対ヤバい奴ら編⑪『悪魔の隠れ家にて』
黒幕の正体と、その対処法。
自身との勝負に勝った連夜達に、李緒は全てを語るのだった。
対ヤバい奴ら編⑪『悪魔の隠れ家にて』
高下……李緒さんに連れられて俺達がたどり着いたのは、岡宮にあるこじんまりとしたスナックだった。
スナックは2階建ての建物の1階に入口があり、木製の看板には毛筆めいたタッチで「千景」とばかでかく書かれている。
白い吹き付け塗装の外壁には蔦が絡まり、ところどころ黒く汚れている。
場所は新幹線の高架のすぐそばで、傍にある太い道に沿って高架を南に抜ければ国道1号線を挟んで学園通りに繋がっている。
学園通りを南下すると国道414号線と合流し、沼津駅や沼津港、沼津市役所にアクセス可能だ。
一方で太い道を北に進むと途中で右折し、沼津ぐるめ街道を跨いだ後に国道246号線に合流、そのまま進めば長泉町や裾野市へ北上していく。
北に進めば国道246号線、南に進めば国道1号線や414号線に抜けられる立地そのものは、決して悪くないと思う。
だが沼津の繁華街から大分離れた位置にあり、加えておそらく20〜30年以上前に建てられたであろう外観も相まって何というか……流行ってなさそうだと思った。
李緒さんは入口である引き戸を慣れた手つきで開けると、そのまま中に入っていく。
俺達5人も、後に続いて入る。
「いらっしゃ、あらあんたか……。何?」
「邪魔するわよ」
中に入ると、右手のカウンターに立っている妙齢の女性が、李緒さんにぶっきらぼうに話しかける。
店の中を見ると、やはりというか案の定、客は居なかった。
「というか、その子達は?」
「例の子達。話は通してあるはずよ。……奥に案内してよいかしら?」
「……確かに、聞いてる。どうぞ、こっちに……」
女性……スナックのママと思われる人物に案内され、俺達はカウンターの奥へと進んだ。
カウンターの奥には、長い螺旋階段があった。
李緒さんと共にスルスルと降りていくと、地下には白い床と壁に覆われた長い廊下が続いている。
廊下は白い照明で照らされ、上のスナックからはまるで想像ができない無機質さがある。
フィクションに出てくる秘密組織のアジトのような白い廊下を進んでいくと、突き当たりに大きな両開きの扉があり、俺達はその中に入った。
「これは……!」
扉の先には馬鹿でかい空間があった。
床の広さはざっと20メートル四方くらいで、天井までは6メートルほど。
床と壁は灰色のコンクリートとねずみ色の鉄板で構成され、天井には鉄骨が格子状に組まれ、配線や作業用とおぼしき足場、照明が配置されている。
そして、正面奥の壁には無数の大きなモニターが壁一面に存在し、そこには色んな場所を映したであろう監視カメラの映像が映し出されていた。
モニターの手前にはPCが載った机や長机が規則的に配置され、そこだけ切り取ってみると会議室やオフィスのようだった。
「さて、ここなら誰にも傍受される心配は無いわ。こちらに座って」
イベント会場や物流倉庫のような部屋の一角に存在する長机に備え付けられていたパイプ椅子に、俺達は並んで座った。
「ここは一体?」
「そうね……上のスナックは表向きで、実態はクライアントの拠点、とだけ言っておくわ」
よーちゃんの質問に答える李緒さん。
「なるほどな……」
「さしずめここは秘密基地ってワケね」
納得する将軍とキララさん。
「さて。高下、李緒さん。説明していただきたい。連夜やわたし達を襲った黒幕や、その対処法について」
早速、陽さんが切り出す。
「そうね……単刀直入に言うと、貴方達を襲っている黒幕は九十九……沼津の市長なんだけれど、それはもうとっくに気付いているわよね?」
李緒さんの口から出てきた黒幕の名前は、俺達が推測した通りだった。
「はい」
「その上で、貴方達がどこまで知っているか、各々の情報をここで一旦共有して頂戴。多分それぞれ話したいこともあるでしょうし、そうした上で私の話を聞いた方が飲み込みやすいだろうから」
