12 それぞれの思惑
カツカツと誰かの足音が聞こえてくる。
そしてあの声も。
「フッ、フッフー。私の子猫ちゃーん。どこに隠れているのかな~。全力で可愛がってアギェマスよ」
近くで執事の声がする!?
美羅は強烈な悪寒で飛び起きた。
そして自分が寝てしまったことに気づく。
(どどどうしよう! 私、どれくらい寝ていたの!? 足音が近づいてくる!!)
兄がいない今、執事に出くわしたら終わりだ。
その兄もどうなってしまったのか分からない。
美羅は寝てしまったことを激しく後悔した。
そして最悪の事態が訪れる。
ギイィ。
ドアを開け、加藤は部屋の中を見わたす。
加藤は宝物を見つけたような表情を浮かべ、
「ここにいまちたか。さあ来なしゃい」
「嫌――!!」
***
「おい、美羅、美羅!!」
「……えっ久君? 」
美羅はふかふかのソファに座ったままだった。
そして何故か目の前に久がいて、両腕を掴まれていた。
どうやら執事はこの部屋にはいないようだ。
「急に悲鳴を上げるから心配した」
久がほっとため息をつく。
「で、何故美羅はここにいるんだ。どうやって侵入した?」
「そ、それは……」
久は信用出来るのだろうか。
美羅は頭の中を整理しようとするが、何も答えない美羅に久はしびれを切らし、
「美羅、答えろ」
久は両腕をさっきよりも強く握られる。
「えっと、ちょっと待って。分かったから離して」
あと、顔が近い近い。
「逃げそうだから駄目だ」
「久君の方が足早いでしょ?」
「催涙スプレーで目をやられたら捕まえられない」
「……」
久は用心深く、美羅の腕を離す気はないようだ。
仕方ない、中身のない話をしながら瞬間的に透視を使って判断するか。
美羅は諦めて話す、という表情を作る。
「私、怖かったの。今までこんな経験したことなかったから」
久の考えを視る。
「何があったんだ」
久はこの件には関わっていないようだ。
なので、正直に話すことにしたのだが、
「それはね、って久君? どうしたの」
「美羅、お前……」
「何?」
「透視しただろ」
***
何故ばれた!?
今までばれたことが無かったのに!
「前に占いをしてもらった時も感じたんだが、俺が小さい頃にそういう人に視てもらった時の、探られてる感覚と同じだったが、どうなんだ?」
「……」
これは何を言っても駄目のようだ。
美羅は諦めて話す。
「加藤さんが、私と付き合って欲しいってせまって来て……」
「嘘だろ! 加藤がそんなことするはずが……ってそうじゃなくて能力について先に教えてくれないか?」
おしい、話をそらせそうだったのだが。
「私、小さい頃から透視する能力があったけれど、秘密にしていたの。裏研のメンバーは皆知っているけれど」
「やっぱりそうか」
久は、穏やかな笑みを浮かべて、
「ちょっと協力して欲しいことがあるんだが」
「嫌」
「じゃあ、美羅が俺の屋敷に不法侵入したって、学校で言おうか?」
「それは加藤さんに来いって言われて……」
「多分、美羅の言うことは信じてもらえないだろうな~」
「うう……」
結局、美羅は久に従わざるを得なかった。
***
一方、兄の俊治は執事の加藤に苦戦していた。
(くそ、攻撃が効いて無さそうだ)
「痛いですね、シェンジーン」
そうは言っているものの、なぜか嬉しそうだ。
(こいつと戦っていると常に寒気を感じるな)
「あなたの仕組みを是非調べたいですね。美羅様を誘き寄せる人質にもなりますしね……」
(そんなことも考えていたのか!)
さっさっと決着をつけて逃げたい。
覚悟を決め、俊治は危ない執事に急接近する。
そして、
(くらえ!)
「ああっ!!」
執事は苦しみと喜びが入り混じった叫び声を上げ、倒れた。
けっこう短い戦いは終わりを告げた。
執事に一言、
「眠れぬ一夜を過ごすことになるだろう、変態執事」
と小声で意味深なことを執事に告げた。
そして俊治は催涙スプレーをポケットにしまい、合流場所である屋敷の出口へと向かった。




