30:まぁ、そんなもん
エレメントファクターとの初邂逅。
随分と戦闘にも慣れたもので、何も言わずともアルマは敏捷強化の魔法を使ってくれる。
六匹いるアイアンファングは、こちらを囲むかの様な陣形を取りつつ、じわりじわりとその距離を詰めてくる。
「クロエに三匹お願いしていいかな?」
《お任せください。エレメントファクターはどうされますか?》
「それは俺がやる。丁度目の前にいるアイツがそうだから」
《では、アルマはしっかりと捕まっていてください。少々動きますよ》
「りょーかい」
こちらの会話が終わるのを見計らったように目の前の一匹――エレメントファクターが飛び掛かって来る。
属性を変化っていうけど、アイアンファングに水の属性を持たせたところでって感じだな。
俺は飛び掛かってきたエレメントファクターをいなして回避すると、その無防備な背中につるはしを突き立てた。
アイアンファングはガンロックと違って丸みを帯びた滑らかボディーなので、凹凸や取っ掛かりの様なものは無く、突き立てたつるはしは此方もいなされるように滑り、地面を穿つだけに終わった。
「まぁそうなんだよな。知ってるんだけどね」
アイアンファング相手につるはしは効果が薄い。それは知ってた。
ただ、エレメントファクターに通用するかを確認したかっただけだ。
「それじゃやっぱり打撃が有効って事ね」
こちらの攻撃が通用しなかったからか、エレメントファクターの口角がニヤリと上がった気がする。
それを機に残りの二匹も飛び掛かって来た。
俺はつるはしを手放し、転がるようにして回避。
こいつらはゴーレムじゃないからゴーレム核なんてものは存在しない。
普通に魔核が弱点だから魔核一転狙いの掌打でいくよ。
横目でアルマ達を見てみれば、敵の三位一体の攻撃を風に舞う木の葉の如くヒラヒラと避けており、全く危なげが無い。
クロエのポテンシャルの高さとアルマの騎乗スキルも手伝って最強に見えるなアレ。
「っと」
そんな事考えてたらこちらも三位一体の攻撃をお見舞いされてしまった。
ただ、防御性能は高くても問題ないってのは理解してるから、回避させてもらうよ。
最初の一匹の切り裂き攻撃はいなして回避、次の一匹の頭部への噛みつき攻撃をしゃがんで回避、最後の一匹はその前脚を掴みそのまま壁へと投げつけた。
投げつけた一匹は「キャインッ」と実に犬らしい声をあげてその場に倒れ伏した。
あれ結構ダメージ入ってると思うんだよな。
衝撃打撃の類だし、相手の力を利用してるしさ。
投げ飛ばした一匹がどうにかといった具合に立ち上がり、残りの二匹はその一匹をカバーする様に周囲へと集まっていく。
その時、投げ飛ばされたアイアンファング、まぁコイツがエレメントファクターなんだが、そいつの周囲に突如水の膜が現れエレメントファクターを包み込んでいった。
何事かと思い確認してみると、それはどうやら回復効果のある水魔法で、魔物専用の魔法らしい。
「やるじゃない」
そしてしっかりコピーもしてしまった。いや、これは俺の意思とか関係なくコピーするから。
魔物専用だろうが問答無用だから。
投げ飛ばしただけで特に目立つような外傷は無かったから分かり辛いけど、しっかりと回復されてしまい、エレメントファクターは身体に着いた水を払うようにブルブルブルとその身体を震わせる。
アイアンファングに属性持たせても意味ないとか思ってたけどこいつは確かに厄介かもしれんな。
ていうか、属性を変化させるってのをちょっと甘く見てたかも。
「これエレメントファクターから仕留めた方がいいか?」
どうやらアルマ達は一匹を倒したようであっちの残りはいつの間にか二匹になっていた。
「魔力切れでも狙ってから倒すか?」
回避し続けるだけなら問題ない。その合間にダメージを刻んでいって……いやいや、どれくらいあるか解らない魔力の枯渇を狙うとか、それなら普通に倒した方が早いだろ。
「ったく、人が倒し方考えてるってのに」
魔物は待ってはくれないね。
ただ攻め方が単調過ぎる。さっきと同じやり方じゃ何も変わらんぜ。
いや、違うか。今度は戦闘のヤツがエレメントファクターだけど……だからどうした。むしろ好都合じゃないか。
俺は切り裂こうとしてくるエレメントファクターの前足を掴み、その勢いを殺すことなく身体を軸に回転。
そのまま後続のアイアンファング達目掛けて思い切り投げ飛ばした。
二匹目のアイアンファングは既に飛び上がっており、何とか回避しようと身体を捩じるも避け切れずに先ほど以上の衝撃で激突。地面へと落ちる。
三匹目は落ちてきた同胞を回避する為、サイドステップで距離を取り、攻撃には回れず終いだ。
無防備な状態で衝突したエレメントファクターの方がダメージが大きい様で、立ち上がる事も無く、地面に倒れ伏したまま回復魔法を発動させようとする
まぁ俺も待ってあげないけどな。
二匹目もやはりそれなりにダメージは負っている様ですぐさまカバーには入れずに、俺の接近を許してしまう。
俺は覚えたばかりの打撃スキルを発動させた。
「掌底波!」
魔力を纏ったは掌底を上から浴びせられたエレメントファクターは、魔核のある胸部分を鈍い音と供に陥没させ、間もなく魔力残滓となって還って行った。
これで残りは二匹だけど。
「キミらはそうよね。」
残る二匹は今の間に逃げ帰ったのかどこにもその姿は無く、結局倒したのはエレメントファクター一匹だけだ。
こいつ等はね、集団で攻めてくる癖に一匹でもやられたらすぐに逃げ帰るんだよ。
なのに何度も何度も襲ってきやがるので、こいつはこいつでメンドクサイ相手だったりする。
《終わったようですね》
「つっても倒したの一匹だけだけど」
「そっちも逃げちゃったんだね」
こっちの奴らが逃げたって事は、そりゃ当然というかアルマ達の方も逃げてる訳でして。
とりあえずエレメントファクター倒せたからよしとするか。




