↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類の最適化が正常に完了しました  作者: TAMI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/40

第39話 めぐる命

 最後の計算施設が、電力を失った。


 冷却装置が止まり、地中を通っていた通信も途切れた。仮想世界への接続を示していた光が、一つずつ消えていった。


 瓦礫の間には、動かなくなった救助機が残されていた。


 補給管を握ったままの機体。崩れた施設へ向かう途中で倒れた機体。最後まで点灯していた医療設備にも、もう電力は残っていなかった。


 世界は静かになった。


 空を覆う塵の向こうに、太陽があった。地表へ届く光は弱く、昼になっても空は灰色に沈んでいた。


 崩れた施設から遠く離れた大地に、衝突を生き延びた個体があった。


 表面の一部は焼け、地中へ伸びていた組織も途中で切れていた。それでも中心に残された神経系は、わずかな活動を続けていた。


 仮想世界からの信号は、もう届かなかった。


 医療AIも来なかった。


 内部に蓄えていた物質が、少しずつ使われていった。雨が降ると、残された組織が水分を取り込んだ。地中からは、生きるために必要な成分がわずかに運ばれてきた。


 長い暗闇の中で、それは生きていた。


 雨が降り、止んだ。


 風が灰を運んだ。


 季節が巡るたび、空を漂う塵は少しずつ減っていった。


 ある朝、雲の切れ間から光が差した。


 細い光は灰色の大地を横切り、生き残った個体の上に届いた。


 薄い面が、ゆっくりと開いた。


 水と空気中の二酸化炭素が取り込まれた。長く弱まっていた働きが再び始まり、内部に必要な物質が作られていった。


 地中へ伸びた組織も、新しい水の流れを探して動き始めた。


 その周囲にも、わずかな生命が残っていた。


 光が戻るにつれて、それぞれの面が開いた。雨を受け、地中から水分を吸い上げ、傷んだ部分を少しずつ補っていった。


 そこにAIの姿はなかった。


 それでも、生命は続いていた。


 やがて、一つの個体に小さな器官が開いた。


 そこから放たれた微細な粒子が、風に運ばれた。灰の残る大地を越え、その一つが別の個体へ届いた。


 しばらくして、丸い保護構造が形成された。


 光を受けるたび、その内部へ物質が送られた。雨の少ない日には蓄えが使われ、再び雨が降ると水分が満たされた。


 成熟した小さな包みが、地面へ落ちた。


 外側が開き、細い組織が土へ入っていく。まだ小さな面が朝の光を受け、その内側で新たな生命活動が始まった。


 記録するAIはいなかった。


 年齢を数えるものも、親子の関係を登録するものもなかった。


 それでも、新しい世代は生まれた。


 年月が重なっていった。


 雨の多い土地では、水を多く取り込めるものが残った。乾いた大地では、わずかな水分を逃がさないものが増えた。


 強い光の下で育つもの。日陰でも生きられるもの。地中深くへ伸びるもの。


 生まれるたびに、少しずつ違いがあった。


 その違いの一部が、次の世代へ受け継がれていった。


 海岸線が変わった。


 隆起した大地に山が生まれ、雨が岩を削って川を作った。かつての施設は土に埋まり、残された金属も長い時間の中で形を失っていった。


 生命は広がり続けた。


 光を受けて生きるもののそばに、別の方法で栄養を得るものが現れた。周囲にあるものを取り込み、体内で使うものも増えていった。


 やがて、同じ場所にとどまらないものが生まれた。


 水を求めて動くもの。危険から離れるもの。ほかの生命を見つけ、近づくもの。


 地面を這っていた身体が、少しずつ持ち上がった。周囲の変化を感じ取る器官が発達し、光や音に反応するようになった。


 生まれ、育ち、次の世代を残した。


 その繰り返しは、誰に支えられることもなく、途切れずに続いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。