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ソデリエル奇譚  作者: 蒼埜葉琉
第一章:雷鳴と共に現れた少女
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9/23

七


◇◇◇◇◇


『ヤダぞ』

「……」

「…………」

 先程の危機的状況から抜け目的地に近づいたものの、今度は思わぬところから行き止まりを食らった。

 セラである。

 今さっきまであれほど『小夜殿の為なら』と嬉々として山の上を跳ねるように滑らせていたというのに、二人が降りられない高さで止まってしまったのだ。

 降ろしてしまえば一緒に行けない、姿を消さなければいけないのが嫌らしい。せっかく出てきたのだからもう少し出ていたい、話をしたい(特に小夜とだろう)遊びたいと駄々をこねる始末だ。

 キョウリの眉が僅かに顰められている。ひしひしと彼から伝わってくる不機嫌オーラに冷や汗が止まらない。

 以前、友人たちに鈍感だと言われてた小夜だが、こればかりはわかる。

(お、怒ってる、これはちょっと怒ってる!!)

『キョウリはズルイな、そんなひょろひょろと小さな姿であまり強くもないのに、小夜殿とずっとおしゃべりできるではないか。それに比べ、我は大きな姿だから強く逞しく役に立つ。なのに一緒にいられないなんて理不尽だ、ずるすぎるぞ、我ももっと一緒にいてもいいではないか』

 完全に駄々である。

「セ、セラさん、また後でいっぱい話しましょう、ね?」

「大きい図体をしていながら、心が小さいとは悲しいな。なぁ、セラ」

『きょ、キョウリが大きくなれば我の気持ちがわかる! せっかく出れたというのに、少ししか話せず一緒に居れないなんて、とても寂しく辛いのだぞ?! なのになのに!』

「きょ、キョウリさん、今の言い方は酷いですよ、それはダメです!」

 今度は大蛇と少女の二重の非難に、一つ、ため息を吐いた。

「セラ、助けてくれたことは本当に感謝している。ただ、今は時間がないんだ、頼むから降ろしてくれ」

『……』

「セ、セラさん、きっとまた呼びます。だから」

 二人の言葉に、セラはゆらり大きな頭を振り向き、キョウリと小夜の目をじっと見つめると、ゆっくりと地上へと降下し始めた。

『……わかっている。我は主の言葉に従うしかない、だから、降ろすさ』

 地上へ着くと、キョウリは小夜を抱えて軽々と飛び降りる。それをどこか羨ましそうに見つめるセラだったが、ゆっくりと青紫色した光の粒子となって消えていく。

『約束、だぞ、小夜殿』

「うん、きっと呼びます。又いっぱい話しましょう! キョウリさんもい、いいです、よね?」

「……仕方ない。また、あとでな、セラ」

 キョウリの深緑色の瞳が僅かに優しく細められる。数刻前には思いもよらなかった展開続きだ。しかも大蛇と少女相手に、こんな約束をすることにになるとは思ってもいなかった。小さく笑う。

『! あぁ、また、あとでだ!』

 光の中で、ぶんぶんとセラが大きな頭を何度も振り、嬉しそうに眼を細くする。そうして、光は徐々に小さく霞むように消えると、辺りは闇と、天の明かりだけとなった。小夜が両手で抱きしめるように握っていた短剣を見下ろすと、とくりと、確かに鼓動が聞こえた。セラの鼓動だろうか。

「キョウリさん、有難うございます」

「……助けてもらったからな、いくぞ」

「つ、ついてっていいんですか?」

「ついてくるんだろう、どうせ」

「は、はい!」

 嬉しそうに笑う小夜に、キョウリはまた一つ、何度目かわからないため息とともに、苦く小さく笑った。


 と――


「そこの二人、いちゃついてるとこ悪いけど、出頭してほしい」


「え?」

「誰だ」


 声は突然だった。幼い少女特有の高い声が辺りに響き渡った。

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