18 部活、行かなきゃ
星名家では、リビングで母の陽子を中心に、家族会議が行われていた。
内容は、もちろん久との関係のことであった。
何故か張りつめた雰囲気だったので、美羅は緊張した。
しばらく時間が経ってから陽子、玄蔵、俊治はそれぞれ、
「さあ美羅、白状しなさい!!」
「そうだよ、みーちゃん!」
「冗談だよな? 俺まだ、彼女いないのに……」
と言ってきたので、美羅はとりあえず、
「ただの友達だよ」
と答えてみると、
「そんなはずは無いわ!」
「そうか。ほら陽子、決めつけるのはよくないぞ」
「だ、だよな~。……ふう」
一人だけ回答がずれている気がしたが、放置することにした。
***
その後、美羅は今までに起こった出来事を話した。
晶子と一緒に久の家に行ったこと、執事に追いかけまわされたこと。
久に透視能力を知られたこと。
すると陽子、玄蔵、俊治が驚きの声を上げた。
陽子は目を輝かせて、
「まあ、そんな能力があるの、美羅! じゃあ宝くじの番号を教えなさいよ! そしたら私達、大金持ちになれるわよ!!」
美羅は知っている。
透視をすれば、宝くじの当選は確実なのだが、最終的に詐欺やさまざまな妨害にあい、元の収入に戻ってしまうことを。
世の中そんなにうまくいかないのである。
玄蔵は、
「みーちゃん、その家の場所を教えてくれるかな?」
声は穏やかであったが、目は笑っていなかった。
どうやら怒っているようだった。
俊治は少し傷ついたような様子で、
「おい、美羅。なんであの時、言わなかったんだ! まあいい、と、とりあえず、同じ学部のあの子のことを知りたいんだけどな。どこに住んでるとか趣味とか、それから……」
俊治はにやけていた。
幸せそうだが、美羅にはあまり理解できない心情である。
だから今の俊治を見ていると、哀れに見えてしまう。
あまり人に期待をしない方がいいし、その人は他に好きな人がいる。
「俊治、後で話を聞くから、今は黙ってて?」
「えーひどい」
陽子が強引に話を戻した。
「で、美羅。どうやって、橋本君と仲良くなったの? 彼、有名じゃない。そうそう、最近、学校によく来るようになったって噂があるけど、もしかして……」
「知らないよ!」
どうやら久は、親達の間でも有名な人らしい。
それを聞いて、美羅は顔が引きつった。
やはり、久と関わるのはまずい、と改めて思うのであった。
話を聞いていた俊治は、真面目な表情で、
「そいつはよくわからないが、その執事がやばいよな。ああ……思い出したくない」
そのことについては正論だ、と美羅は思う。
これを聞いた玄蔵は突然立ちあがり、
「お父さんは反対だ!」
星名家では、普段は陽子が一番権力を持っているのだが、玄蔵が気に入らないときは、話は別だ。
これで、陽子の思う通りの展開にならないと安心していた美羅だったが、陽子が唐突に、
「……お母さんね、誰にも言ってないけど、相手の記憶を操作する能力があるの」
玄蔵が驚いた表情で、
「陽子、そんな能力があったのか! ……実は僕も、相手にも自分にも、身体能力を上げる能力があるんだよ」
俊治は、
「ええ!? 父さんも母さんも能力があるのかよ! ……俺も、実は姿を消す能力があるんだけどさ」
今になって、ここにいる全員が、何らかの能力があることが判明した。
すると、陽子が笑みを浮かべ、
「私がその執事の対策を考えておくから、ね? あなた?」
「うーん……」
玄蔵の返事は曖昧であったが、
「ありがとう! あなた!」
陽子は話を強引に進め、美羅に視線を戻し、
「お母さん、頑張るから」
陽子のこの言葉に思わず美羅は、
「お母さん、勝手に話を進めないでよ!!」
「いいじゃないの! ……美羅、あなたは恋愛に対して、心が枯れすぎなの! まるでドライフラワーのようだわ!」
陽子は真剣な表情で美羅を見つめていた。
「高校になってもそんな話を聞かないし、お母さん、つまらないの!」
「そんなこと言われても……」
「お母さんは美羅の恋バナを聞きたい! 聞きたいの!!」
陽子はものすごい剣幕だ。
「愛は素晴らしいわ! お母さんは、お父さんに恋して、人生が変わったのよ!」
「うん……」
「だから美羅、絶対に玉の輿に乗るのよ!」
「……」
どうやらこれが陽子の本心のようだ。
「返事しなさい、美羅!」
「……」
美羅は無言を貫く。
陽子はため息をついて、
「まあ、お母さんも大人だから、これ以上は聞かないわ。でも、いろいろ準備しておくから!」
(どこが大人なんだろう……?)
ようやく、陽子は気が済んだようだ。
結局、陽子によって話が変な方向に進んだ。
美羅は、陽子と玄蔵が何を考えているのかを知っておこうと思い、透視した。
まず、陽子の方を視てみたが、いろんなことを考えているため、予測不能であった。
一つだけ言えるのは、どうしても美羅と久をくっつけたいという、どす黒い感情が渦巻いていることだけだ。
玄蔵の方は、まだ完全に納得してはいないようだが、そのうち陽子に説得させられてしまうかもしれない。
(勘弁してよ、もう……)
こうして、美羅はやっと解放され、不安な気持ちで、お風呂に入ったのであった。
***
お風呂から出た後、美羅は自分の部屋で、学校の用意をしながら考え事をしていた。
思い返すと、本当にいろいろなことがあったことに気づく。
そして、そうなった元々の原因は、ほとんど晶子と久だったことにも気づく。
用意が終わり、美羅はベッドに入った。
ふと、寝る前に美羅はあることに気付く。
「……部活、行かなきゃ」




