12.その全員に私は入ってないんだけどね
幕合をこの話の後に入れるので今回はここまでです。替わりに次の投稿は1時間後になります。
お粥が出来上がった頃に丁度良く神倉と大神未輪が戻って来た。
大神未輪も流石に目が覚めたようで神倉に支えられながらも自分の足で歩いている。と、思っていると倒れた。そのまま崩れ落ちる所を神倉に支えられ、ずるずる運ばれていく。
私は止めていた手を動かしながら、こっそりと息を吐いた。大まかなゲーム進行ならともかく、こういった細かいイベントは流石に覚えていない。思い出せたとしても直前だ。
大昔(しかも前世)にしたゲームの内容なんて覚えている方が珍しいのだから十分僥倖なのだろうが、いざ目の前でフラグイベントを起こされると肝が冷える。因みに今のイベントは倒れた際に誰に運ばれるかによってキャラクターの好感度が上がりそのキャラのルートに入りやすくなるのだ。キャラクターの好感度で起こるイベント、入れるルートが変わってくるので開始一発目の好感度操作イベントは結構重要で、彼女には全員生存のためにハーレムルートに入って頂きたいので、今のイベントは誰も選ばないで正解だったのだ。
このゲーム、実は好感度自体は簡単にあげられる仕様になっているので、乙女ゲームの側面、各ルートをクリアするだけならそれ程難しくない。しかし逆にホラーゲームの側面、全員生存ルートを目指すならぐっと難しくなる。全員生存ルートはつまる所乙女ゲームで言う所のハーレムルートなのだが、そのルートに入るためには好感度以外に隠しパロメーター信頼度が必要になってくる。信頼度とはまさしく相手が信頼するに値するかどうかの数値で全てにおいて一貫した行動をとらないと相手に不信がられて下がってしまう。つまり、あっちにふらふら、こっちにふらふらと八方美人をしていると信用を無くしてしまうのである。
これを回避するには全員の好感度をじわじわと同時に上げて行くしかない。
はっきり言って初見でクリア出来る訳は無いのだが、全員の命がかかっているのでやっていただかない事にはどうしようも無い。
(まあ、その全員に私は入ってないんだけどね)
繕林永環はチュートリアルにおけるゲーム説明のための操作キャラであり、一番最初に無惨な死を迎える事によりプレーヤーに恐怖を植え付ける噛ませキャラなのだ。
しかし、ゲームの中の私がその運命を辿るのは繕林永環が勝手に単独行動を起こした挙げ句、一人逃げ出した結果な訳なので要するに私が一人にならなければ良いのである。
自分の今後の行動指針がはっきりした所で私は手に持っていたお椀に匙を入れた。もうみんなも食べ始めている。匙の上に豆腐を乗せた神倉が呟いた。
「なんか、ねこまんまみたいだな」
うっさい!
始終ふらふらしている大神未輪に薬を飲ませ寝かし付ける。明日もまた山道を下らなくてはいけないのだ、少しでも体力を回復させたほうが良いということで、私達も今日はもう就寝する事にした。
大きいとはいえ、ソファとバスタオルでまともに眠れるだろうか心配だったが、疲れが出たのだろう。顔を洗いジャージに着替えると、照明を落とし薄暗い中ソファに身体を預けるやいなや昏倒するように私達の意識は遠のいていった。