「分かりました。皆が昨日たどり着いた話については、ヨウから一通り聞かされて把握済みだから、わたしが調べたことを皆に話す」
「分かりました。陽さん、お願いします」
陽さんは俺達に、自分が調べて気付いたことや仮説を説明した。
「まさか真白先輩が、九十九の……」
「市議の事故も、黒仮面が絡んでやがったのか! じゃあやっぱり……」
「それはまだ確定じゃないよ、晴斗。でもまあ確かに、陽ちゃんの話が事実なら、ミドリ君が狙われる理由はあるのか」
陽さんの話は、まぁもしかしたらそうなのかもと思っていた話ではあった。
だが実際に九十九の政敵の死因についての情報や、葵一家の事故に黒仮面が絡んでいそうという話を彼女の口から聞かされると、改めて衝撃が走る。
「九十九からしてみたら、連君は邪魔者って訳ですね」
「まぁでも、わざわざ狙う意味ある? って思うけどね」
キララさんは両肘を机につけた状態で両手を組むと、腕で作った台形の上底に顎を載せ、その格好のままよーちゃんの方を一瞥した。
「どういうことだ? キララ」
キララさんの言葉を訝しむ将軍。
「ミドリ君が昨日言ってた話に近いんだけど、ぶっちゃけミドリ君って九十九的には放置しても問題ない気がすんだよね」
「放置しても、問題ねえ?」
将軍の素朴な疑問にキララさんが答える。
「そ。変な奴らの襲撃やアタシ達のことが無かったら、ミドリ君って別に何もする必要なかったじゃん? むしろ放置せずにダル絡みした結果正体がバレて墓穴を掘ったように見えんだよね。だから陽ちゃん同様狙う旨味は無くて、むしろ今みたいに探られるリスクしか無かったんじゃないかって……」
キララさんの話は、確かにそうだと俺も聞いていて思った。
「碧の話に近いってそういうことか。じゃあ何で、わざわざおれ達に襲わせたり、陽さんを襲ったんだ?」
その上で、疑問は将軍のそれに戻る。
「そこまではアタシも分かんないよ。理屈で考えるなら2人を襲うメリットなんて無いから、衝動的にやったってことなんだろうけど……。うーん……」
キララさんは首を傾げる。
「理屈抜きでわたしや連夜を許せない何かがあるということか。……九十九本人に聞いてみないと分からなそうだな」
「そうですね……」
「ふむ……」
事件についての陰謀はともかく、俺や陽さんが襲われた理由については、まだ謎が残るといったところか。
「なるほど……一通り聞かせてもらったけど、この中で一番核心に近い情報を持ってるのは陽さんみたいね。ちゃんと調べられてて感心関心……」
話が一段落ついたタイミングで、それまで無言で聞いていた李緒さんが口を開いた。
「その口振り……まじで陽さんの考え通りで合ってるってことでいいのか? 先輩が市長の政敵を消してたとか、その『仕事』をしていた先輩を俺が倒したことが襲われる理由なんじゃないかってこととか」
「そうよ」
「まじかよ……」
「まぁ襲われた理由に関しては、キララさんの言う通り本人に聞いてみないとな部分もあるんだけど……ねぇ陽さん、九十九市長の事、他に独自に調べてたりしてなかった?」
「……本格的に九十九をあたったのは昨日ですが、それ以前も事件について、ちょくちょく調べたりはしてました」
「だと思った。今回襲われたのは、多分それが原因よ? もうちょっと私が早く気付ければよかったんだけれど……」
李緒さんは額に右手を当て、口元を歪めた。
「ごめんなさい。こればかりはクライアント……上の判断ミスね」
李緒さんは席を立つと、陽さんにすっと一礼した。
「……黒幕は分かりました。……あの目出し帽の連中は?」
李緒さんの謝罪を受けた陽さんは、何か思うところが有りげな……不本意そうな鼻息を漏らす。
そして少し間を空けた後、彼女は李緒さんに問いかけた。
「あれは白金組……端的に言えば、ヤクザよ」
「白金組?」
「そ、白金組。この街だと『白金不動産』って名前で通ってるみたいだから、名前は聞いたことあるかもね」
