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VIOLETlazward 〜辺境伯令嬢シャルロットの奮闘記〜  作者: 和霞


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1-5.兄になる

「私が、お茶会へ参りましょう!」


 シャルロットが告げると、アルフレッドの衣装をクローゼットから選んでいたグリードの手が止まった。


 カツカツと、シャルロットに歩み寄る。


「シャル様。何をおっしゃっているのですか?」


 グリードは意味がわからないとばかりに、言葉を続ける。


「先程も申し上げましたが、当主様方のご意向で、御一緒に、お茶会にお連れする事は、できかねます。」


 いちいち句読点のところで強調しながら、グリードが声を強くする。


「分かっているわ。 

 両家の関係を考えたらば、お兄様が行かないとお話にならないしね。

 そして、シャルロットはお茶会へは連れていかない。」


「さようでございます。」


「たがらこそ。私が。お兄様になって、お茶会へ参ります!」


 負けずに句読点で強調しながら言い放ち、シャルロットは、チャキーンとポーズをきめる。


 メイテアとグリードは、はぁ?と訝しんだ。


 シャルロットは素早く、さらさらの髪を後ろでまとめて縛り、グイッと右手で髪をかきあげおでこを出す。

 普段、前髪を下ろし、顔の両サイドに髪を垂らしている印象とはまるで違う。


 耳下から顎のへのすっきりした輪郭が爽やかである。

 クッと目に力を入れると、シャルロットは驚くほどアルフレッドに似ていた。


「これほどまでとは」


 グリードは、シャルロットの顔を不躾にもジロジロ見ながら呟き、ぐるりと一周する。

 そして、ふむっと指で顎をさする。


「シャル様がアル様に成り変わって、お茶会に参加されるという事ですね。」


「そうよ。今日は、どうしてもお兄様をお休みさせてあげたいの。

 だってこんなに、お辛そうなんだもの。」


 「そうですね。私も、ここまで体調が崩れているアル様を初めてみました。

 本日は、叶うならば外出させたくはありません。

 ただ、似ているとは言え上手くいくのでしょうか。」


 グリードはお茶会で起こりうるであろう状況を、シャルロットに問いかける。


 二人共にソファーに座りなおし、思考しながら真剣に話し合った。


 いつしかアルフレッドを休ませるには、この案が最適なような空気が二人の間に漂い、妙なテンションで盛り上がっていった。


 メイテアは何とか止めようと合間合間に口をはさんでいたが、今は黙って成り行きを不安な面持ちで見守っている。


 シャルロットは徐に立ち上がり、アルフレッドのクローゼットを開ける。

 色とりどりの洋服が掛けられていて、それをざっざっと繰る。


 アルフレッドが好んでよく着ている、真紅の貴族服を手に取った。

 我がレッチフィル家の家紋の色だ。


 アルフレッドは、歳の割には華奢な体型に見える。

 幼少より辺境騎士団と共に鍛えているので、印象よりもガッチリしていて脱いだら凄いねタイプだ。


 シャルロットは、その歳の子供達よりも背が高い。ほぼ、2歳年上のアルフレッドと同じくらいの背丈だ。

 そして、やはり幼少より辺境騎士団と共に鍛えているため、程よく筋肉がついている。


 シャルロットが手に取った服は、金色の装飾部分などが体型の違いをカバーしてくれそうだった。

 ボトムも少しだけ高めの靴を履けば、シャルロットが着用しても違和感は無さそうだった。

 

 シャルロットは衝立にハンガーごと洋服をかけ、ツイとティーワゴンに近づく。

 ポットに入っていた冷めたお湯を、使っていないフィンガーボールに移し、少し髪に馴染ませる。


 メイテアが短い悲鳴をあげる。

 

 それを横目で見つつ、シャルロットは湿らせたさらさらのストレートの髪を、ぎゅうぎゅうに三つ編みにする。


 衝立の後ろに周り、戸惑うメイテアに手伝ってもらいながらシャルロットはサッと着替えた。


 バッと衝立よりでる。グリードは目を瞬かせた。

 アルフレッドの衣装を身につけたシャルロットは、今のアルフレッドを越えていた。

 皆が知っている聡明なアルフレッドだったのだ。


 どや顔するシャルロットに、最初は皆が興奮していたが、だんだんと冷静になってくる。


 菫色の三つ編みをクルクル回しているシャルロットを見て、不安に思ったらしい。


「本当に行かれるのでしょうか。嘘をついていることがわかったら、シャル様の経歴に傷がつきます。」


メイテアは少し涙ぐみ、シャルロットに近付いた。


「今日だけだから。少しだけ、お兄様を休ませたいの。」


 シャルロットは真剣な顔つきでメイテアの手を取った。


 メイテアは覇気のないアルフレッドとシャルロットを何度も交互にみて、やっと覚悟をきめた。

 それに、たとえ反対したとしても、シャルロットはアルフレッドを守るために無理を通すんだろうなと想像し、あきらめて協力することに決めた。

 

 「シャル様。お願いですから、危険な事はしないでくださいね。絶対に一人で抱えたり、隠し事はしないでくださいね。

 グリード。必ずシャルロット様をお守りしなさい。頼みましたよ。」

 メイテアは2人に懇願した。


 次の段階に進む為、メイテアはドアを開け廊下に誰もいないか確認した。


 そしてグリードはアルフレッドの手を引き、シャルロットはアルフレッドの背中を押しながら、素早く隣のシャルロットの部屋へと移動した。


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