26:水晶拾った時はテンションあがったよ
「おぉ」
「何とまぁ」
戦闘を回避されながらも辿り着いた十一階層は今までの様な穏やかな森と平原から一変、ごつごつとした岩肌がむき出しになっている洞窟、或いは坑道と言った様相のフィールドだった。
通路幅は十m程とかなり広くて、高さもまぁ高い。通路幅と同じくらいか?
陽の光は無いけど、バカでかいカンテラが至る所で明々と輝いているお蔭で見通しはかなり良い。
「中ランクの魔物を相手取れる冒険者には気を使う必要は無いって事かね」
「んー……そうは見えないけど」
だよねー。
この坑道フィールド、採取できる素材は間違いなく鉱石の類だろう。植物系統は全階層通じて出るっていうから少しは緑がある空間なんかもあるかもしれないけど、そうだとしてもメインが鉱石なのは間違いないハズ。
で、アルマの「そうは見えない」発言が一体どういう事なのかというと。
《つるはしにトロッコに、ご丁寧にレールまで敷かれていますか》
そう。採掘セットが用意されているという事。
これが罠じゃないのはかくれんぼと真実の眼で確認済み。ダンジョンの魔力そのもので構成されている以外は地上のそれらとなんら変わりない只の道具だ。
「これ使って採掘しろってことだよね。きっと」
「アプローチの仕方を変えただけかよ」
まぁ折角だから有難く使わせてもらおう。
◆◆◆◆◆
「何コレめっちゃ便利」
凄いな。このレールとつるはし凄いな。
何が凄いってトロッコの進む方向にレールが自動的に敷かれていく。そして通り過ぎたら魔力粒子になってダンジョンに還るから全方向に自由自在だ。
レールの有る所を進むんじゃなくて、トロッコの進むところがレールになるって感じ。
そしてつるはし、見た目は只のつるはしだけど魔力を通せるお蔭で面白いほどサクサク掘れる。
掘るときに全く抵抗が無い訳じゃないけど、その程よい抵抗が採掘してるって気分を十二分に味わわせてくれて何とも不思議な快感を覚える。
「ただ気を使ってる訳じゃ無かったんだな」
むしろより魔力を補充しやすくする為か。
つるはしに込められてそこから消費された魔力はダンジョンに吸収されるけど、それで確実に鉱石が見つかるかと言えばそういう訳でもないから、必然こちら側が消費する魔力は増えていく。
でも不思議な快感を覚えるせいか、妙にハマってしまうんだよな。
目的と手段を履き違えてしまいそうだ。
現にアルマは。
「うん。コレはやばいね。楽しいね」
と、そんな感じで最初に掘った場所からエリアを一周する様な形で掘り続けている。
今の所鉄鉱石の一つも掘れては無いんだけど、本人が楽しそうだしいいか。
俺も魔力を込め、振り下ろす。
振り下ろされたつるはしの切っ先は、カンッ!という金属音とは裏腹にそこそこが壁に埋まり、その周囲を崩していく。
一回で掘れる面積は三立方メートル程なので、意外と掘れるっていうのが正直な感想だ。普通の坑道じゃこうはいかないから流石ダンジョンだよね。
崩れた土塊や石塊も魔力に還って邪魔にならないし。
とは言え、やっぱそう簡単には見つからんのだけど。
「何かコツとかあるんかね」
《壁に魔力を流す事でソナーの様に発見する事も可能ですが、ダンジョンでは難しいかもしれませんね》
「ふーん。ちょっとやってみるか」
聞いたとおりに壁に手を当て、魔力を流してみる……が、すぐに諦めた。
「うん。無理」
これはアレだ。ひどい雑音の中から特定のワードだけ拾ってくるみたいなもんだ。
その例えだったら聞き耳を使えば出来そうな気もしないでもないけど、採掘だからな。該当する様なスキルも無ければ技術も無い。
「目的は魔核だからここでも無理に採掘する必要はないんだけどもさ」
《創造出来る鉱石の種類を増やしておきたい、ですよね》
その通り。
鉱石の状態で創造出来るのは鉄鉱石とミスリル鉱石だけだったりする。
加工された後の物なら黒鉄鋼で出来たクルスさんのダガー、聖銀で出来たエマさんのレイピア、そしてミスリル合金製のクロエのパーツとあるんだけど鉱石ではない。
鋳つぶす事も出来なくは無いんだろうけど、それもまた違う。
俺は鉱石が欲しいんだよ。
幼少のみぎりに綺麗な石とか拾った事ある人なら解るんじゃないかなぁこの気持ち。
川辺で水晶を拾った時のあの感動ったら――
「あ、何か出たっぽい」
っと、どうやらアルマが何かの鉱石を掘り当てたみたいだ。
何物かと見に行ってみれば、手にしているそれは卵くらいの大きさで色は薄いピンク、触った質感はツルツルといった感じ。
名前は【染色鉱】
加工の際に他の鉱石と混ぜ合わせる事で色を付ける事が出来ると、まぁ染料だな。
「これを混ぜたらピンク色になりますよって事か」
「ちょっとした小物には良いかもしれない。でも武器に使うのはちょっと、嫌かな」
ピンク色の武器は想像しただけでも気が抜けるな。
そういう用途の元で作れば或いは対人戦に効果があるかもしれないけれど、だからと言って「じゃあ作ります?」と言われたら答えはノーですよ。
鉱石の正体が解ったところでアルマはそれを宝物の園に仕舞い込み、つるはしに手をかけて再び鉱石を掘りだす。
――ゴロゴロゴロゴロゴロ――
「ん?」
何かが転がってくる音が聞こえる。
聞こえるや否やクロエはすぐさま臨戦態勢を取り、アルマはその傍で魔力回復薬を飲み魔法の準備をしている。
そういう俺は折角だからとつるはしを構えた。
「まぁ魔物だよね」
罠のありそうな遺跡とかならまだしもダンジョンでこれはどう考えても。
《こちらの採掘音を聴きつけたようですね》
「あぁ、そういう意味じゃ罠っぽくもあるのか。とりあえずいつもの様にアルマは敏捷強化よろしく」
「りょーかい」
「それと」
「落とし穴だね」
「正解」
相手が転がって来るならタトゥ・ベアーの時みたく効果があるかもしれない。
アルマの敏捷強化の魔法が発動し、エリア入り口に落とし穴も設置完了。
準備はバッチリ。
さてさて、十一階層での初戦闘、どんな奴が相手かね。




