異世界第22話
「レオナルド殿、我が国へご足労頂き誠に感謝する」
「お初にお目にかかりますエリアス国王陛下。この度は突然の訪問に快く対応して頂き誠にありがとうございます。姿は見えないかもしれませんが、光の精霊ホワイティア共々感謝しております」
そう言ってレオナルドは魔力を高めると、魔力がない人にも彼の後ろに光の後光がさしているのが見えた。
それを見て「おお…!」と周りがどよめく。
私は勇者のレオナルドが敬語を使える事に対して心がどよめいた。あんなに自由で呑気なキャラなのに伊達に勇者をやっている訳ではないようだ。
「いや、今回は我が国からの支援の申し出を受けてくれての事だ。噂に聞く癒しの魔法の力で、我が王妃であるセレーディアの病を治して貰えるとの事、感謝してもし足りない」
エリアス陛下は弱々しく微笑む。
玉座に座る彼の顔色は悪く頬が少し痩せた気がする。
ルイス王子もやつれていたし、王妃様が病にかかった影響なんだろうな…。
「それに関してですが、申し訳ありませんが今回限りとさせて頂きます。今回はウィンチェスター王国を訪問する事がホワイティアの希望でしたので、エリアス国王陛下の要望にもお応えできた事をご理解下さい。今後どの国に対しても我が国は魔法での助力をする事は致しませんのであしからず。」
「それは勿論かまわない。その様な理由で応じてくれた事は理解した。他国とも情報を共有して、レオナルド殿に今後要請がかからぬ様努めよう。今回の件が終わったら、レオナルド殿もホワイティア殿もどうかゆっくりと我が国で羽を伸ばして休んでほしい」
「ご配慮いただきありがとうございます」
なるほど……。
レオナルドとホワイティアが来たのに何でゲームでは王妃様が死んだんだろうって思ったけど、きっとホワイティアがクロードに会いに行きたいと言ったからなんだろうな。
クロードとホワイティアは友達?っぽいし。
ゲームではクロードは今も眠りについているはずだから、2人はウィンチェスター王国の要請に応えなかったんだろう。
うんうん、と思いながらエヴァは謁見の間を堪能する。
玉座に座る国王陛下と勇者のやり取りとか、まさに王道ファンタジーだよね!
エリアス伯父様もレオナルドもオーラがあるから余計カッコいいシーンに見えるなぁ。
と2人を眺めていたら、玉座の横で控えている宰相のお父様と、レオナルドの後ろにいるホワイティアがチラチラとこちらを何度も見てくる。
今だにクロードの腕の中に収まっている私は、なんとも言えない気分だった。
お父様は、どうして抱えられているんだ?怪我か何かしたのか?大丈夫なのか?
と言った心配の目で見てくる。
一方ホワイティアは、嬉しそうにニヤニヤと怪しい顔をしてこっちを見てくるのだ。
ホワイティアの姿が他の人に見えていなくて幸いだったな…。
いや、王宮魔導師の人達は見えているのか?!
ホワイティアがおかしな表情をして何度もこっちを向くから、その度に王宮魔導師の人達はホワイティアの方と私の方を交互に見て、振り子の様に顔が左右に動いている。
ホワイティア……
………あの後も彼女の暴走は止まらなかった。
私はクロードに抱えられている状態が恥ずかしくなったので下へ降ろして欲しいと頼んだのだが、「此奴らがいるうちは無理だ」と突っぱねられてしまった。
それを聞いてホワイティアが変にまた興奮してしまい、更に恥ずかしくなった私はクロードに本気で降ろしてと言ったのだ。
なのにクロードは、無言でプイって顔を背けてから私をギューって抱きしめる様に抱え直して結局離してくれなかった。
ど、どうしたクロード?!!
抱きしめてくれるのは嬉しいけど、その拗ねた様に人形を抱きしめて離さない感じ……子供かよ!!
いつもだったら萌え萌えするんだろうけど、今回は本気でやめて欲しい。
恐る恐るホワイティアの方を見ると……
乙女ポーズでピョンピョンとジャンプしながらキャーキャー言って私とクロードの卑猥な話を妄想して喋っていた。
おい!そこで腹を抱えて涙を流しヒィーヒィー言いながら倒れている勇者!!
笑ってないで君の精霊どうにかしてくれよ!!!
