22:再びのダンジョンツリー
所変わって只今ダンジョンツリーの五階層、聖域にて。
ヤゲンさんにウラエヌスをオーダーメイドで作ってもらう。その為に素材を集めにダンジョンに来たわけだが、何もあの後直ぐにダンジョンに向かった訳じゃない。
鉄鉱石と魔核はあくまで基本としての材料。あの個体のウラエヌスがそうだっただけで、素材の質が良ければ当然武器の質も良くなる。
そこで、アルマとヤゲンさんがどんな魔銃にしたいのか、その為にはどのような素材が必要なのか、それらを話し合ってからここに来た。
質って言えばね、俺が創造すれば最高品質になるんだけどさ、鉄鉱石は兎も角、魔物の素材はちょっと厄介で、低ランクの素材を最高品質にしたところで高が知れてるというのが現実でね。
ロックシードの魔核を創造しても中ランクであるハイロックシードの魔核にも劣る物らしい。
と言うのもね、こんな事もあろうかと売らずに取っておいた魔核をヤゲンさんに見て貰ったらさ
「低ランクの魔核ですと、その、言い辛いのですが……」
と言われてね。
ならば!と、こそっと創造した魔核も見てもらったんだけどさ
「低ランクの中では素晴らしいですが、それでも魔銃に使うとなると……」
と、苦笑いをされてしまってね。
「魔銃に使うとなると最低でも中ランクの魔核で無いと厳しいのです」
と、またも申し訳なさそうに言われてしまった訳なんだ。
そんなやり取りがありまして、いくら最高品質でも低ランクとの中ランクの間には越えられない壁があるんだなぁと知った訳です。
考えてみればその壁を越えてるからランクが上がってるんだよな。そりゃ当然よね。
「さて、次からは動物系統が出てくる階層になるんだけど」
《系統としては低ランク扱いですね》
「だよなぁ」
変わらず植物系統も出てくるけど、あいつらも種類が増えるだけでランクは低いままだし。
ならばこのダンジョンツリーにおいて中ランクはどの階層から出てくるのか。
「十一階層から中ランク?」
「ニトさんの話によると」
答えは十一階層から。
そこから中ランクの個体が出現し始めて、十二階層からは厄介と言われているエレメントファクターが出てくる。
「中ランクでも弱い部類らしいけどな」
一絡げに中ランクといっても、低ランクに近い中ランクも居れば、高ランクに近い中ランクもいるわけで。
ダンジョンの中でも難易度が低いとされるダンジョンツリーは、出てくる魔物も総じてあまり強く無い個体が多く出てくるとの事。
上級に至っては十九階層に虫系統と植物系統が一種類ずつと数は少なく、しかもそいつらは限りなく中ランクに近いと言っていた。
参考になるかはわからんけどコランダムクラブは鉱物系統中ランクの中でも割と上位らしい。
《マスターがここのダンジョンで遅れを取るとは思えません》
「その辺りは異世界憧憬様様だけどね。これ使って無かったらどう?」
《異世界憧憬を使用されないで考えますと、十階層での撤退をおススメ致します》
曰く、アルマとクロエがサポートをして十階層まで。俺一人ならここの聖域を拠点に六階層までが望ましいと。
「でも、カナが異世界憧憬使わない時ってある?」
「無いけどね」
もはや皮膚の如く着こなしているといっても過言では無いくらいに使ってるから。
寝ても覚めても異世界憧憬ですよ。
「まぁちょっと気になっただけ。んじゃそろそろ六階層向かおうか」
五階層で小休止の後、六階層へと脚を踏み入れる。
動物系統が出てくるからか、一~三階層と同じように平原と森のフィールドだな。
「素材どうする?」
アルマがこう聞いてくるのはそもそも目的が中ランクの魔核という事と、これまで何の素材も採取していないからだ。
あ、唯一ロックシードの種だけは貰ってるけど。
「掲示板にはこれと言った素材は貼られてなかったからな」
