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VIOLETlazward 〜辺境伯令嬢シャルロットの奮闘記〜  作者: 和霞


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16/22

1-16.目処

 辺境伯の屋敷前に、ゆっくりと馬車が停まった。


「アルフレッド、グリード。1時間後に私の執務室へ」

 短くフランシカが告げた。


「はい。」

 シャルロットは低めの声で、ゆっくりと応える。


 カチッと外側から馬車のノブが下がった。


 執事のブルイが馬車の扉を開けた。


「おかえりなさいませ。奥様、アルフレッド様。」


 銀色の髪をすっきりと後ろに束ね銀縁の眼鏡をかけた執事のブルイが、軽く腰を曲げ出迎える。

 

 ブルイの後ろには、母のお付きのメイド達がならんでいた。


 馬車からフランシカが先に降りようとした為、ブルイが手を差し伸べ降車を補助した。


 続いてアルフレッドにも手を差し伸べ、ゆっくりと馬車から降ろす。


 グリードは膝をカクカクさせながらも一人で慎重に降りた。


「奥様、ご報告させていただきたい事がございます。」


 ブルイはフランシカを追いかけ、低めだが聞き取りやすい声で、半歩後ろから話しかけた。

 

「急ぎであれば今すぐに対応しますが、15分後に私の執務室でも問題はないかしら?」


「承知いたしました。15分後に参ります。」


 フランシカは階段下でブルイやメイド達に指示を出し、一人で階段を上がって行った。



 シャルロットは、お母様が階段を上がっていくのを見送り、ホールまで戻ってきたブルイにマントを手渡した。

 その間に、いくつかの質問を受け答える。


 その様子を未だ青白い顔色のまま見つめるグリード。


 馬車から降車する時、ブルイからの絶対零度の視線を浴び尋常じゃない心音が耳に響いていた。


 辞めさせられるかもな、と目に熱が集まる。

 

「お待たせ。」


 シャルロットはグリードの肩をポンポンッと叩き、共に自室へと向かう。


 自室前ではメイテアが真っ青な顔をして立っていた。


「メイテア、ただいま。顔色悪いけれど、大丈夫?」


「大丈夫でございまするぅ」


 メイテアはカクカクしながらドアを開けた。ちょっと言葉も態度も変だが大丈夫か。


「お茶会ね。最終的にちょっと失敗しちゃったの。

 でもね。お兄様を行かせなくて良かったなって思うんだ。

 お母様に呼ばれてて、急がないといけないから報告はあとでね。」


 シャルロットは話しながら部屋に入り、ベッドの中のお兄様を覗いた。


 グリードとメイテアは、お互いに目を合わせ覚悟する。


 グリードもアルフレッドがスヤスヤと眠れている様子にホッとした。


「アルフレッド様は、ずっと穏やかに眠られていました。睡眠がこのところ取れなかったのでしょう。

 一度起きられ、食事をできる限り頑張って召し上がっておられました。

 お肉も召し上がり、口が疲れるなとおっしゃておられました。」

 メイテアは噛み締めるように伝えた。


「ご飯も召し上がって、良く眠れているのね。よかったよ。」 

 シャルロットは、ンッと口を横に結んだ。


 グリードは一度自室に戻るとの事なので、後ほどと声をかける。


 シャルロットは手洗いうがいなどし、サクサクと上着を脱ぎ軽装になる。


 お母様はアルフレッドと、敢えて声をかけてきた。

 アルフレッドとして赴かないといけないよね。

 

 勝手な事してって叱られちゃうんだろうなぁ。そうだとしても。


 

 約束の時間の5分前にお母様の執務室前に行くと、グリードが身支度をきちんと整えて待っていた。


 振り向くとメイテアも、しっかりとした足取りでついてきている。

 

 時間ぴったりにノックすると中からブルイがドアを開けてくれた。


 緊張しながら入室する。

 

「3人共、お掛けなさい。」


 お母様の平坦な声が聞こえた。

 

 グリードとメイテアは立ったままで良いと申し入れたが、そうゆうやり取りは時間の無駄だと言われた。


 2人はお母様の右隣に配置する3人掛けソファーに身を寄せて座った。

 シャルロットは対面となる1人掛けの椅子へと掛ける。


 ブルイは皆の前に紅茶を用意した後、執務室入口に控えた。


 シャルロットは正面からのお母様の視線に身を固くする。


「では、経緯を話してくれるかしら。」


 ブルイも居るが、お母様が許しているという事は、そうゆう事だろう。

 三人はお母様に代わる代わるに、それぞれの行動を説明した。

 

「三人共、お疲れ様。

事情は、よく分かったわ。

 疲れているところに、ごめんなさいね。

 シャルロット、メイテア、グリード。

 アルフレッドを守ってくれて、ありがとう。」


 お母様が深々と頭をさげた。

 叱られると思っていたのに労われ目を瞬かせる。


 ブルイが気づいていた事を知り、ビックリしてしまった。

 

 私達が出てからすぐに、私の部屋にブルイが突入してきて、メイテアは心臓が止まりそうだったらしい。


 しかしブルイが協力してくれたお陰で、お兄様が心地良く過ごせたそうなので結果良かった。

 

 チラリと横を見ると、メイテアとグイードは明らかに体から力が抜け目尻に膜が張っている。


 辞めさせられる覚悟をして、この部屋に入ったと語っていた。


 私達3人がそれぞれに放心している間に、ブルイがボリュームのあるサンドイッチやサラダをならべてくれた。

 そして冷めた紅茶を入れ替える。


「ここからは食事をとりながら話しましょう。」

 

 お母様から声がかかると、メイテアとグリードは奥様と同じテーブルで食事を取るなんてと恐縮したが一蹴された。


 サンドイッチを頬張っていると、お母様は私をじっと見ながらおっしゃった。


「アルフレッドとシャルロットが、ここまで似ているなんてね。

 ナイトキャップを付けたアルフレッドの姿はシャルロットにしか見えなかったわ。」


 少し笑みを含んだ声だった。


 帰宅した直後、お母様はシャルロットの部屋を訪ねたらしい。

 メイテアは本日二回目の心臓停止を味わったようだ。


「アルフレッドは、きっと今日、久しぶりにゆっくりと眠れたのね。

 穏やかな顔をして熟睡していたわ。

ここまで追い詰めてしまっていたのらば、辺境伯代理として外交するのは、しばらく休息すべきでしょうね。」


「お母様、お兄様のあの目は、限界を迎えた人の目のようだったの。

 人は休まないといけない時があると思う。」


「そうね。シャルロット。

 最後のSOSを受け止めれる立場として、異変に気づいた今すぐに心を守らないといけないわ。」


 時期を見誤ると取り返しがつかない事になるかもしれないと、フランシカは呟いた。


「お母様、私もお仕事を手伝いたいの。」

 

「シャルロット、申し出てくれてありがとう。

 貴方はアルフレッドと一緒に、実践的な授業も受けていたから、すぐにできる事も多くあると思うの。

 もちろん私やブルイがついて教えるので力を貸してくれると助かるわ。」


 アルフレッドを守る目処が付き皆が安堵した。

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