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あれから何日か野宿して何度か領境の関所を超えた。途中で何度か刺客や野盗の襲撃があったが、それらは全てぶっ潰された。
私は彼らを相手に魔術の練習をした。この体の持ち主の経験もあったし、知識もあったから普通に使えるようだ。それで一応、対外的には魔術師を名乗ることになった。魔術の知識も随分と失われているようで、随分と効率の悪い術式しか残っていないらしく、私が使った魔術にはかなり驚かれた。
それと、アイテムボックスの中の肉体を選び直せば、傷と同じように魔力も回復することがわかった。実質魔術使い放題である。
そのように賊には実験に付き合ってもらっていたのだが、今日はついに街に泊まるらしい。
なんでもここからは、領主の派閥が辺境公閥なので、クソ王子も刺客を送り込めないそうだ。
今までは下手に街の宿に泊まると、宿を巻き込む可能性があったからね。
「見えてきましたわね。あれが古都ミロンド。私の叔父が治めてる街です」
「へぇ、古都。なかなか歴史ある街なのね」
「ええ。開拓当時はあの街が領都でしたから」
丘の上を行く馬車から見えるミロンドはなかなかの威容をほこっていた。おそらく魔獣への備えだったのだろう高い城壁は、拡張を重ねたのか三重にも及び、最外郭の城壁の外だけでなく内にも小麦畑があるのも見える。城壁の内側でなければ農業ができなかったのだろう。
今では辺境と王国中央部を結ぶ重要な流通拠点となっており、商業都市として国内でも有数の規模だそうだ。
「少し急げば日暮れまでには入れそうですね」
「じゃあ、今日はやっと街に泊まれるのね」
今まで街には寄らなかったから、この時代の街を見るのは初めてだ。遠くから見る限りは石造りの建物が多いように見えた。
いわゆる中世ヨーロッパ風、なのだろうか? いくら中世ヨーロッパはファンタジーの定番だからといって、糞尿が道に撒かれているようでは困るけれど。
ベゾフラポスはその点、上下水道や条水槽といった衛生関係のインフラが整っていたし、そもそも自動車らしきものが走って高層建築が並ぶような、ほとんど私がいた日本と変わらない文明の発展具合だった。
だから、このミロンドは、私が入る初めてのファンタジーな街ということになる。前世ではヨーロッパ旅行とかにもついぞ行くことがなかったわけだし。
私はいよいよ入るミロンドの街が、楽しみになってきた。ちょっとした海外旅行気分だ。
けど、どうか、糞尿まみれではありませんように。




