29:邂逅
「やってきました十二階層。」
十一階層でのガンロックとの戦闘は中々良かったと自負しておりましたところ、ダンジョンも問題ないと判断してくれたのか、普通に攻めて来てくれまして。
お陰様で、お目当ての魔核を無事ゲット。副産物諸々。苦戦するフリだってバッチリ。
と言っても出てくる敵の殆どがゴーレムで、そのどれもが弱点丸出しだから言えるほど苦戦苦戦もしてないんだけども。
ガンロックはまだしも体高の低いやつらは狙いやすいしな。
せめて弱点を内部に埋め込むとかしなさいよ。
で、こっから先は無理に進む必要は無いんだけど、後二階層下れば魔法陣のある聖域だし、どうせならね。
「ただこっからは例のエレメントファクターが出てくるんだっけか」
《固定属性を持たずに姿形を同フロアの魔物に変化出来る魔物ですね》
「でもカナにはあんまり関係ないよね。看破系のスキル三つも持ってるし」
「そうだけど、それすらも欺く擬態とかだったら流石にわかんないぞ」
「そんな事ってある?」
「正直無いと思ってる」
かくれんぼに看破:対魔物に真実の眼の固有スキル三段構えだ。
看破:対魔物に関しては真実の眼が完全上位互換であるからして実質には二段構えなんだけど。まぁそれはそれ。
「でしょ? それにカナ達ならそんなの関係なしに倒しちゃいそう」
言われて思い返して見れば確かに最初こそ植物系統をファイヤーボールで焼き払ってはいたけど、十一階層で出会った魔物は全員、そのどれもを属性スキルを使う事なくつるはしで穿っていたっけ。
最初のガンロックこそ属性魔法に回すだけの余裕が無かっただけとも言えるけど、そこで手加減を覚えてからは体高の低い連中にも使って無かったな。
「もしかしてエレメントファクターって言われる程でもないんじゃないか?」
《マスターが相手ですと中ランクの魔物は殆どがそうでしょう。しかし、普遍の冒険者であれば中ランクの魔物は十分脅威に成り得ますよ。暁の皆様も複数のコランダムクラブ相手に全滅しかけた訳ですし》
そういえばそうだったか。
暁の皆に何であんな状況になったかきいてみたら「いやー、最初は一匹だけのヤツを狙ったんだけどねー、相手してる途中に増えちゃってさ」ってクルスさんが言ってたな。
あの時はペトラさんが居なかったとはいえ《一匹相手なら問題なく倒せるくらいにはあのパーティの練度は高いですよ》ってこっちもクロエが言ってたか。
よくもまぁそんな事がわかるもんだよね。
「ホラ、カナの場合基準がゼンさんだし」
「どうしても父さん基準に考えちゃうんだよな。分かってはいるんだよ、あの人が異常だってのは」
ただねぇ、身近にいる強い人って父さんだったし。
俺が異世界憧憬の全力だしてもかすり傷一つ与えられず(そもそも当たらない)
全力で防御してるのにデコピン一発で気絶させられたり(その度に回復させられる)
しかも一割の力ってんだぜ?
それが本当かどうかもわかんねぇけど、どんだけ化け物よ。
「そう考えるとさ、ワザと攻撃に当たったりはしないけど、どんな攻撃でもあのデコピンより破壊力あるイメージが抱けないんだよな」
あ、でもリーラさんの【星の平手打ち】は別。アレ男性に対して防御無視のスキルだから。
ん、何の話してたっけ?
「あ、つまりは俺達が相手だとやっぱりそうでも無いって事よね」
《そうなりますね》
「結局は」
なら気にする程でもないか。
「というか、カナなら高ランク相手でも余裕そう」
「それはどうだろうか」
今の所一番強かったと思える相手は結界の森で遭遇したコランダムクラブだ。
余裕はあったとはいえ、不意を突いて弱点である魔核を狙って、それでやっとだったしな。
それも背中側に比べて格段に柔らかい腹部からだ。
背中側からだと本気でやってもダメージ入って無かったし、あいつが中ランク上位ってのを加味しても、そのさらに上を行く高ランクに余裕があるとは思えないんだけど。
それとも相性次第ならいける?
物理耐性のある不定形系統だったら勝ちの目は殆ど無いだろうけど、ここに出てくる高ランクって確か植物系統と虫系統が一種類ずつ、それも限りなく中ランクに近いって話だ。
虫系統は兎も角、植物系統なら何とかなるかも。
虫系統はあれで鉱物系統以上に硬い甲殻持ってたりするし、おまけに空も飛んで、毒とかまき散らすからな。
それの高ランクって、レベルの高い属性攻撃魔法や、遠距離攻撃系統のスキルが無い俺から言わせたらエレメントファクターより面倒な事この上ない。
あれ?でもエレメントファクターってそんな虫っこにも擬態出来るんだよな?
いやいや待て待て。何かここの高ランクと戦う思考になってるけどそんなつもりないだろ。
いつかは対峙するだろうが、今じゃない。
十四階層でサクッと地上に帰りますし。
「まぁでもそうだな。負けたくは無いから、その時はアルマも戦力として頑張ってください」
「うぇ、私も戦力なの? 出来ればサポートがいいんだけど。」
「援護って意味じゃ変わんないからダイジョブ。魔銃はその為の遠距離武器でもある訳だし」
俺が前衛、アルマが中衛サポート、クロエが後衛ってのが理想だね。
そんな未来あるパーティに思いを馳せていた時そいつは現れた。
アイアンファング。
全身がメタリックな金属で出来た全長二m程の狼で体高こそ低いものの、その重厚なボディーに似合わない早い動きを以て狩りをする魔物だ。
一体一体は中層でもそれ程脅威にはならない相手だろうけど、こいつらは群れで行動するからな。
そいつらが目の前に六匹。
で、その中に一匹居ましたよ。
件のエレメントファクターが。




