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俺が彼女に告る理由  作者: 本間 甲介
最後の理由~クリスマス前~
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33/39

馬鹿野郎の決意

「失礼します」

 ぺこりと頭を下げ、透子は夏彦の隣……一将と向かい合うように腰を下ろした。

「な、なんでここに……?」

 ようやく声が出る。一将は透子へ第一声、そう訊いた。

「聞いてもらっていたんだよ。……もう一人、小坂さんとね」

 夏彦は少し動揺しながらも、悪びれることなく答えた。

「は?」

 夏彦の言葉に、混乱がさらに増す。一将がさらに疑問を投げかけようとすると、透子はテーブルを叩いてそれを止める。

「今、そんなことはささいなことです」

 透子は食い入るように一将を見つめる。その目は怒っているような、悲しんでいるような、後悔しているような……様々な感情が宿っていた。

「……………………皆見、くん」

 長い、長い沈黙。そして透子は「告白」した。

「わたしは……皆見くんのことが好きです。大好きです」

 耳まで真っ赤にさせた、一将と夏彦にしか聞こえないくらいの、小さな声。透子はそれでも自分の気持ちを伝えた。

「…………」

 生まれて初めての女子からの告白に、一将の中に、嬉しさと恥ずかしさ、そしてためらいといった感情が徐々に膨れ上がる。頭に血が上り、一将は何も考えられなくなった。

「あ、ありがとう……! あの、俺は――」

「でも、皆見くんがわたしを『好き』じゃないのは、知っています」

 続けて発せられた言葉に、一将の血は一気に引き始めた。透子は目に涙を浮かべ、それを拭うこともせず、この世で最も自分の心が痛むことを言った。


「皆見くんは優希ちゃんと付き合うべきです」


 脳を思い切り叩かれ、揺らされ、掻き出されたようだった。

「そ、そんな……なんで……」

「簡単なことです。皆見くんが優希ちゃんのことを、好きだからです」

 透子はすっきりしたような、爽やかな顔になっていた。透子は自分のスマホを取り出し、一将に見せる。その画面には、さっき消した「俺が彼女に告る理由」があった。

「な、なんでこれ……!?」

「仲間くんに送信してもらったんです。それで、全部読みました」

 夏彦は何も言わず、目を閉じてうつむいていた。

「これを読んで、そして私の記憶も踏まえた上で、言わせてもらいます。皆見くんは、優希ちゃんと付き合うべきです」

 二度言われることで、透子は一将のこれからを強制した。

「付き合うって……俺はその――」

「正直に、なってください」

 両手が柔らかさと温かさに包まれる。透子は一将の両手を握りしめた。

「今まで『皆見くんと付き合えたらどんなにいいだろう』って想像してきました。そのために、今まで頑張って……今日、もっといい場所で告白するつもりでした」

 両手に力が込められる。震えていた。

「でも、それだと……わたしだけが幸せになるだけなんです。わたしは……皆見くんに、優希ちゃんに笑っていてほしいんです」

 ボロボロと涙が手に落ちる。それでも、透子は笑っていた。

「……」

 そっと、一将は透子の手を離す。一将は立ち上がった。

「透子さん」

 頭の中にあったわだかまりがスーッと消えた。一将は透子に向かい、頭を下げた。

「ごめん」

 たった一言。それで一将は透子との「今まで」を終わらせた。

「いいえ。いいんです……頑張ってください」

「ここは僕がおごるよ。……ファイト」

「――ありがとう」

 深々と二人に頭を下げ、一将は気持ちを完全に切り替える。


「ちょっと今から告ってくる」


 一将は弾けるように、店を飛び出し、走り出した――。

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