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VIOLETlazward 〜辺境伯令嬢シャルロットの奮闘記〜  作者: 和霞


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1-20.デジャブ

「私が、お兄様として参りましょう!」


 シャルロットの声が部屋の中に響いた。


 あっデジャブ。と、グリードとメイテアは天を仰ぐ。


 フランシカとブルイは身動ぎしなかった。

 

 グリードは、うーんと唸った後、確かにと頷き、発言の許可を求めた。


「この辺境会議に参加される方の多くは、先のお茶会にいらした方々です。

直近の印象深いできごとであり、拍手など無邪気な様子ができぬアルフレッド様が参加されては、違和感を与えてしまうかもしれません。」


 そうねぇとフランシカは眉間を揉みながら、シャルロットを見た。


「シャルロット、領主会に出席できるだけの見識はあるの?

 我が領地や近隣領地の問題を把握しているのかしら。」


「はい。我が領地の要望書、近隣領地の地形問題や特色など頭にいれております。

 先日のお茶会で挙げられていた問題も興味深く、帰ってから詳しく調べました。

 お兄様と先生方と一緒に問題提起したり、ディスカッションをしています。」


 めちゃくちゃハキハキとシャルロットが答える。


「なるほど。心強いわね。

では、アルフレッド。シャルロットがあなたになり変わっている時はシャルロットとして振る舞う事はできるのかしら。」


 皆、あっと、今、気付いたとばかりにアルフレッドを見た。


 アルフレッドは、同時に二名存在してはいけない。


 その期間、誰もこの奥の部屋には通させないように配慮するとはいえ、万が一を考えシャルロットの衣装を着て身代わりとしていなければならなかった。


 アルフレッドは、震える手を見つめながらしばらく考え、領主会行けるな、うん。なんて呟いた。


 既視感。

 顎に指をあてシャルロットは、こてんと首を傾げる。



「どうなさいますか。アルフレッド様。」

 アルフレッドの後ろからグリードが柔らかな声で問いかける。


 辺境領主会には、アルフレッドを騙したローイエ子爵家やスペルシア伯爵家の者も出席するだろう。

 両家は現在、貴族間で悪評がたっており、皆の前でレッチフィルド家に許しを乞うたり、直接接触してくる可能性は高い。


 先日、騎士達が休憩中に何気なく、貧困でローイエ領地の領民が逃げ出していると世間話をしていた。


 突然お兄様の呼吸が荒く苦しくなり、その日の剣技の授業は終了となった。


 許す事はできない。

 シャルロットは膝に置いていた手の拳にギュッと力を入れた。 


「一度、着替えてみませんか。

 お兄様は私のパジャマしか着た事がないでしょ。

 お母様とブルイは、このままお待ちになっていらして。

 さぁ、お部屋に行きましょう。」


 お兄様の手を軽く引き、グリードとメイテアと引き連れ執務室を出た。


 数刻が経っただろうか。

 執務室のドアがカチリと開いた。

 

「これは、また。」

 資料を纏めていたお母様の手が止まり小さな呟きが漏れた。


 完全に衣装を入れ替えたアルフレッドとシャルロットが執務室へ入ってきた。


 アルフレッドの姿をしたシャルロットは、ぺこりと一礼しスタスタとソファへ座った。


 一方シャルロットの姿をしたアルフレッドは、動きがぎこちない。


 スカート部分がいつもの自分の身幅とは違うらしく、部屋入り口に飾ってある品を引っ掛けたり倒したりしながら部屋の中央スペースに進んできた。

 

 男性と女性では立ち方や振舞い挨拶の仕方も随分と異なる。

 グリードとメイテアと私は、お兄様がシャルロットとして見えるよう立ち姿や姿勢、歩き方、挨拶などを修正していく。

 前にも同じような事をアルフレッド版でやったので、スムーズに事が進む。


 お兄様は普段の声よりも少しだけ高めに、ほんの少し早めに話した。

 シャルロットの声に酷似していた。


 運動神経の良いお兄様は体幹もしっかりしており、すぐにカテーシーもピタッと美しくきまる。

 素晴らしいが、なんか悔しい。


 普段から所作が丁寧なので、指先までの動き一つ一つが優雅にみえる。


 これはアカン。メイテアがうるうるしながら、お兄様を見つめている。

 こちらをチラチラ見て比較しなくてよろしい。

 まぁ、私も見惚れてしまっているのだけれども。


「お母様、いかがでしょう。」


 ひと段落ついたところで、まるで何かの作品かのように、お兄様と私は姿勢を正し起立する。


「二人共に見間違えてしまうわね。でも比べてしまっているからかしら。

 なんというか、少しだけ違和感があるのだけれど…何かしら。」


 お母様は、顔の前に手を翳しアルフレッドとシャルロットを一人一人見ながら見比べている。


 しばらく無言の時間が流れた。

 

「首元でしょうか。」


 珍しくブルイが確信がないようにぽつりと言った。


 姿鏡の前にお兄様と並んで立ってみる。

 確かに。お兄様の首の方がしっかりしている。

 首周りも見比べると雰囲気が違うような気がする。


 首元を隠すデザインのドレスもあるが、この国では大人向けであり成人女性しか着ているのを見たことがない。

 子供向けに作る事もできなくはないが、悪目立ちしそうだ。

 

「ふわっとしたシフォンのリボンを首に巻くのはいかがでしょう。」

 メルヘンモードに入ったメイテアが鼻息荒く提案してきた。


「かわいいかも!」


 私の一言で、お兄様はうるっと涙目になってしまった。

 デリカシーなくて、すみません。これは却下。


 リボンは無理か。なんかないだろうか。

 

「あっ。編紐ならば首筋が隠れるかも。

 少し待っていてください。」


 私は自室に戻り編紐を何本か持ってくる。


 喉元が隠れるくらいの幅の編み込み紐は、複雑な模様が施されており、所々に宝石やチェーンなども施され格好良く素敵だ。

 因みに、この編み込み紐は自作なので自画自賛である。


 お兄様にそっと差し出すと、しばらく見た後、こくんと頷いた。

 

 グリードが受け取り、お兄様に装着する。

 

 黒いレース編みに組み込まれた宝石がキラキラと輝き首筋を美しく覆った。

 纏う濃紺のドレスに良く映えた。


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