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VIOLETlazward 〜辺境伯令嬢シャルロットの奮闘記〜  作者: 和霞


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11/21

1-11.散会

 スペルシア家が立ち去る姿を皆がただ見ていた。

 刹那の静寂の後、そこらかしこで想像力豊かな話が弾んでいた。


 イリアスと一緒にいた領主達は、この場を去るタイミングがなく一塊になって小さくなっている。

 輪の一層遠くに同行して来た家族達が気まずげに集まり、主人へと鋭い視線を送っていた。


 その様は他人事として噂をしている者達には興味深く映っていた。

 さぁ。どちらへ転ぶか。


 この出来事は面白おかしく、不名誉な話として、このままであれば、あっという間に全土に広まる事だろう。


 そのような中、囲んでいた輪からシャルロットに近寄る者達がいた。


 自領だけでは解決できない問題を抱えている領主達であった。

 国に申し出ても長い間回答がなく、とは言え小さな領地であるため自力では解決できず、どんどんと事態は逼迫していた。


 通常であれば隔年開催されていた辺境の領主会議で問題提起できたが、戦乱の影響でここしばらく開催されていなかった。

 相談できるタイミングは今しかないと、失礼を承知で話を聞いて欲しいとの懇願であった。


 シャルロットは誠実に齟齬がないように聞きながら、今までの知識を騒動員しながら、メモを取り考え続けた。


 現状や詳細が分からない事もあったが、正直に質問して教えを乞うた。


 一件毎に時間もそれなりにかかっていた。

 だが、それだけ真剣に聞いてくれているのだと領主達や連れの者そして同伴していた子供達も、その場を動く事なく皆が耳を傾け考えていた。


「あの、よろしいでしょうか。

 そちらの要件であるならば、我が領地から技術者を派遣し、解決する事が可能かと思います。」

 イリアスと一緒にいた一人の領主が名乗りを挙げ、提案と共に支援できると申し出た。


「うわぁぁ…」


 目の前で初めて契約が結ばれた事に、思わずシャルロットは目をきらきらさせ満面の笑みで拍手をした。

 そして領主を家名を正確に呼び、名乗りを挙げてくれた事に御礼を伝える。

 

 周りで聞いていた貴族達も、最初はパラパラとシャルロットにつられての拍手をしたが、具体的な提案と内容に領主を褒め称えた。


 いつの間にか、そそと、その家族が領主の元へと集まり、少しだけ誇らしげな顔をしている。


 貴族達の噂話しは目まぐるしく都合よく更新される。


 それを見ていた者達はメモを見せてくれといい、援助できる事を次々と宣言していく。

 その度に拍手が上がりシャルロットが喜び、ついには握手を求めに近寄る。


 可愛いではないか。他領の為に心を砕き解決への道筋に喜んでいる様が皆に伝わっていた。


 そのような懸命な姿に、全部でなくとも少しだとしても力を貸そうという輪ができ、協力体制があちこちで出来上がっていた。


 伯爵夫人のフランシカは、いつの間にか辺境地の夫人達をまとめ上げ婦人会を立ち上げ結束していた。

 当然の如く副会長はゲラン伯爵夫人が名乗りを挙げフランシカの隣に位置している。

 

 王都で文官長をしているゲラン伯爵は、屋敷から文官を数名呼び、筆記具も持ってこさせた。

 手を貸す領地もボランティアではなく、相互利益を確保する契約として対価も条件付け書類を整えていった。


 皆が最初に書いてもらったメモ用紙もつけておいて欲しいと要望していたのには、ゲラン伯爵も笑ってしまった。

 

 グリードはひたすらに、シャルロットの背後で目を光らせ続けた。


 だが、先程のような裏切りもなく、きちんとした話し合いの場が自然と整っていた。


 リュシオールはアルフレッドの対応を近くで聞き続けた。

 そして自分の立場を再確認し、いろいろと足りない事を恥じた。

 ここにいる、貴族達の家名も分からぬ。

 先程、話しかけてきた者達の内容も耳に入っていなかった。

 自分は何故、今までそれで良かったのか。


 デルバールとユーリも自身の意識が変わった瞬間を感じた。


 リュシオールはアルフレッドを最後まで熱心に見守り続けた。


 勢いよくバンッバンと、アルフレッドが体の大きな者に背中を叩かれていた時には流石に一歩でかかった。

 しかしながらアルフレッドが親しげに笑っていたので留まることにした。

 


 だいぶ時間も経ち日も傾きはじめた。


 ゲラン伯爵家でのお茶会は、少しの熱気を残してお開きとなった。



 帰路の馬車の中、シャルロットは窓枠に肘をつき遠くをぼんやりとながめていた。


 お疲れ様、私。誰にもバレずに、よく頑張ったよね。

 誰も褒めてくれないので、おもいっきり自分を褒める。

 自己肯定、大事だわ。


 緩やかな時間が流れ少しまどろむ。


「シャルロット」


「はい、おかぁ…」


 はいぃぃぃ。顔がひきつる。


 応える声はどんどんと小さなり、目はどんどんと見開かれいく。


 不意に耳に落ちてきた小さく囁くような言葉に、否応なく反応してしまった。


 バッとお母様の顔を見ると、シッと魅惑的に仕草で唇に人差し指を当てていた。

 イケメンスマイルに思わずヘロッとなる。


 危ない。驚きのあまり素の声を出してしまうところだった。

 我が家の使用人とはいえ、御者に私だとバレてしまってはいけない。


 ぐっと言葉を飲み込みシャルロットは俯いた。

 

 そのまま、ゆっくりと横に視線を送るとグイードが真っ青な顔でカクカク震えていた。


 ばれちゃったか。シャルロットは足元に視線を移し頑張ったのになぁと残念に思う。


 でも、私とお兄様が見分けられなかったら、お母様じゃないよねとも思う。

 不思議と少しだけ嬉しく感じている自分がいた。

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