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第六話 秘密基地

第六話 秘密基地


和菓子トリオが逃げ帰ったちょうどその頃、鷹丸は付き人に護衛されながら、どこか落ち着かない様子で境内をうろついていた。


(おらんのお……)


コツン――


足元にどんぐりが転がった。


『おぉ、そこにおったか』


鷹丸の視線の先。

植え込みの下から顔を出した和菓子トリオが手招きをする。


「あ!あれはなんじゃ?」


鷹丸は、三人のもとへ滑り込んだ。


『よし、モナカ、蜜。秘密基地に行こうぜ』


楼門(ろうもん)上の小部屋――


「鷹丸、そっち持って」

モナカがちゃぶ台を引っ張り出して中央に置く。


「あの後、俺たち狐白さんにぶっ飛ばされて、一晩中庭の桃の木に吊るされたんだぞ」

羹太郎は笑いながら座布団を並べた。


「狐白とはそなたらの世話人であろう……吊るして罰するとは恐ろしい者だな」

鷹丸は三人の手際に圧倒され、部屋の隅に立ち尽くした。


「世話人じゃなくて、教育担当な。つか、いつの間に逃げたんだよ」

羹太郎がちゃぶ台を拭きながら言う。


「フフン、鳥は気配を消すのが得意でな」

「鷹一族って、やってること忍び集団だよねぇ」

みたらしはそう言うと漆塗(うるしぬ)りの道具箱に隠しておいたお茶セットを取り出し、

狐火で湯を沸かした。


「……お主ら、いつもこんなことをしとるのか?」

「まぁな。ほら、座れよ」

「う、うむ……」

鷹丸は、羹太郎に促され座布団に座った。


四人はお茶をすすり、ほーぅっと一息。


「で、何しに来たんだよ?」

羹太郎が切り出した。


「父と稲成宮司殿との会議じゃ。人間界が騒がしいんじゃといっておった」


「騒がしいって?」

モナカが煎餅に手を伸ばす。


「うむ。あれは――眠りこけてしまった私を、司が抱き上げたときであった」


(あー、寝かしつけられてるときに狸寝入りで聞き耳立ててた感じね)


湯気の向こうで、和菓子トリオのジト目が鷹丸に集まる。


「司と父上の話によれば、()()()()とかいうものが人の里に出ておるらしくてな。

……多くの人間が命を落としておるらしい」


「――流行病ってこと?」

モナカが続ける。


「よく分からんが、御咳社(おせきしゃ)の封印がどうとか……言っておったな」


「御咳社?!」

モナカが尾を強張らせる。


「大変なことなのか?」

鷹丸が羹太郎を見上げる。


「俺も、御修所(ごしゅうじょ)で習った程度だけど、三百年くらい前に肺の病を撒き散らして大暴れしていた堕神だしんがいたんだよ。それを封印した場所が御咳社だ」


「咳と高熱で、村が一晩で消える程の感染力だったらしい。相当な数の人間が亡くなったって、天界の書庫で読んだ」

モナカが息をのむ。


「時代的にヨモギ部長さんが若い時じゃないかなぁ?」


「人間ってほんと意味わかんないことするよな」

羹太郎は煎餅をかじりながら肘をつく。


「整理すると、鷹丸のお父上さんがきた目的は()()()協力だね。

鷹は情報収集や、潜入には()けているが、前線での祓いは得意じゃない。

多分、僕が天界の書庫(しょこ)で読んだ記録は「鷹」が制作したものだと思う。

多くの人間が命を落としているということは、少なからずこちら側にも被害はあったはずだからね」


「情報収集と祓いに分かれて、被害を最小限に食い止めたいってことだよねぇ?」

「だな。こういうの業務……」

「ぼく分かるよぉ、業務……協力!」

「業務協定ね」

羹太郎と蜜の尾が床に垂れた。


「俺も早く前線に出たいなー」

羹太郎はその場に寝転んだ。


「……堕神って、どんな顔してるんだろうね」

モナカが湯呑みの中に映る自分を見ながら、小さくつぶやいた。


「なぁ、御咳社。ちょっと見に行きたくね?」

途端に、羹太郎の興味センサーが作動する。


「ダメぇーーー!」

蜜が立ち上がる。


「団子屋にこっそり抜け出すのとは訳が違うんだからぁ!」

「ちょっとだよ!パッと見てサッと帰る。な?」

「いやだよ。ぼく絶対行かない。今度こそ狐白さんにトドメまで刺されるから!!」

「モナカはどうだ?」

羹太郎がモナカの方を向き直す。


「僕は……まぁ、ちょっとなら」

「そうだろう?!見聞を広げるってことじゃんな。よし、鷹丸。小狐丸も呼べよ。みんなで()()だー!!」

蜜の嘆き完全無視で、お忍び遠|征が決定した。


「あ、あぁ。分かった。小狐丸にも言っておく……」

(こやつら、だから吊るされるのじゃ)


鷹丸は幼いながらに、狐白の心労を察した。


(第六話・幕)



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