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VIOLETlazward 〜辺境伯令嬢シャルロットの奮闘記〜  作者: 和霞


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1-17.裏切り

 辺境で戦っている者達を思えば、このような考えは最低だと分かっている。

 それでも。

 感情に委ね、この場からきれいに消えられたらばいいのに。


 1年半前、私、アルフレッド•レッチフィルは、父である辺境伯より領地を任された。

 その時10歳。年齢は関係ないが。

 父は、国防衛のため戦地へと赴く。   

 泣き言なんていっていい状況ではない。


 兼ねてより父に教わり執務の手伝いをしており、任されていた仕事もいくつかあった。


 領地を守るという責任重大な話ではあったが、それなりに留守を預かる事ができると思っていた。


 しかし、すぐにその思い上がりを叩きのめされた。


 仕事や判断をくだすべき事項の量も責任も甚大で、どんなに頑張っても父のように捌いたり円滑にできなかった。


 日々の執務は、待ってはくれない。

 毎日、執務机に積み上げられる業務。

 目の前に溜まっていく決裁を待つ書類。


 辺境の地ならではの、領民の生死をを分けるような判断も、日々舞い降りてくる。


 そして、誰かが傷ついた報告を受ける度に、間に合わなかったことを知る度に、心がすり減っていった。  


 補佐する辺境伯夫人の母も、執事のブルイも、文官達もみんな、頑張っているのに、何故。


 確かに情勢事態悪いが、それだけなのか。

 

 見かねた先の辺境伯であるお祖父様達が辺境領へいらしてくれ、滞っていた事項を処理し、なんとか正常化した。


 しかし、1年経たない内に王都へ呼び寄せられ帰ってしまわれたのだった。

 領地の者達の落胆振りが、手に取るようにわかった。


 不甲斐ない領主代理で皆すまない。


 お祖父様や文官達、みんなが尽力し浮上させてくれた運営を停滞させないよう手を停めなかった。

 お祖父様が王都に帰国されてかからは、より一層いつ何時も考え続けた。


 グリードや周りの者達からも、休むようにと言われたが、できるわけがないだろう。


 屋敷で働く者の家族も国境前線で戦ってくれているんだ。

 みんなが見ている。休みたいなんて言えない。


 私の判断を待つ領民や、戦ってくれている者達がいると思うと、自分を休ませては決してならない。


 尚且つ、規則正しい生活もしなければ屋敷で働くものにも示しがつかない。


 たとえ就寝がどんなに遅くても、決めた時間に起床すると決めた。


 ほら。だんだんと睡眠なんて取らなくてもなんとかなってきた。


 そのような中、懇意にしている友が突然訪問してきた。


 その友人は幼馴染であり隣接地であるローイエ子爵領の次期領主ケルストである。

 次期領主として昔から互いの相談し合い弱みを見せられる唯一の存在だった。


 長年の付き合いの中で、先触れの無い訪問は初めてだった。

 不審に思うが、それだけ緊急なのであろう。


 快く応接間に招いたが、ケルストは一人ではなく、領地の商会主を連れてきていた。


 珍しい事に、グリードまでも含めた人払いを頼まれた。

 訝しむグリードをドアの外に立たせケルストの極秘事項だという話に耳を傾ける。


 ケルストも、かなりの苦労人である。


 ケルストの祖父は、ケルストを次期領主にと指名する直前に、事故で突如亡くなってしまった。


 領地や経営の勉強など全くしていなかった強欲な父が、亡くなった祖父の息子というだけで領主に就任した。


 国王が父を後押ししたのも大きい。

 何を隠そう二人は学友であり、忖度しまくりの決定であった。


 ケルストの父は堂々と領主を引き継ぎ、今までの蓄えを散財した。

 領地はもとより清貧であったがより貧乏になった。

 しかも、実務ができない父の代わりに陰で仕事をしているのは、ケルストであった。

 彼の労苦は計り知れなかった。


 もう使える資金が底をつき、領民の不満が限界にきた数日前に、父からようやく次期当主に指名宣言してもらったとケルストは言った。


 それを一番に知らせたく急ぎ来訪してくれたそうだ。


 私に一番。それならば先触れがなくてもしかたない。


 だが今、ローイエ領地で問題が起き資金が必要になってしまったそうだ。

 ただでさえ資金がないのに、このままだと家が無くなる事態だと涙ながらにケルストは訴えた。

 私にしか話せないし、私にしか頼めない。何度も伝えられた。


 かなり思案したが、最終的に一ヶ月後に返済するとの条件の元、ケルストからの借用書に基づき支援する事としたのだった。


 借用書全文を読み確認する。

 ところどころに行間があり、インク染みがあったりと読みにくい文書だが、指摘すると業者の者が次々の書類を出し説明していき、急ぎ作った書類なので読みにくくて申し訳ないと頭を下げられてしまったらば、仕方ないと納得するしかないだろう。


 それよりも何よりもケルストが私との約束を違えるはずもない。

 至急、領地へ戻り対策が必要だということで急かされる。

 

 この金額であれば、個人資産の範囲内で貸し出せると算段し署名した。

 そして、この場で渡せる限りの金貨を金庫から出し渡す。


 指名宣言が王に許可されるまでは撤回される可能性もあるため、誰にも言わないで欲しいとケルストから願われた。


 領地建て直しの人手を貸すとも伝えたが、それはやんわりと断られた。

 


 ケルストが帰宅後、シラをつきとおしたが何度も話の内容をグリードに尋ねられた。

 顔を覗きこみ説得され、最終的には泣き落としにかかってきた。

 

 私はしぶしぶとグリードに内容を告げると、私の許可も得ずにグリードはブルイを呼びに走った。


 私は観念して借用書を出し、ブルイとグリードに事情を話す。


 それからのブルイの動きは速かった。


 借用書の照合を取った。

 それは巧妙に手を加えられ、透かし文字騙し文字を加えると借用書としては成り立たない、無価値な証文だという事が判明した。

 

 私は、すぐにケルストと商会に手紙を書き使者に持たせ連絡取ったが、そのような融資は受けていないとの回答書が届く。


 私の個人資産内であり、辺境伯領地の支出ではない。


 しかし、そのような話ではない。

 辺境伯家の次期当主が騙され、それを見抜けずに詐欺にあったのだ。


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