連中がヤクザということについては、雰囲気的に堅気じゃないと思っていたため驚きは無かった。
だが、初めて聞く組の名前だ。
「……裾野市民だからさっぱり分からねぇ。よーちゃんと陽さんは?」
「私も同じく。白金不動産、というのも初めて聞きますね」
「わたしもだ」
陽さんとよーちゃんは知らないらしい。
「俺も分からん。不動産屋なんて知らねぇよ」
「アタシもその辺は専門外だね。その不動産ってのはフロント企業?」
沼津に住んでいる2人も同様の反応だった。
「あいつらは、この沼津市を本拠地としてるの」
「……この街って、そんなのがいんのかよ」
ヤクザや暴力団の類というのは、個人的には東都や大坂、広嶋、福丘辺りが思い浮かぶ。
S県は中部の方だと、とてつもない昔に清水次郎長という侠客……ヤクザが居たって話は聞いたことがある。
だが少なくともS県東部……沼津の街にそんな奴らが居るなんてまるで想像もしていなかった。
「白金組……あ、ありましたよ連君。札幌を拠点としていた北海道最大のヤクザだったが、ソ連の北海道侵攻で壊滅したと書いてあります」
よーちゃんが端末で調べた内容を読み上げる。
「ソ連侵攻……。っていうか……ってことは、あいつらホッカドーのヤクザなのか!? なんでそんなのが沼津なんかに?」
その内容を聞いた俺は驚くとともに、この国……ヒノモト国の歴史をふと思い出した。
ちなみに俺はセンター試験を現代社会か政治・経済で受ける予定なので、ヒノモト史は勉強していない。
よーちゃんや陽さんも地理か現代社会を選ぶつもりらしく、彼女達も歴史系は対象外だ。
だがヒノモト史の教科書は持っているし、教科書を読むのは昔から好きだったため暇なときに読んでおり、そのため流れはある程度把握している。
1946年10月10日。太平洋戦争が終結し、大日本帝国は無条件降伏、ヒノモト国となった。
そしてその際ホッカドー……当時「北海道」と呼ばれていた島は南樺太や千島列島共々ソ連の侵攻を受け、全域が占領された。
旧帝国領だったそれらの地域はヒノモトに返還されること無く、ソ連の構成国の1つ「北日本ソビエト人民共和国」となった。
その後は1981年のソ連崩壊と、それに伴うロシアンマフィア達による実効支配。
17年前のマフィア達のお家騒動に伴う極東地域全体の混乱と、それに乗じたヒノモト国防軍による奪還作戦とその失敗。
そして、巨大隕石落下に伴う世界的大災害を契機に締結された、九恩院グループと国連を介した平和条約……。
最終的に旧北海道の内、渡島・檜山地方がヒノモト領(ヒノモト領A県)に、残りが新たに成立した北方連邦領(北方連邦領ホッカドー)となって今に至る。
この辺は流石に知っているが、戦前ばかでかいヤクザが居たというのは流石に教科書にも載っておらず、知らなかった。
「その辺は調べればすぐわかる情報ね。でもそれには続きがあって……最終的にヒノモト中に散り散りになったんだけれど、それが一か所に再集結して復活したのが、今いる白金組、白金不動産よ」
「……そういうことか」
散り散りになって、最終的に集まったのが沼津市ということなのだろう。
つまり、奴らはS県にルーツを持たないよそ者ということになる。
「白金不動産の方は……調べても出てきませんね」
よーちゃんは端末をしきりにタッチしたり擦ったりしながら、首を傾げている。
地元の民しか知らないような、マイナーな不動産会社なのだろう。
フロント企業らしいし、不動産会社として運営しているかは甚だ怪しい。
「表向きは地域密着型の小さな不動産会社ってことになってるから、調べてもまず出てこないでしょうね。……沼津駅の南口のそばに元々百貨店だったばかでかい雑居ビルがあるんだけど、そこの上の階が丸々奴らのアジトになってんの。まぁ構成員は高々60~70人程度で全盛期には遠く及ばず、大っぴらにヤクザして出歩いている訳でもないから、見分けるのは多分難しいでしょうね」
「へぇ……」
