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日が暮れる前、閉門ぎりぎりに、私達はミロンドの街に入ることができた。
領主家の馬車とあって、審査もあってないようなものだ。私について特に確認されることもなかった。これから向かう領主館にも連絡を入れてくれるようだ。
日暮れのミロンドの大通りを馬車が進む。街並みが見たくて御者台に移ったのだが、見える風景はなかなか新鮮なものだった。それに幸い糞尿臭くもない。
まず目につくのはなんと言っても人、人、人。さすがに東京や大阪といった前世の大都市ほどではないが、それでも馬車はゆっくりと進めざるを得なかった。馬車と通行人で道が別れたりはしていないようだ。
たしかにこれなら門から伝令が走るほうが早く館につくだろう。
種族も様々だ。人間、ドワーフ、獣人、小人。それから、エルフや巨人も少ないながらいるようだ。
いかにも職人といった風なドワーフから、革鎧を身につけた人間の戦士、エルフの魔術師までいる。戦士や魔術師は、開拓者、ライトノベル風に言うなら冒険者のやからだ。この辺境で魔物どもを狩ったり、素材を採取したり、行商人の護衛をしたりすることを生業としている。
どうも仕事終わりの時間らしく、これから飲みにでも行くのだろう。それで飲み屋街と開拓者組合、職人街などを挟むこの大通りは人が多いというわけだ。
多少薄暗くなってきたが、建物からは明かりがもれはじめているし、大通りには街灯もあった。あれも魔道具の一種らしい。ベゾフラポスではああした街灯もすべて魔術だった。もちろん毎日かけ直していたわけではなくて、ちゃんと術式があるのだが、話を聞くにそのあたりの魔術の拡張技術はかなり失われているようだ。一部のエルフの大魔術師とか呼ばれているような存在は使えるようなのだが。
そうするうちに、壁をさらに二つ抜けてついたのが、このお屋敷である。
貴族の屋敷と聞いて想像するような噴水付きの広い庭などなく、門をくぐるとすぐ屋敷についた。
馬車から降りると、メイドさんや従者も集まって道を作るように頭を下げていた。
お出迎えである。こうしてみるとやっぱりシャンレイは大貴族の娘なのだ。
だが注目すべきは、その道の先である。扉の前に二人の男性が立っていた。
一人は、三十代半ばか四十になるかならないかくらいであろうか。服の上からでもガッシリとした体格がわかる、筋肉だるまの大男である。身長は二メートル以上あるんじゃないだろうか。
もう一人は、対照的に体は細めでしかし、スラッとはしていても痩せ過ぎと言うほどではない。年齢の方も、少し若いだろうか。身長は隣の大男ほどではないが高い方だし、細マッチョというやつだ。
二人ともお顔の方は結構な男前なのであるが、シャンレイと同じ、薄茶色の髪に緑の瞳だ。それに使用人にこうして傅かれるような立場なのである。
おそらくどちらかがこの街を任されているというシャンレイの叔父で、もう一人は、父親、だろうか?
しかし、父親はこの街のさらに先、領都にいたのでは?
まあ、私にとっては手間が省けることか。
シャンレイとの別れも近いかもしれない。身の振り方を考えなければならないな。




