20 謝罪のプロ
ニャーゴ。
猫の声をまねたオウムが、外の木にとまって鳴いていた。
松田がタロットを壊した後、璃々はカンカンに怒って
いたが、ボールを回収に来た二人のテニス部と、松田の三人で璃々に謝罪をした。
「「「本当にすみませんでした!!」」」
三人は頭を下げた。
(すごいなあ……)
美羅は、三人の中で松田の謝罪が、最も綺麗だと思ったことは、伏せておこう。
謝罪をされた璃々は、しぶしぶ三人を許し、二人のテニス部員は帰っていった。
そして璃々も、
「松っち、生きててね」
「おい、それどういう……」
そう言って、壊れたタロットカードを回収して、帰ってしまった。
後からやってきた晶子が、璃々からその事を聞いていたようで、松田を絞めたのは、言うまでもない。
璃々の呪いの効果なのか、いつものことなのかはわからない。
絞められた松田も晶子から逃げるようにして、部室から出て行ってしまった。
***
夕日が部室に射しこむ中、美羅と晶子だけが部室に残っていた。
「はあ……」
「どうしたの、美羅?」
美羅は怪訝な表情で、晶子をじっと見た。
「最近、面倒事が多いよ……。どうしてかな?」
「さあ……?」
思い当たる節があるのか、晶子は美羅から一瞬目をそらした。
そして逆に、晶子は美羅に問いかけて来た。
「ねえ、美羅はさあ、透視能力を使えばすぐに分かることじゃないの?」
「まあ、それはそうなんだけど……」
美羅が透視能力を使わないようにしているのは、わけがあった。
「……私が小学生の頃、長期の旅行に行ったことがあったの」
美羅は指先を軽く組み、その上で頬杖をついた。
「その時にね、私と同じくらいの年齢の子がいたの」
「へえ、それは今まで聞いたこと無いね」
「うん。多分晶子には話したことがないと思うよ。それで、その子の家族と一緒に、近くの遊園地で一緒に遊んだの。その子のお父さん、とてもかっこよくて、思わずその人を透視したんだ。そしたら……」
「そしたら?」
美羅は一呼吸間をおいて、
「ハゲ、だったの」
「美羅まさか……」
「そう、無邪気な私は、本当にそうなのか知りたくて、そのお父さんに近いづいたの。そして、お父さんをしゃがませるように誘導して、髪の毛を引っ張ったんだ……」
「そ、それで?」
「バサッ、と取れて立派なお坊さんが現れたの。それを見たその子は泣き出しちゃって、〔お父さんが、剥げてたなんて知りたくなかった!!〕っていわれたんだ。それが原因で、力を使わなくなったの」
「何で、美羅がその話を知っているんだ?」
突如ドアが開いて、久が話に加わって来た。
「ええ!! もしかして、あの髪の長い子は久君だったの?」
「……ああ。あの時の女の子、美羅だったのか。そう、家でいろいろあってな。女のふりをする必要があってな」
「そっか……。あの時はごめんね、久君」
「いや、あの時は、動揺して、あんなことを言っただけだ。俺も後悔してたんだ、ごめんな」
こうして美羅のトラウマは、あっけなく解決した。
(十数年間苦い思いをしてきた意味って……)
「あ、ところで久君。どうしてここに来たの?」
「俺、この部活に入ることになったから。そうだよな、晶子?」
「うん。面白そうだし(使えそうだし)」
「ええ! じゃあ私、部活やめようかな……」
今まで以上に面倒なことになるのが目に見える。
美羅は、そのまま職員室へと向かおうとした。
「美羅、何でやめるんだよ! ちょっと待て!」
久は美羅の腕をつかんだ。
「ちょっと久君、離してよ! もう私、耐えられないの!!」
「だから、何でそうなる!!」
ギャーギャーもめていると、美羅がバランスを崩し、あおむけに倒れていき、久は、とっさに美羅の腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
そのタイミングで、カツカツカツ、と誰かがこちらに近づいてきた。
「久さん、何をやっているの……!」
「瑠璃さん!」
最悪のタイミングで、久の婚約者がやってきたのであった。




