1-22.調整
申し訳ございません。
タイトルをつけ間違えておりましたので、変更しております。
ブルイは窓際に立ち、伝書鳩をオデュッセイ伯爵領へと放つ。
伝書鳩は澄んだ空を一直線に飛んでいった。
辺境の各領地についての問題や議題に上がりそうな事を皆で話し合っていたら、すっかり時間が経っていた。
シャルロットが取り続けたメモは、参考資料となるべく充分に重なっている。
同時並行で、お兄様も書いてくださっていたので後で照らし合わせてもらおう。
明日、家庭教師の先生にも伺ってみて、予備知識を増やしておこうとお兄様と話す。
コツコツと窓を叩く音がして、オデュッセイ伯爵領から伝書鳩が戻ってきた。
開催はこちらの希望通り、本日より6日後の10時開催に決まった。
王家に知れたとしても、準備や編成に時間がかかるだろうし、どんなことをしても、開催日に間に合うことはない。ニヤリ。
オデュッセイ伯爵領では数刻後、各領地へ伝書鳩が放たれるはずだ。
数日後、正式な招待状も届けられる事だろう。
「門へは二日前に着くように、こちらを出ます。
そのつもりで準備を進めなさい。」
「奥様、かしこまりました。」
ブルイはすでに頭の中で、段取りや連れて行く人員を選び出していた。
「アルフレッド、シャルロット。
貴方は今から全て終わるまで、このまま入れ替わりなさい。
ここに居る皆も、そのように対応しなさい。
屋敷の者達に見破られるならばそれまで。
他の貴族達に相対できるはずもありません。」
その場にいた者、皆、覚悟を決めた。
翌日早朝に、オデュッセイ伯爵領から伝書鳩で先触れが届いた。
念のため、国境の文官や王都のお祖父様にも逐一報告を飛ばしている。
概要説明のため、オデュッセイ次期伯爵サイラス様が我が家にいらっしゃるそうだ。
にわかに屋敷の動きが速くなる。
ドゥゴールウォールの衛兵にも、オデュッセイ家の方々が来訪する旨の準備と、確認の後、通行許可するよう伝書鳩を放した。
アルフレッドは、オデュッセイ次期伯爵サイラスを知っていた。
もちろん、貴族の交流として夜会などで挨拶された事もあるのだが、サイラスは次期伯爵に任命されるまで王都の近衛隊に所属していたのだった。
オデュッセイ伯爵領にはブレナ学園の分校がある。
武に重きを置く校風のため、年に数回、王都よりブレナ学園の卒業生である近衛隊員や騎士隊、警備隊などが訪れ、後輩達に指導を付けてくれるのだ。
中でも年に一度、大規模な指導の会がある。
その時は就学前にもかかわらず、辺境領の子息達はブレナ学園内に入り、その指導を見学や体験する事ができたのだ。
アルフレッドが見学に行った年、近衛隊に所属していたサイラスが指導していた。藍色の髪に黒い瞳。スラリとした体躯からは考えられないほどの重い剣さばき。
対戦見学した際、騎士達が、何人も吹っ飛ばされていて驚愕した思い出がある。
熊のようなブレナ学園校長のオデュッセイ伯爵の息子だと知り、ひどく納得してしまった。
随行していたブルイとは幼馴染だったらしく、サイラスからブルイがちょっかいをかけられ、ムッとした顔の後、珍しくも破顔していた。
一緒にいたアルフレッドは下から見上げ、ものすごく嬉しかったのを鮮明に覚えている。
オデュッセイ伯爵はブレナ学園の校長であり、フロライト学院長、すなわち前辺境伯のお祖父様と盟友である。
だからなのかな。何かあったら、オデュッセイ伯爵を頼るようにお祖父様に言われていたのは。
昼過ぎに我が領地の騎士に先導され、サイラス様はレッチフィル家に到着した。馬からヒラリと飛び降りた。
一瞬、シュッと格好よくきめていたいたが、出迎えた執事のブルイに絡みワキャワキャしていたのを、こっそりお兄様と階段上から覗き見する。
本日、応接室で説明を受けるのは、辺境伯夫人のフランシカと執事のブルイ、そして同行する文官二名である。
お兄様と私のそこでの出番は今日はない。そろそろ家庭教師が、いらっしゃる頃だわ。
お互いの姿をチェックし合い、本格的に入れ替わり開始だ。
数刻後、サイラス様は早馬で颯爽とお帰りになった。
到着時に開催に向けて自領でも準備があるので、すぐに辞する事をブルイにサラリと告げてくれたらしい。歓待の準備が不要と暗に知らせてくれる、仕事のできるお方である。
日が傾く前に説明と質疑応答をサクサク終え、当日はご自分も参加するので何かあれば力になると告げてくれた。
「アルフレッド様、シャルロット様、奥様がお呼びです。」
一日の授業を終え執務をしていた私達を、ブルイが呼びに来た。
もちろん、どの教師達にも気づかれずに乗り切りましたよ。
皆でお母様の執務室に行き、サイラス様から伺った話をブルイから聞いた。
まず、当日の司会進行はプログラムに沿って、サイラス様が行うとの事。
アルフレッドが年若の為に代行するつもりだが、レッチフィルの方で立てるようならば引くとおっしゃるので、お母様はそのままお願いしたそうだ。
因みに、サイラス様はお母様の三人のお兄様方の学園の後輩であり、また、数年前まで近衛隊である二番目のお兄様の部下であった。
お母様は、サイラス様を小さい頃に剣術でよく負かしていたらしく、立派になられてと、ホホホッと笑っていた。
この会議では、招待状1枚につき二名まで入室できるそうだ。集まった者達の安全を考慮した結果らしい。
入室できる者は、領主、領主代理、次期領主、そして領地を持たない爵位持ちのみである。
止む得えず、領主達が都合つかず致し方なく任命にて出席する代理者は、責任者である辺境伯家へ、委任状の他に身分証提示、事前通達が必要となる。
この規範に、シャルロットや皆は安堵した。
暗黙の了解だが、会議は男性のみの参加が習わしである。
開催主特典で、ブルイの入室と内側からのドアマンとしてグリードが認められたそうだ。
わぁお。一人で出席する可能性があったんだと目をぱちぱちしてしまった。
参加者は城壁内に入る際に、警備隊から念入りにボディチェックをされる。
更にもう一度、会議室近くの控え室で行われる。
これは全て当家から随行した騎士より受けてもらい、ブルイが招待状と照らし合わす。
当日、出迎えるのは、女主人であるフランシカの役目である。
通過した参加者は侍女に次の間に案内され、フランシカと挨拶をし、時間になれば会議室へと入室する。
参加者が全員入室後、開始時刻にアルフレッドが入室し会議が開催される流れだと説明された。
フランシカに大丈夫かと問われると、やる気満々のシャルロットは、もちろんとこぶしを握る。
ウォール内には、王都から派遣されている文官や騎士が数名滞在している。
いちゃもん防止のため、文官2名にも記録係として巻き込ませてもらおう。




