ?
有り難いけどね。
ありがとね。
「で、あれがトルネの街なの?」
「……あれは違うんじゃないか?」
アルマが指さした方向には確かに建造物が点在してるんだけど、ここからでもわかるくらいに廃れているというか寂れているというか……。
それにここから半日って距離じゃなくね?
《あれはレンブラント遺跡です》
「「遺跡?」」
何でも、過去にレンブラントと呼ばれる召喚士が大規模召喚の研究の為に建造した施設で、他の召喚士達も集まってちょっとした村の様になっていたらしい。
それが長い年月の間に劣化して遺跡になったと。
《周りにある建物が居住区で、四本の柱の中央にある建物が召喚施設ですね。そこの地下に召喚陣が描かれています》
へぇ。
「その召喚陣って今でも使えるのかな?」
《いえ、形だけ残っている状態で使用は出来ないみたいですよ》
どれくらい過去かはクロエにも分からないそうだけど、今ではその召喚陣はトルネの街の新人召喚士達の勉強用資料としての役割を持っているんだそう。
「街からそう遠くはないんだろうし、ダンジョンって訳でもないもんな」
《召喚用のアイテムも取り尽くされた後でトルネの住人以外はまず訪れませんし》
「魔物もそんなに強くないよね」
絶好の勉強場所って訳だ。
「遠目からでもそうだったけど、こうやって近づいてみるとやっぱ趣あるよな」
石造りの建物が植物に浸食されてるこの感じ、ウルスラとは正反対だ。
あっちはダンジョンツリーが先で、後から街が出来たんだし。
「一つ一つの建物はそう大きくないんだね」
《居住区と言われていますが、殆どの人は中央の建物で過ごしていたようですからね》
「何となく想像つくわソレ」
研究者って一所に籠りっきりでするイメージがある。
むしろ中央施設で生活できるなら何で建てたのかさえ疑問だわ。
こんな大きさじゃ寝るくらいしかできんだろうに。
「ここはデカいな」
植物に侵食された居住区を抜け、召喚陣があるという建物の入り口まで辿り着いたけど、流石に規模も造りも他とは違うね。
「素材も違うのか」
居住区は何の変哲もない石造りだったけど、中央のここはどうも金属で造られてるっぽいな。
「石じゃないの?」
「グロウメタルって金属らしいぞ」
劣化のせいか元からなのか……見た目には全く違いが分からないけど。
「まぁ重要な所なんだし、その分丈夫にしたって事か?」
正面入り口の他にも何かないかとグルリと一周してみたけど特に何も無かった。
囲うように立っている柱もグロウメタルで造られてたくらいだ。
「で、入ってみる?」
雰囲気に誘われて足を運んだだけで、別段この遺跡に用事があった訳じゃないけど、まぁ折角なのでね。
「うん」
《畏まりました》
「よし」
この建物は劣化こそしているものの、使われている素材のお蔭か崩落なんかの心配は無さそうだ。
とは言え、この馬車毎入る勇気は持ち合わせちゃいない。
「……これでよし」
馬車を宝物の園に収納してから改めて内部へと脚を踏み入れる。
「涼しい」
「ほんとな」
まだ入り口に入っただけなのに明らかに外との温度が違う。
外も暑いって程じゃないけど、ヒンヤリしてて気持ちいいわ。
「これって氷の魔石かな?」
「だろうね。そんで、それが発動してるって事は誰かがこの中に居るって事だ」
普通に考えたらトルネの街の召喚士なんだろうけど、野盗の類って事も無くはない。
どの道そのつもりだったけど用心して進まないとね。
そうして用心しながら地上一階部分を適当に散策したけど誰にも出会う事は無く、そのまま地下一階へと向かうことにした。
「何も無かったね」
《召喚に必要なアイテムも保管されていたみたいですが、現在に至るまで全て取り尽くされた後でしょうからね。後に残ったのは歴史と召喚陣だけです》
「歴史的価値は凄そうだな」
研究し尽くされてるだろうから今更ここに来て何か新しい発見があるとは思えないけど、それでも新人召喚士が勉強の為に訪れるくらいだ。
ある種のゲン担ぎだとしても学べる事があるんだろう。
「それにしても魔物が一匹も居ないな」
「だね」
結界が張られてる訳でもないのにこの遺跡に入ってから今まで一匹も見かけてない。
それは平和で何よりだけど、こういった場所は魔物が巣食ってそうなもんなのに。
《この遺跡は先程も話しました通り新人召喚士がよく訪れる場所ですから、トルネの街の冒険者が定期的にここに来ては魔物退治をしているんですよ》
「あー、そういう事」
「街全体で召喚士を育ててるんだね」
《新人召喚士には護衛も付きますよ》
「至れり尽くせりじゃんか」
それでも魔物の死体すら見掛けないって事は、今ここに居る誰かも魔物には出遭って無いって事で。
定期で行われる魔物退治の成果が出てる何よりの証拠だな。
トルネの街の新人召喚士達が如何に大切に育てられてるかを実感しつつ地下一階を見て回るも、やはり特に何も無かったのでそのまま地下二階へと向かった。