収納スキルであるところの宝物の園があるから手持ちの上限が無いってのは有難いんだけど、それを使っちゃうとね。
「何で前回使って無かったんだ。って突っ込まれたときにちょっと説明するのがメンドクサイ」
「それなら他の街で売れば良くない?」
「……確かに」
何故その発想を思いつかなかったのか。
そうか。そうだよな。何もここで全部売る必要ないんだよな。
とりあえず宝物の園に突っ込んどいてどこか別の街で売ればいいのか。
「アルマ天才かよ」
「そうでもあるよ」
《マスター、アルマ、魔物です》
おっと。アホな掛け合いしてたらいつの間にか魔物圏内だったようだ。
いかんいかん。クロエに感謝だな。
「ありがとクロエ」
《恐れ入ります》
さて、遮る物が何もない平原で、アレに見えるは何の魔物かな。
【タトゥ・ベアー】
背中がアルマジロの甲殻の如く硬質化した小型の熊。
その甲殻は武器にも盾にも成り、身体を丸めて一直線に仕掛けてくる回転攻撃中は並大抵の攻撃は弾いていしまう。
「んー、私にはそこまでくっきり見えない」
「異世界憧憬って視力も強化されるからな」
っていうか五感どころか、第六感さえも強化されてる感ある。
とは言えだ。流石にこの距離じゃ攻撃は出来ん。
届くとは思うけど当てられる気がしないし、素直に当たってくれるとも思えない。
「もうちょっと近づいて……と思ったけど。気付かれたっぽいな」
こっちから見えてるんだ。向こうからも見えて当たり前か。
二匹のタトゥ・ベアーが地を駆け、こちらへと向かってくる。
「アルマは敏捷強化の魔法。クロエはアルマのガードでよろしく」
「わかった」
《畏まりました》
アルマが敏捷強化の魔法をかけ終わると同時に、それまで地を駆けていたタトゥ・ベアーがその身体を丸め完全に攻撃態勢へと移行していた。
「ファイヤーボール」
まだ多少の距離はあったけど牽制とばかりにここのダンジョンで非常にお世話になっているファイヤーボールを二発程叩き込む。
その内一発は命中したが、それでもタトゥ・ベアーの勢いはまるで衰えなく、むしろ攻撃された事で怒ったのか、気持ち速度が増した気がする。
「牽制とは言えあそこまで物ともされないとちょっとへこむな」
「カナで駄目なら私じゃもっと駄目だね」
そこまで迫っていたタトゥ・ベアーの回転攻撃を攻撃軸から移動する事で回避する。
急な方向転換などは出来ず、暫く転がって行った後に土埃を上げながらその勢いを止め反転、またも地を駆け出し加速し、回転しながら此方へと襲い掛かってきた。
「猪突猛進だな」
「でも猪って急停止も出来るって聞いたことあるよ」
《猪がまっすぐにしか突進出来ないというのは誤りですね》
「魔物のタトゥ・ベアーより動物の猪の方が頭良いのか……」
その攻撃方法じゃ前見えないからね。仕方ないね。
さて、どうにかして動きを封じたいところではあるけれど。
アレが良さそうかな。
「アルマ、落とし穴よろしく」
「任せて」
落とし穴は土属性魔法の中でも初歩の魔法だ。
効果はそのまんま落とし穴なんだけど相手はまず引っかからない。
何せ本当にただぽっかり穴が開くだけでカモフラージュすらされてないという引っ掛ける気あるのか状態だし。
それでもこっちにまっしぐらなタトゥ・ベアー相手には有効だと思う。
こんなこと考えてる内に二匹ともがアルマの作った落とし穴に引っかかって、穴底でもがいているのだから。
そこまで深い穴じゃ無いから体勢を整えたら這い上がって来ることも容易だろうけど。
「そうはいきませんよっと。ファイヤーボール」
タトゥ・ベアーの直上からここぞとばかりにファイヤーボールを叩き込む。
念入りに穴の直径と同じ大きさのヤツをだ。
これで逃げ道はあるまい。燃え尽きるが良い。
二匹のタトゥ・ベアーは体勢を立て直す事も出来ずに炎に包まれ、その生涯を終えていった。




