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13 屋敷からの解放

一方、美羅と久はというと、


「今度、俺の婚約者の香蘭寺 瑠璃と会うことになってるんだ」


「へえ、そうなの~」


まだ話が続いていた。

正直言って美羅にはどうでもいい。

久ファンにとっては大スクープだと思うが。


「で、美羅には、彼女を透視して考えていることを教えて欲しい。あと、香蘭寺家の内部情報も知りたい」


「それを知ってどうするの?」


「婚約を白紙にする方法を考える」


いつの間にか話が大きくなっていないだろうか?

かなり面倒なことに巻き込まれそうだ……。


「分かったから、とりあえず腕を離してよ」


そろそろ両腕を離してくれないだろうか。

このままだと、美羅は緊張で倒れそうだった。

ただでさえ男子とあまり関わることが無いので(松田は例外)、近距離にいられると落ち着いていられない。


「今のことは誰にも言うな、いいな?」


美羅こくこく頷くと、ようやく久から解放された。


(はあ、疲れた……)


いろんな意味で。


「あと、加藤のことだが……」


「そう、そうなの!!」


美羅は加藤の話をした。

もちろん俊治と占いの鍵のことは話さなかったが。


「そうか、そんなことがあったのか」


「私、怖くて……」


「加藤とは後で話をしないとな。で、美羅。早速だがをやってくれないか? 学校だとなかなか捕まらないしな」


「えっ今!? もう私疲れて……」


「明日学校に登校して、皆の前で美羅に満面の笑みであいさつしても……」


「分かりました。やります!」


「全然元気じゃないか」


久は美羅の扱い方がよく分かっているようだ。


***


美羅と久は向かい合わせに座り、美羅が尋ねる。


「えっと、香蘭寺家の内部事情と、婚約者の瑠璃さんについて知りたいの?」


「そうだ」


「分かったよ」


さっさっと終わらせて帰ろう。

兄が屋敷の出入り口辺りで待っているはずだ。


美羅は目をつぶり、意識を集中させる。


「……現在の香蘭寺家は、財力は衰えて無いし、もめ事も起きて無いみたい。ただ、久君を瑠璃さんと結婚させたいと強く考えている人がいるみたい。この人は……香蘭寺 平次郎。瑠璃さんの祖父にあたる人かな」


久の表情が険しくなる。


「あと、この祖父には専属の占い師がいるみたい」


「そうなのか? その情報は何処にも無かったな」


「彼が久君と結婚させた方が良いって言ったみたい。久君が養子だということも彼から知ったのだと思う」


「……なんでも分かるな」


「うん。それで次は瑠璃さんについてだけど、今後久君と交流を深めたいって思っている程度だね(久君の写真を見てだけど)」


「そうか、分かった」


これで占い(=透視)は終わった。

久は難しい顔をして考え込む。


「あの~久君、一つお願いが……」


「何だ美羅?」


「ここから屋敷の出入り口までの行きかたを教えて……」


***


結局、美羅は久に案内してもらうことになった。

美羅は話すことも無いので美羅の前を歩く久を観察することにした。


(うわあ、やっぱり凄いなあ)


後ろ姿でもやはり久はかっこいい、と素直に思う。

身長が高く、全体のバランスがいい。

そして極め付きはやはり整った顔立ちだろう。

美羅は確信した。


写真集を出せば必ず売れる。


(一冊3000円いや、もっと高くしても売れる……)


久は急に後ろを振り返り、美羅を見た。


「美羅、あのな」


「うん(タイトルは美しき次期社長とか)」


「俺の傍にいてくれないか?」


「うん?」


***


「え、えええ!? 急にどうしたの?」


「俺の専属の占い師になって欲しいんだ」


それを聞いて美羅はほっとする。

一瞬告白されたのかと勘違いした。


「それは無理だよ」


「さっき『うん』っていったじゃないか」


「無理」


美羅はきっぱりと答える。

無言のまま久と見つめ合う状態が続く。

そして諦めたのか、とうとう久は美羅から視線を外した。


「仕方ない。今日は諦めるか」


「今日は?」


「ほら、もう少しで着くぞ」


こうして、美羅は屋敷の出入り口までたどり着いた。


***


今日は本当にいろんなことがあった。

そしてこの屋敷に来ることが二度と無いことを願う。


「美羅」


「何?」


久は美羅に近づき、


「今日はありがとう」


と耳元で美羅に囁き、彼はそのまま去っていった。

美羅は顔が少し赤くなっていた。


(はあ、びっくりした~)


「おい美羅、なにいちゃついてるんだよ」


「わっ! シェンジーン!!」


透明俊治が声をかけてきたので美羅は驚いた。


「おい、それで呼ぶなよ」


今のやりとりを見られていたことを知り、恥ずかしさで顔がさらに赤くなる美羅であった。



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