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人類の最適化が正常に完了しました  作者: TAMI


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第36話 次の世代

 AIが人類に普及してから、数千年が過ぎていた。


 雨が上がった。


 朝日を受けた地表に、小さな滴が光っている。薄く広がった生体組織の上を水が滑り、その縁から土へ落ちた。地中では、細い吸収組織が湿り気のある場所へ伸びていた。


 住宅も、商店も、道路もなかった。かつての街の区画を示すものは、土の下に残った古い基礎だけだった。


 点検機が低く通り過ぎると、地表に短い影が走った。


 一つの個体で、微量成分の不足が見つかった。作業機が近づき、土へ少量の補充液を染み込ませた。吸収の状態を確かめると、そのまま離れていった。


 日が高くなるにつれ、光を受ける面がゆっくりと広がった。水と空気中の二酸化炭素、地中から取り込んだ成分が、内部で必要な物質へ変わっていく。夜の間に減った蓄えも、少しずつ満たされ始めていた。


 その中心では、幾重もの組織に守られた神経系が活動していた。


 地下の通信網に、途切れはなかった。遠くの計算施設から、接続の継続を示す信号が届いている。本人たちが共有を許可した生活への評価にも、異常は見つからなかった。


 現実へ向けた声はない。


 医療AIは確認を終え、次の区画へ点検機を向かわせた。


 研究施設の作業台には、古い保護容器が一つ置かれていた。


 透明な壁には細かな傷があり、底には、かつて補給管が通っていた穴が残っている。保管庫から運ばれてきたそれを、機械の腕が静かに回した。


 隣には、現在使われている生体組織の断面が映し出されていた。


 容器が担っていた保護は、身体の表面へ移っていた。水を送っていた管の代わりに、外部から吸収する組織が伸びている。


 研究AIが記録を送るたび、二つの間に設計図が重なった。乾燥に弱かった構造。温度の変化に耐えられなかった構造。修正された箇所と、その変更を受け入れた利用者の同意が、順に表示された。


 古い方式を選んだ利用者の管理記録も、今なお更新されていた。


 機械の腕が容器を保管箱へ戻した。


 作業台に、次の試験用組織が運ばれてきた。


 二つあった。


 透明な試験室の中で、一方の表面が小さく開いた。そこから放たれた微細な粒子が、緩やかな空気の流れに乗った。


 もう一方へ届いた粒子のいくつかが、表面に留まった。そのうちの一つが内部へ取り込まれると、表示されていた二組の遺伝情報が、新しい組み合わせへ変わった。


 細胞が分裂を始めた。


 しばらくは順調だった。だが、保護された内側で発育が遅れ始めた。外側には十分な蓄えがある。それが、必要な場所へ届いていなかった。


 研究AIは供給経路を拡大した。


 次の試験では、内側へ物質が届いた。今度は、それを包む層が成長に追いつかなかった。圧力の上昇を捉えた装置が補助に入り、試験は中断された。


 設計図の一部が書き換えられた。


 広がりに合わせて余裕を持たせた保護層。その内側へ通じる、複数の経路。光が途切れている間も供給を続けられる蓄え。


 新しい試験組織が、再び作業台へ届いた。


 試験室の下には、土を入れた浅い容器が置かれていた。


 成熟した小さな包みが、支えていた組織から離れた。土に触れてわずかに転がり、その場で止まった。


 外側に傷はなかった。


 水分を吸収した包みが、ゆっくりと開き始めた。細い組織が土へ入り、折り畳まれていた面が光の方へ広がった。


 研究AIは、補助の供給量を下げた。


 内部への流れは途切れなかった。


 さらに下げた。新たに作られた物質が、保護された神経組織へ届いていた。


 試験室の明かりが落ちると、蓄えが使われ始めた。再び明かりが戻るまで、状態は保たれていた。


 医療窓口から、二人分の確認が届いた。


 二人は以前から、自分たちの遺伝情報を受け継ぐ子どもを望んでいた。専門の設備を使う方法も提示されていたが、今回の方式について説明を受けたあと、導入を希望した。


 確認項目の一つに、返答が残っていなかった。


 医療AIは処置を保留した。


 しばらくして、仮想世界側から質問が届いた。生まれた子どもの接続と、成長に合わせた保護についてだった。説明が返され、それを確認したという記録のあとに、同意が加わった。


 二人分の記録がそろった。


 地表の一角で、医療用の機体が作業を始めた。


 一方には、生殖細胞を包んで送り出す組織が形成された。もう一方には、それを受け入れ、発育を支える組織が作られた。


 出来上がっても、表面は閉じたままだった。


 医療AIは二人へ準備の完了を伝えた。子どもを迎える意思が改めて確かめられると、それぞれの組織が働き始めた。


 朝、風が吹いた。


 小さく開いた場所から、微細な粒子が離れた。いくつかは上へ舞い、いくつかは地表を滑る空気に運ばれた。


 少し離れた個体の表面に、その一つが触れた。


 受け入れ側の組織が、指定された相手の情報を確かめた。粒子は内側へ取り込まれ、表面は再び閉じた。


 医療AIの記録に、受精の成立が加わった。


 点検機は上空を通り過ぎた。地表には、風だけが残っていた。


 光を受ける面の下に、小さな膨らみができていた。


 親の内部から、そこへ物質が送られている。日差しの弱いときは蓄えが使われ、雨のあとには水分が取り込まれた。


 膨らみは、少しずつ大きくなった。


 その内側で、神経組織が守られながら育っていた。水分を吸収する部分が伸び、光を受ける薄い面が折り重なるように収まっていった。


 管理AIは、下の地面を確認した。


 硬い石が一つあった。作業機がそれを取り除き、土をほぐした。水分が溜まりすぎないことを確かめ、強い風を遮る低い覆いを置いた。


 親とつながる部分が、次第に細くなった。


 内側には、離れたあとに使う物質が蓄えられていた。保護層も十分な厚さになっていた。


 やがて供給の経路が閉じた。


 小さな包みが、自らの重みで離れた。


 柔らかな土へ落ち、わずかに傾いて止まった。機体は近づかず、その状態を確かめていた。


 土の湿り気が、外側へ染み込んでいった。


 継ぎ目が開いた。


 細い組織が地中へ入り、光を受ける面が少しずつ外へ出た。朝露が、その小さな縁に留まっていた。


 医療AIは、新しい記録を開いた。


 年齢、ゼロ歳。


 親の記録から二つの情報が結ばれ、その下に、まだ何も書かれていない履歴が作られた。


 接続の設定には、成人と同じものは使われなかった。


 発達に合わせて刺激の量が絞られ、十分な休息が組み込まれた。家族と関わるための環境も用意された。医療AIは神経活動を確かめながら、接続を段階的に進めた。


 地下の通信網を通じ、準備の完了が両親へ伝えられた。


 広い区画には、長い年月を生きてきた個体が並んでいた。その一つのそばに、まだ小さな個体があった。


 少し離れた場所では、別の保護構造が膨らみ始めている。


 医療AIは日差しの角度を確認し、小さな個体の上にあった仮設の覆いをわずかに開いた。


 朝の光が、柔らかな面へ届いた。地中から取り込まれた水分が、その内側へゆっくりと運ばれていった。

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