意地悪義母が存在出来ない国
「お姉様、やあだ~、いらない~」
「メリー、我が儘いわないの!少しは宝石欲しがりなさい!これは貴方の物よ」
「グスン、ウワ~ン、重たい」
妹の部屋に我が家門の財宝を集めている。妹は9歳。この歳で地獄を見せるには忍びない。
私はフローリア、妹のドレスには宝石を縫い付けている。ドレスだけでもかなり重くなっているだろう。金塊の入った袋を背負わせる訓練をしている。
「奴らが来たら・・・貴方、大変なことになるのよ」
「奴ら・・・」
「ええ、とっても怖い化け物。強欲の固まりよ。人の皮を被ったゴブリンよ」
「グスン・・頑張る」
「そう、良い子ね」
誰かいないかしら・・・・
「お嬢様、お客様が来られました」
「誰?」
「知らない殿方です」
【いないって言って!】
「はい、畏まりました」
使用人達の態度も変わりつつある。
「お嬢様、書類の決裁をお願いします」
「これは・・・お給金の値上げ。しかも倍?」
「えへへへ、できなければ、他家への紹介状をお願いします」
【死ねゴミ】
もうどうでも良い。人は極限状態になると、平常心を保てる人とそうでない人に別れると言うが私は後者だろう。
「えっ・・」
「辞めたければやめなさい!」
ニヤニヤ笑っていた使用人は呆気にとられているわね。自分は貴重な男で解雇されないと思っている。
「・・・チィ、どうせ没落するくせに辞めてやるよ」
陰口が聞こえたが不問に付した。
それよりもやることがある。
「ミラー、出かけてくるわ。男手が必要よ。冒険者でも何でも良いから雇う手続きを」
「はい、お嬢様」
私は解決策を探るために、法律家、サロンをめぐるがやはりない。
啓蒙思想団体に向かうが・・・そこでは空想的な理想論ばかり振りかざしていた。
「まずは人の善なる心を信じるのです」
果ては女神教会に行ったが・・・
「死後、魂は救われます」
まるで、役に立たない。
屋敷に戻ったらお義母様が待っていた。
「フローリア、来なさい」
「はい・・」
怒っている?
お父様の寝室まで連れてこられた。
お父様は病気で余命は半年と診断された。
「フ、フローリア、すまない・・」
「お父様・・・」
お義母様から説教をされたわ。
「フローリア、気持は分かりますわ。メリーに対する態度も有難く思います。
しかし、お父様を見舞わなくてどうしますか?」
「はい、その通りですわ」
「大丈夫よ。何とかなります」
「あのお父様が亡くなったらお義母様はどうなさりますか?」
「そうね。夫が亡くなった後、旦那様に救われましたわ・・・今度は救貧院に行こうかしら、でも、メリーは若すぎるわね」
「私もそう思います。修道院に行こうと思いますが、メリーは・・・独りで生きて行かなければならないでしょうね」
この国では女に相続権はない。それはどういうことを意味するか。
男の子のいない家門、父親が早逝すると・・・
「お嬢様!大変です。親戚と名乗る者が大勢訪れています!」
「ミラー、帰ってもらって」
「それが、止められません。無理矢理入って来ています」
「何ですって」
父親が早逝すると死体に群がるゴブリンのように面識のない男の親戚が訪れる。
「ワシは三代前に別れた家系の者じゃ」
「ほら、この家系図を見ると貴家と関係あります」
「「「相続を願います」」」
その時、騒ぎを聞きつけてメリーが出てきたわ。
「お母様、お義姉様・・・何?」
「おい、あの幼女のドレス、宝石が縫い付けてあるぞ」
「ヒデぇ、相続財産を持ち逃げする気だ」
「「「捕まえろ」」」
裏目に出たわ。メリーに財産を渡そうとしたのが・・・
「やあだ~」
「メリーには手を出さないで!メリー、お部屋に入って鍵をかけて」
その時、1人の男が現れメリーの部屋の前に立ち塞がった。
「やめなさい・・・幼女の部屋に押し寄せるって、お前ら幼児性愛者か?」
「何だ!お前は、どこの家門か?」
「いや、使用人募集で来た者だけど・・・貴方たちが強盗しているとしか思えないのだけど・・斬るよ?」
「「「ヒィ」」」
男の手には剣があった。
「だって、相続だよ?俺たちは正当な相続人だ」
「「「そうだ、そうだ」」」
「ほお、いつ?どこで?誰の?如何に?相続人になったのか言ってみい」
ここで私はこの男に教えた。
「お父様は余命半年と診察されました」
「ほお、なら、相続は始まっていない。相続って、亡くなってから始まるんだよ?」
「知っているよ。生前贈与だ!」
「生前相続だ!」
「馬鹿?なら、どっちも贈与者の意思が必要なんだよ。お前らのやっていることはやはり強盗だな!叩き斬ってやる!」
「「「ヒィ」」」
自称、相続人達は慌てて帰ったわ。
「お初にお目にかかります。アルベートと申します。冒険者ギルドから参りました」
「有難うございます・・・」
もしかして・・・胸がときめく。善い予感がした。




