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第三章 サンとの対決②

公園で事件があった翌日。青柳高校の野球部の新入生紅白試合が始まり、グランドには他の生徒も見に来るくらい盛り上がっていた。そして僕とサンとのエース闘いは、5回まで0対0という白熱した試合が続いていた。

しかし6回からサンの様子が少しおかしくなり、顔には異常な汗をかき時々肩をおさえながら苦しそうに投げていた。僕たちのチームも、サンのピッチングの異変に気がついていた。


「あいつ、ずっと肩をおさえてどうしたんだ?」


それからサンはバッターから次々とヒットを打たれ、7回表では3失点してしまった。それから試合は10対3となり、サンがいる赤組は負けてしまった。

試合が終わり僕は不思議に思って急ぎ部室へ行くと、服を着替えているサンに向かって言った。


「圭三どうしたんだよ。 6回からのピッチングが変だったじゃないか?」


その時、シャツを抜いだサンの姿を見て驚いた。汗まみれで苦しそうにしているサンの肩は、まるで地底にある熱いマグマのように真っ赤に腫れていた。腫れている肩に冷たい氷袋を当て、体中アザだらけのサンは痛みを必死に堪えていた。


「そのアザや肩って、昨日の?」


サンは嘘をついていた。

昨日公園で絡まれて僕が逃げてしまった後、最後まで抵抗していたサンはあの高校生3人から袋叩きになっていた。その時に肩を蹴られた事を誰にも話さずに、サンは痛みに堪えながら必死にボールを投げていたのだ。


「圭三、とりあえず病院に行って肩を見てもらおう。 俺が連れて行くから」

「慎吾、もういいよ。 試合はもう終わったんだ」

「圭三、何言ってるんだ! 早く病院に行かないと、お前ずっと野球が出来なくなってしまうよ」


僕はサンの腕を掴み、強引に病院へ連れて行こうとした。しかし、あの豪快なサンの顔からは覇気が無くなっていた。


「もういいよ。 ここのエースはお前に任せたよ」


そう言いながら僕の肩をポンと叩き、学生服に着替えて部室から静かに出て行った。肩を押さえながらゆっくり部室を出て行くサンを、僕は追いかけることができなかった。


それからしばらくしてサンは野球部を退部した。サンの肩は蹴られて傷めた上に無理やりボールを投げた事が原因で、もう野球部でピッチャーが出来なくなっていた。そしてあの公園で起きたタバコ事件の事は、サンは誰にも話さなかった。

サンが退部したことを知った僕も一緒に野球部を辞めようとしたけど、それをサンに止められてしまった。


「お前まで野球部を辞めてしまったら、ここのエースは誰がやるんだ。 公園の時、俺があいつらからお前を守ったことが全部無駄になるだろうがぁ!」


その通りだ。サンはケガをしてまでこの僕にエースを託してくれたんじゃないか。サンのその優しい気持ちに応えようと、早く青柳高校のエースになって甲子園へ行こうと心に誓った。


しかし、高校1年が終わろうとする3月末に神奈川から岡山へ引っ越してしまった。エースになるというサンとの約束を果たせないまま、僕は青柳高校野球部をあとにした。

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