「南口か……それじゃあ分からんわけだな」
俺達が通う高校は北口の方にあるので、基本的に南口の方に行くことはない。
基本裾野に居る陽さんは言うまでもなく、よーちゃんも同様だろう。
「雑居ビルってあれか……」
「確かに、上の方は丸々看板とかが無くて空いてんのかなって思ってたけど、そんなことになってたか……」
そして将軍やキララさんの家も岡宮……沼津の北の方なので、こちらも当然縁がないはずとは思ったが、よくよく考えるとあの2人は港の方までデートしているので雑居ビルくらいは知ってたか。
流石に不動産がどうかとか、その正体までは知らなかったようだが。
「白金組と九十九は繋がってるんですか?」
「えぇ、そうよ。と言ってもあいつらは奴の持つ『認識を改変する力』によって操られていて、九十九の尖兵に成り下がってるみたいだけど」
「そうですか……」
九十九と白金組の関係については、おおよそ理解できた。
俺達を襲っていた連中の正体も確定した。
とはいえ……。
「とりあえず、黒幕やあの連中については分かったが、どうやって対処するんすか? 聞く限り、俺達に対応できるように思えないんだが」
市長もそうだが、それに操られたヤクザの集団なんて一介の高校生にどうにかなるような相手には思えず、俺は思わず李緒さんに尋ねた。
すると彼女は一言、さらっと言ってのける。
「そりゃあ、両方ぶっ倒して貰うわよ?」
「なに!?」
「なんだと……」
俺の言葉に釣られるように疑問を口にしたのは将軍だった。
だが、そんな男性陣2人の動揺を無視するかのように、李緒さんは続ける。
「これから私は白金組の事務所にカチコミかけるんだけど、貴方達にも力を貸して欲しいの」
「カチコミって……いつですか?」
「もちろん、この後すぐよ? クライアントの情報によると、今夜白金組の組長が事務所にいるらしいから、そこを急襲するつもりってわけ」
まさに「これから」だった。
李緒さんは右腕をグルグルと回している。
「白金組を操ってんのは九十九なんだろ? 人数で勝る連中を叩くより、九十九をぶっ叩いた方が確実じゃね?」
とはいえ、いきなりヤクザの事務所に一緒にカチこんでくれと言われて、はい分かりましたと言う訳にはいかない。
九十九を何とかする方が良さそうだと思えた。
「それをしたいのは山々なんだけれど、そうもいかないのよ」
「その物言い……何か事情があるってコト?」
キララさんはいつの間にか、台形のポーズを解いていた。
「実は、九十九の居場所に行く方法が突き止められてないの」
李緒さんは両手を耳元で外側に向け、首を傾げながら、いわゆるやれやれのポーズをした。
「居場所って、あいつ市長なんだから、市役所に行けば会えるんじゃねえの?」
「表向き市長として活動している『彼女』は奴の半身……貴方達の言葉を借りるなら『分身体』よ?」
「何!?」
驚きの声を上げたのは陽さんだった。
「あいつ分身体だったのか? ってことは黒仮面もあいつなのか……」
「オリジナルの九十九は、どこに?」
「多分、自分で作った異空間に引きこもっているはず」
「引きこもっている……」
よーちゃんの質問に対する李緒さんの答えを耳にした陽さんは、口元に握りこぶしを当てた。
「貴方達は知ってると思うけど、分身体は不死身……オリジナルを叩かなければきりがないわ。だから私と私のクライアントは、オリジナルの九十九が潜んでいるであろう異空間への入口の場所を調べてて……」
李緒さんは部屋の奥にある、大きなモニターの方に視線を移す。
「入口自体は、すぐに見つかったわ」
すると、それまで起動していなかったモニターが突如起動。
画面には白い建造物が映し出される。
「これって……」
将軍は建物に見覚えがあるようだ。
「沼津市庁舎……?」
キララさんの呟きで、その建物がなんであるかが分かる。
「でも入口には封印が施されていて、中に入る方法が現状分からないのよ。異空間に入る鍵については、今クライアントが調べているところ。多分、じきに結果が出ると思うわ」