………そう思い返してレオナルドをジロリと睨むと、彼は少しの殺気に気づいたのか、私の方を振り返って目が合うと、微笑みながらウィンクをしてきた。
それを見ていた護衛兵の数人は、レオナルドと私の方を交互に見て顔の振り子運動が始まる。
もう恥ずかしくてこの場所に居たくない…。
そこの勇者と光の精霊よ、お願いだから今すぐ国へ帰ってくれ。
その願いは叶わず、謁見の間にいた全員で王妃様の元へと移動する。
その様子は大名の行列の様だ。
行列の目の前にいる王宮の使用人や兵達が次々に道を開けてお辞儀をしていく。
そもそも何で私とクロードが呼ばれたのかと思ったら、勇者と光の精霊のご要望だったらしい。
エリアス陛下にもお願いされたし、王妃様の病が完治する所をこの目で見届けたいので、私も一緒に同行することにした。
再びサラマンダーの剣の塔へ到着する。
塔にはびっしりと青々としたセレナーディアの花が咲き誇っていて、皆んな驚いていた。
ふふふっ。
エリアス陛下だけは嬉しそうな顔をしている。
大名行列の御一行様のごとく現れた人々に王妃様はとても驚いていた。
一通り王妃様に説明をして、レオナルドは王妃様と隣にいる老婆の侍女にも癒しの魔法をかける。
「光の力を秘めし精霊の調べよ 奏で謳う不滅の白き輝きとなりて 求める者へと誘い天なる賛歌に満たされたまえ… 絶対治癒!!!」
厨二病の如く唱え出したレオナルドの手からは、白く輝く光が放たれて優しく二人を包み込んだ。
眩しくて見えなくなりそうになった途端にその光は弾けてキラキラと霧の様に光が散っていく。
魔法にかけられた王妃様と老婆の侍女は、少し体つきがふっくらとして肌に血色が戻った様に見える。
「お二人の病は全て治りました。王妃様、今後は何卒ご自愛くださいませ」
レオナルドのその言葉に周りの人々は歓声を上げた。
王妃様がありがとうとレオナルドにお礼を言ってエリアス陛下に顔を向ける。二人の目が合い、彼女は嬉しそうに微笑むと目尻の涙が一粒流れ落ちた。
それを見たエリアス陛下は王妃様を抱きしめて同じように涙を流す。
「セレディー良かった…良かった……!!!」
目元にはくまが出来て少しやせ細ったエリアス陛下を王妃様は抱きしめ返す。
「今まで辛い思いをさせてしまってごめんなさい。
……エリオット……愛しているわ」
そう言葉にした王妃様を見てエリアス陛下は目を見開き驚いていたが、また抱きしめ直して彼女に言葉を呟く。
私も愛していると。
それを眺めていた周りの臣下達も涙ぐんでいる人がちらほら。
私はルイス王子に借りたシットリしているハンカチをポケットから取り出して、コソッと時の魔法をかけて乾かしたら、またそれを涙で湿らせた。
ホワイティアがエリアス陛下と王妃様の周りをウロウロして観察している。
本当に他人の恋愛事情が好きなのだろう。
目ざといレオナルドは私の元へ来てコソッと尋ねてきた。
「エヴァちゃん今魔法使ったでしょ?それは闇の魔法なの??」
ん?闇の魔法……??
「??ぐずっ……時の魔法だけど?……チーーーン!!」
ぐちゃぐちゃに濡れたハンカチをまたコソッと時の魔法を使って乾かした。
「わっ、時間を戻すんだねぇ。いいなぁー。やっぱりクロードさんの魔法は便利だよね」
「ホワイティアの魔法も便利じゃないですか。……でも魔法を使うのに呪文を唱えなきゃいけないんですね?」
あの厨二病の呪文は唱えられそうにないなと思い、心の底からホワイティアとの契約はやめようと考えていた。
「いや?呪文なんて唱えなくてもできるよ〜。あれは俺が考えたんだ。唱えた方がいい演出になるし盛り上がるだろ?」
そう言ってヘヘッとドヤ顔で笑うレオナルドを見て、エヴァはガチでドン引きした。
勇者の厨二病という病に、絶対治癒!!!!!
陛下の名前エリオットは愛称です。
セレーディアsideのお話改稿しました。そこで少しその話がでてきます。




