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VIOLETlazward 〜辺境伯令嬢シャルロットの奮闘記〜  作者: 和霞


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7/23

1-7.御縁

 ゲラン領へは屋敷から馬車で2時間ほどの道程である。

 自領の南門を出たら30分ほどでゲラン伯爵の屋敷がある。


 真夏とはいえ国境付近の我が領地は心地よい風が吹き、開けた窓からはカラリとした風が入り頬をなでる。


 堅牢な街並みの中、濃茶の2頭立ての馬車が進む。


 車体は一片の汚れが無いように丁寧に手入れされており、車体に施されている紋章も磨き抜かれている。


 乗り心地もよく、いつも整備してくれている御者の人達に感謝しかない。

 私の大好きな自慢の馬車なのだ。


 普段のシャルロットであれば馬車に乗るだけでも非常に嬉しく、はしゃいでしまう。

 街行く人々や領民の営み、そして大切な領地の移り変わる風景が美しく、通常であれば、おしゃべりが止まらない。


 しかし、今日はアルフレッドなのだ。


 グリードからのアドバイス通りに、軽く背をもたれかけ、やや下を向き目を閉じる。

 窓外が気になり、ウズウズしちゃうが我慢だ。


 時折、お母様が今日のお茶会の注意や人間関係をお話ししてくださる。

 シャルロットは頭に叩き込み低い声で短く返事をする。


 ほんの少しの間、一定の心地よい揺れで微睡でいたが、ふと窓の外を見ると我が領地自慢の穀倉地帯が広がっていた。


 若緑の絨毯の中、所々に農作業をする人達が見え隠れする。

 我が家が守るべき民と領地を心に刻む。


 視線を感じ目を向けると、お母様がこちらをじっと見ていた。


 会場では、お互いの位置を確認する事。不測の事態の時は声をかけ合う事。

 家族なのだから助け合う事は当たり前なんだと、真剣に伝えられた。


 本来この規模のお茶会であれば、いくら年若くあろうとも家の代表であり、それぞれ個人で交流し外交の幅を広めるのが普通だ。

 

 それなのに、このようにお声がけなさるとは。

 お母様は、よっぽど第二皇子との対面を心配をなさっているのね。


 辺境伯領の南の門を抜けしばらくするとゲラン伯爵領に入った。

 少しづつ馬車の速度が落ちる。ゲラン伯爵の屋敷が見えてきた。


 到着すると御者がドアを開け、グリード、シャルロットの順に降りる。


 馬車前に立ち、シャルロットは母をエスコートする為に手をかざす。

 お母様は、私の差し出している手を何故か、ぎゅっと強く握った。


 思わず手に目を向けると、お母様は、そっと優雅に指先を載せ直し馬車を降りる。


 ゲラン家の執事の後に従い、ゆっくりとお母様と共に庭園へと足を踏みいれる。


 庭に入るや否や、ゲラン伯爵夫人が飛ぶようにお母様の方へ近づいてくる。

 その後に伯爵が、苦笑しながらもゆっくりとこちらに歩み寄り、いつもの如く歓待してくれる。


 庭の中心から甲高い声が聞こえ、一際賑やかな集団に目を向ける。


 ホストであるゲラン伯爵子息のユーリ、滞在しているリュシオール第二王子達が、令嬢達に囲まれていた。


「アル!」


 突如、大きな声で呼ばれた。

声の主を目で探していると、ユーリが大きく手をふりながら集団から抜け出てきた。

 ミルクティー色の髪の毛先がクリクリふわふわしていて可愛らしい。

 

