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わがまま王女の迷宮譚  作者: marvin
迷宮探検
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訪問者

 つるりとした窓のない部屋には、脚の低い寝具がひとつ、机と椅子がひとつずつある。衝立の向こうには、洗面と手洗いもあった。壁の一面が格子である他は、居心地はそう悪くない。

 外からの施術は可能だが、牢の内側では術式を構築できない。そんな、魔術師以外はどうでもいい仕組みを凝らしている他は、機能も揃った清潔な独房だった。何せ、あのカーディフも入った魔術師専用。待遇としては破格といえる。

 クランがここに投獄されたのは、ありもしない魔術汚染を危惧したからだ。そんな牢屋に隔離するほど、古魔術への畏怖は根が深い。

 とはいえ、肝心の処遇は棚上げされている。国王の不在で審判が得られないせいだ。数度は尋問もあったが、埒もないパルディオの調書だけだった。

 正式な担い手がいないのだろう。パルディオはモルダスの代行だが、魔術師界隈には距離がある。逆に、その辺りが派閥協定的に都合がよかったに違いない。宮廷の主だった者たちは、王位継承の勢力再編に忙しい。

 だが、相手がパルディオだけでは飽きが来る。クランの小粋な冗談も、場を和ませるにも程遠く、パルディオを怒らせてばかりだった。とはいえ、陛下の帰還までは釈放される見込みもない。

 白い天井をぼんやりと見上げて、クランは生欠伸を洩らした。格子の向こう、真っ直ぐ突き抜けた廊下には、深い暗闇が満ちている。辺りには人の気配がない。看守さえ遠い扉の向こう側、この独房は隔離所だ。

 ラルクの差し入れで伝えられたところ、あれからキャスロードは部屋に籠っているらしい。拗ねてクランを罵りながら、仮病を盾に公務を放り出しているようだ。従騎士二人も落ち込んでいるという。

 まあ、理不尽を知るのも勉強だ。

 ふと、我に返っていたたまれず、クランは思わず寝返りを打った。いつも面倒ごとは自業自得だ。関わりすぎて失敗する。こんな様では、またあの縦孔に放り込まれる日が来るかも知れない。

 消えないはずの独房の灯が、光彩を変えて薄らいだ。否、霞んでいるのは我が目の方か。クランは手を燈に翳して確かめた。案の定、灯りは遮れなかった。いつの間にか、手が透けている。

 ふと、気配に気づいて、身体を起こした。暗い廊下を眺めると、澱んだ黒が揺れている。

「やっと来たのか、遅かったじゃないか」

 目を眇め、クランは小さく微笑んだ。

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