14.先に行かせてもらうわ
間が開いてしまい申し訳ありませんでした。
広いリビングの一角に置かれたソファセット、6人の男女がめいめいの場所でくつろいでいた。
中心には黒い髪を頭の後ろでおさげにした少女が座っている、白い肌に黒い髪、それを彩る赤いリボン、たれ目気味の幼さの残る造詣の顔と合い余ってどこか庇護欲をそそる儚げな印象の少女だ。
集団から離れた窓際に一人女生徒が座っている。
高い身長にすっと伸びた背筋、コーカソイド系の混血らしく髪も瞳も肌も色素が薄く目鼻立ちの目立つ整った顔をしているが不機嫌なその表情も相まってどこか威圧感を与える顔をしている。
混血の女生徒はクラスメイト達の輪には入ろうとせずに一人窓の外を睨みつけていた。クラスメイト達はちらちらと女生徒を気にしつつも不機嫌な女生徒に声を掛ける勇気ないようで、たわいの無い話に花を咲かせている。話題は各々の家族の話であるらしい。
中心にいた少女がクラスメイトの兄弟の話に相づちを打ったその時―ダンっと小さな打撃音がなった。
それ自体はたいした音では無かったがクラスメイト達が口を閉じて一点を注視するには十分であった。なにせそれは窓際にたっていた女生徒が平手で窓枠を叩いた音だったからだ。
女生徒は不機嫌な態度を隠しもせずに一同を睨みつけ声をあげた。
「何時までこんな所でぐずぐずしているつもり?」
彼女の言葉に一人のクラスメイトが立ち上がる。鼻筋の通った顔は整ったがゆえに地味な面相ともいわれがちだがそのするどい瞳の光は彼の顔に厳格さを備えさせていた。真面目な顔の男子生徒は厳しい口調で女生徒に答えた。
「セイレさんが来ないのだから仕方がないだろう。入り口の鍵も閉まったままだし何の挨拶も無しに出て行くなんて失礼な事出来ないだろう?」
「今日の朝には出て行く事は伝わって居るのだから呼んでも探しても出てこないのなら向こうの責任よ、わざわざ彼を待つ必要は無いでしょう」
「大神の薬の事もあるんだし、お世話に成ったんだから一言お礼ぐらい言うのが礼儀じゃないか?」
二人の会話に口を挟んだのは少女の隣に座っていた女子生徒だ、清潔で活動的に切りそろえられたショートカットにすらりと伸びた体躯、キリリとつり上がった目尻は女生徒はまた別の威圧感を加味し、少女歌劇の男役の様に整った風貌は可愛いよりも凛々しいという表現が似合う。
「分かっているのかしら私達は今日中に歩いて道の分からない山を降りなくてはいけないのよ、ぐずぐずしている時間は無いわ。礼なら無事帰れてから改めてすれば良いでしょう」
「でもお世話になったお礼を言うのと、お礼をするのは同じものじゃ無い気がするけど…」
少女を挟んで女子生徒の反対側にいた少年が口を開く。男性にしてはに大きめの瞳にこれまた大きめの眼鏡、顔のラインは小さく身長の低さも相まって幼さを感じさせる顔をしている。日本人にしては明るめのふわりとした髪も相まってどこかマスコット的な可愛さのある少年は女生徒に一睨みされ小柄な身体をさらに小さくさせた。
そんなやり取りを我関せずとばかりに片方の目だけで眺めていた生徒がいた。何故片目なのかといえば彼のもう片方の目には大きな眼帯が付けられているからだ。しかもただの眼帯では無い。黒字ににゴテゴテと金やら銀やらで装飾のなされた特別性、さらには指やら耳やらにも尖ったセンスの装飾品が飾られている。随分と個性的な趣味をしているがその中心にいる少年は比較的おとなしい容姿をしている。マスコット的な少年程ではないがそれでも同年の男子の平均身長に幾らか届かない体躯に少し猫目ぎみな顔、染めてもいない黒髪は学校の頭髪規則に準じて切りそろえられている。
「言いたい事が有るんならちゃんと言った方が言いよ」
表情の乏しい瞳を少女に向けながら眼帯の少年は言う。外見の割りに存外理性的な瞳に射抜かれて少女は立ち上がり、クラスメイト達を見回す。
「こんな事になった原因は私です。繕林さんには…いえ皆には本当に迷惑をかけたと思います」
そんな事気にしなくていいのに、と呟いたのは少女の隣にいた女子生徒だ。少女は女子生徒に小さく首をふると言葉を続けた。
「ううん、下手をしたら私達本当に遭難してた。だからけじめを着けたいの、皆本当にごめんなさい、皆助けてくれてありがとう」
少女は全員が視界に入る位置に移動すると頭を下げた。全員が注視するなか彼女は頭をあげると「だから私、セイレさんにもちゃんと直接お礼を言いたいんです、だから皆には悪いけれどセイレさんを待ちたいんです、お願いします」もう一度少女は頭を下げる。
「勿論だ、僕達だってセイレさんに恩があるわけだからちゃんとお礼もいいたいし」
そう言ったのは真面目そうな男子生徒だ。
「お願いします。繕林さん」
少女が後を続けるように窓際の女生徒を振り返った。腕を組んで窓枠に寄りかかりやり取りを眺めていた女生徒は溜め息を一つ吐くとすっと窓際から離れた。そのままスタスタとクラスメイト達の元まで行き-通り過ぎる。
一同が疑問符を浮かべる中女生徒は扉の前で振り返った。
「私貴方達みたいにお気楽な人達と違って暇じゃないの、先に行かせてもらうわ」
「おい!繕林!」
「繕林さん!」
ドアノブに手を掛けた女生徒はそね姿勢のまま上半身だけでもう一度部屋の中へと振り返る。垂れ気味だが甘い印象が欠片も無い瞳をすっと集団の中心にいる少女に向けた。蛇に睨まれたカエルのようにぴたりと動きを止めた少女に女生徒はつねづね思っていた事を告げる。
「私を誰だと思っているの?軽々しくその名前を呼ばないでもらえる?貴方にその名前を呼ばれるのは不愉快だわ」
「繕林!?」
「あんたなんて事を!」
あまりの暴言に男子生徒と女子生徒が非難の声を上げる。女生徒はクラスメイト達の声を背後にさっさと扉を開けて出て行ってしまった。
後には女生徒の態度に怒りを見せるもの、落胆するもの。感情の種類は様々だったが皆一様に気まずい空気につつまれ誰も彼女を追って引きとめようとするものはいなかった。
部屋から出て勢い良く歩く金髪の女生徒は最初こそ早足だったもののゆっくりと歩く速度を緩めていき―やがて立ち止まった。胸に手を当て息を整えると暫し何かを逡巡するようなしぐさを見せた後、顔をあげまっすぐに前を向いて歩き出した。
主人公の外見描写をどこまで書いていたかと思って1話目を確認したんですけど文章のテンションが全然違いますね。
そのうちしれっと書き直すかもしれません(えー)
5/7前に描いたキャラデザを見直したら思ったより羽黒の髪が短かったので書き直しておきます。