 シャルロットもユーリに向かって歩く。


 なんども会ったことのあるユーリが私だと気づいていない!と、シャルロットはにんまりと笑ってしまう。

 心の中では、もう、ドコドコとお祭り騒ぎだ。


 「アル、久しぶり!何か良いことがあったのかな。大丈夫?」


 ユーリは、いつもはクールなアルフレッドが変にニコニコしている様子が心配になり、緑色の瞳を眇めながら顔の前で手を左右に振る。


 シャルロットは、あんまりアルアル言うなよ~と心の中で喜びが爆発していた。

 デレデレした顔が抑えきれなかったのだが、グリードに背中を小突かれ我に返る。


 ユーリの後方に目を向けると、第二皇子と子息がユーリを追って近づいてきていた。


 シャルロットは短く一息を吸う。一瞬で纏う空気が変わった。


 お兄様の堂々たる姿を思い浮かべ深い礼をとる。


「リュシオールだ。ユーリより君の話は聞いている。

 今まで会う機会はなかったが近しい間柄だし、これからよろしくな。」

 リュシオールは、シャルロットの正面で立ち止まり右手を差し出す。


「お初にお目にかかります。アルフレッド・レッチフィルでございます。」

 シャルロットは顔を上げ手を差し出す。


 王家の象徴ともいえる黄金の髪が日差しを受け輝き、柔らかそうにふんわりと風になびく。


 瞳は澄んだ湖のような青色で、高くすっきりとした鼻筋に薄い唇。美しく上品な顔立ちなのに、くしゃりと相好をくずして笑いかけてくれる。


 シャルロットもニヘラッと笑い、ほっそりとした手で、しっかりと握手をした。

 

「デルバール・フィネスです。ディルとお呼びください。よろしくお願いします。」

 デルバールが挨拶しお互い握手する。


 知的そうなきりっとした深緑の眼差しが鋭く、ブラウンのかっちりした髪が全体的にの実直そうな雰囲気を醸し出している。

 

「私の事も、リオと呼んでいいぞ」


 気がつくと第二王子がアルフレッドの真横におり、愛称呼びの許可を出してくれた。


 にこやかに話をしていたが、これだけの将来有望な四人が集まっているのだ。


 令息令嬢達がこのチャンスを放っておくわけもなく、親と共にぐいぐいぐいっと近寄ってくる。


 王子達の周りを取り囲み始めたので、シャルロットは、そおっと抜け出す。


 すると待っていたかとばかりに、アルフレッドが仲良くしている近隣の子息達に囲まれる。

 シャルロットも顔見知りの者達だ。


 なるべく声を出さないようにフムフムと頷いていると、シャルロットだと誰にも気づかれず、友好的な時間が流れる。


 楽しく話していたのに、グリードから気をつけるように言われていた数人の子息達がやってきた。

 今日は大方、良縁を手繰り寄せるため、入婿先探しに連れてこられたのであろう。

 譲渡できる爵位がない次男や三男の者であり、卑屈な発言が多く、どこかの嫡男などにからんでいる。

 

 顔の造形が良く格好は整えているのに、品の無さを醸し出しているのが残念だ。

 醜い嫉妬をしている者の目付き顔付きが表明に現れすぎている。


 周りの評価を自ら下げている事に全く気付かない残念な人達であった。


 しかし、グリードがいち早く気づきシャルロットをさりげなく誘導する。

 友好的な家紋の大人達の方の輪へと上手い事、移動させてくれる。

 グリード、やるな。


 卑怯者に真剣に真っ向から立ち向かってあげたりなんかしない。

 1人で立ち向かえない奴に関心を持ってあげない。

 逃げるのが正しい時もあるのだ。


 しばらくすると、シャルロットの疲れが見て取れたのか、グリードに促され会場内に用意されているテーブルへと連れて行かれた。


 途中、ビュッフェテーブルに用意されているお菓子をいくつかお皿に乗せる。


 緊張しながら頭をフル回転させたため思考が切れかかっていた。

 甘いもの、ありがたい。綺麗で可愛いスイーツに、少しだけ気持ちも浮上した。


 ちらりと庭園を見ると、いくつかのテーブルに従者を控えさせた子息、令嬢達が休んでいる。


 従者を近くに控えさせ休んでいるときには、許可が出るまで話しかけないのがマナーだ。


 席に着くと、ゲラン家のメイドがすぐに近寄り、シャルロットの前に紅茶と冷たいミネラルウォーターを置いた。 


 グリードはサッと持参の銀のスプーンで毒味を済ませ、シャルロットへ差し出す。

 肩にかけたマントを上手く使い、背後のシャルロット隠すかの如く、数歩離れたところに警備体制をとった。

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