その直後、モニターは再度消え、真っ暗となる。
「でもその間白金組は野放しで、貴方達の家に襲撃をかける可能性がある……」
「だから先手を打つってことか?」
「その通り。……手伝ってくれるかしら? 貴方達の力が必要なの! 無論タダでとは言わない。手伝ってくれるなら相応の報酬をしっかり出すわ」
「……事情は大体分かった」
黒幕は、九十九と白金組。
対処法は、俺達の魔術で白金組をどうにかして、その後九十九を倒すといったところか。
「……」
だが、それを聞いた俺の言葉は続かない。
実際問題魔術の力があるとはいえ、ここで即座に「はい、分かりました!」と言えない。
それを即座に言えるのは、まさにフィクションの主人公だけだろう。
こういうとき、俺的に即答しそうという先入観があるのはよーちゃんや将軍なのだが、2人も流石にそれは蛮勇であると理解しているらしく、俺と同じく無言のままだった。
全員無言は想定の範囲内なのだろうか。
李緒さんは静寂に一切動じることなく、それを破る。
「……いきなり言われても難しいでしょうから、考える時間をあげる。出発は今から3時間後の19時。……いい返事を期待しているわ」
李緒さんはそのまま部屋の外に出ようとする。
「李緒さん!」
「……あ、そうそう。スナックの上の部屋、自由に使っていいから。ママに説明すれば案内してくれるはずよ。それじゃ、また後で」
李緒さんは部屋を出ていき、俺達5人が残された。
部屋には静寂が広がる……。
「……一旦、休憩にしよう」
沈黙を破ったのは陽さんだった。
「そうですね。手洗いなりなんなり……」
次に口を開いたのは、よーちゃん。
「腹減ったんで、コンビニ行っていいか?」
「あ、アタシも行く! 作業やら戦いやら色々あったし、何するにも何か軽いもんでも食べた方がちゃんと考えられるっしょ」
「……俺も行く。陽さんとよーちゃんは?」
「わたしも。何か食べて休憩して、それで……」
「……考えましょうかね」
「分かった。んじゃ行くか!」
俺達は地下の大部屋を後にし、各々休憩のための行動をとり始めるのだった。
そして3時間後。
スナックの入口から出ると、外はすっかり真っ暗で、冬の夜風が肌に染みる。
申し訳程度に設けられている駐車場の敷地に、李緒さんは立っていた。
そばには、白いワンボックスカーが停車している。
彼女と車は、街灯によりぼんやりと照らされていた。
「さて、答えを聞いても?」
俺達の姿を見た李緒さんは、問いかける。
「……行きます。俺達も」
代表として、俺が答える。
答えは1つに定まっていた。
「OK。……期待しているわよ?」
李緒さんは右目をウィンクさせた。
その後、俺達は手配されたワンボックスカーに乗り込んだ後、李緒さんから作戦内容について一通り説明を受ける。
そして彼女の運転で、そのまま沼津駅近くに向かった。
前方の車が多いせいで、俺達の車は思ったよりゆっくりと南下し、学園通りに入る。
「悪い奴らをぶっ倒す! って、何か正義の味方みたいでいいな」
交通量が多く、のろのろと動く真っ暗な車内で1人はしゃぐ将軍。
「遊びじゃないからね? 晴斗」
そして、それを窘めるキララさん。
「わ、分かってるよ」
3列目の後部座席にキララさんと並んで座っていた将軍は、身体を縮ませた。
とはいえこのときの俺達は、多かれ少なかれ将軍と同じ気持ちを抱いていたはずだ。
魔術で悪い奴らをぶっ倒す、正義の味方のように、と。
だが、はしゃぐ将軍に対しツッコミを入れたのは、キララさんだけでは無かった。
「貴方、何か勘違いしてない?」
「あん?」
「私と私のクライアントは、正義の味方ではないわよ?」
李緒さんの声色は、将軍に冷たく突き刺さる。
「正義の味方でないなら、一体、何なんですか?」
2列目の、俺の右側に座っていたよーちゃんの問いに対し、李緒さんは一呼吸置いてこう答えた。
「しいて言うなら……この国の味方、かしら?」




