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異世界第19話




エヴァは時の魔法を発動させた。



彼女の骨と皮だけだった体にはふっくらと肉が付き、頬と唇は赤く血が通って顔に生気が戻った。20代後半かなと思っていたが、こうして見ると10代半ばの女の子に見える。なかなか可愛いらしい顔だ。

魔力の滞りは……問題なしっと!


「完治しました」


周りのみんなはホッと胸を撫で下ろす。

健康体になり、闘病中の記憶が消えて遡った女性は目を開き、辺りを見回して混乱している様だった。


「ここは……え、子供?あなた何してるの?

あ、フィンセント!あんた私に何かしたの?!ここは何処なのよ!!」


おお…確かにフィンセントを嫌っていた様だ。

ハンス侍医が彼女に丁寧に説明してくれて、事なきを得る。

フィンセントは通常通り無機質な表情に戻っていた。

あぁ…!さっきの少し微笑んだ気がするフィンセントに時間を戻して、口元の布を剥ぎ取りたい!!あと一押しって所で…悶々とするわー!


と心の中で欲求不満を叫びつつ、すぐさま私はもう1人の寝ていた女の子も治療して、隣の部屋にいる男性達も全て完治させた。

他の人は脳に異常は無かったので、記憶を消すこともなくホッとする。

治した患者皆んなにお礼を言われたが、フィンセントの方が感謝されていた。

医者に見放されて、更に伝染病にかかりたく無いからと誰もお世話する人がいない中、フィンセントだけは2ヶ月間お世話をしていたんだもんね。

中々できることじゃ無いし、本当に良いヤツだと改めて思う。

患者の対応をハンスさんに任せて、少し落ち着いた頃、


「フィンセント、さっきの彼女の事好きだったの?」


私はいきなり爆弾投下してみた。


「……は? あっ!いや、すいません。‥先程の女性ですか?彼女はただの同僚ですよ。何故かいつもライバル視されていました。いや、記憶が無くなったので、今も、ですね」


おお…!動揺したフィンセントを見れた!!

と少し感動しつつ、再度投下する。


「彼女はフィンセントに恋愛感情を持っていたみたいだよ?本当に記憶…無くしちゃってよかったの?」


「え?!はぁっ?!!………た、大変申し訳ございません。…それはエヴァーミリアン様の勘違いでございましょう。逆に私は周りから疎まれている存在です。私を好きになんて…そ、そんな酔狂な人はいませんよ」


あのサイボーグフィンちゃんが私の言葉でうろたえている……!

何だこの気持ちは。

た、楽しい……!!ぐふ。

爆弾…投下投下投下じゃーーー!!!


「な〜に言ってるの!さっきあんなに皆んなから感謝されていたじゃない。この人気者〜っ!フィンちゃんは幼いのにしっかりしてて、優しくて、頑張り屋さんで、充分魅力的だよ?あとイケメンだし!あの女性もまたフィンちゃんの事好きになっちゃうかもねっ。よっ、モテモテ男っ!にくいねぇ〜〜!」


フィンセントはサイボーグが停止したかの様にこちらを見て、ピクリとも動かない。


あははは……あれ?言い過ぎちゃった?興奮して令嬢が近所のオバチャンになっちゃった!やべっ!


「あ〜ごめんね。まくし立てて話しちゃって。でも本当に思っている事だから。フィンちゃ…フィンセントはカッコいいと思うよ」


何も言わないフィンセントに気まずくなって目をそらしながら話す。


「ボンッ!!」


……?!


音がした気がしてフィンセントの方を見たら、彼の顔は真っ赤っかになっていた。


「………自分の仕事の傍、患者さんの面倒を見てたんだってね。一生懸命頑張っているフィンセントは素敵だと思う」


「ボンッ!!!」


「フィンセントは優しくって、頼りになって、立ち振る舞いも上品で、気遣いができて、顔も整ってて、目も鼈甲の様に綺麗で、えーっと…とにかくカッコいい!!」


「ボンッ!ボンッ!!ボンッ!!!」


フィンセントはもはや茹でダコだ。人はこんなにも全身真っ赤っかになれるものなのか。

笑顔は未だ見れないが、エヴァの悶々としていた気持ちはもはや無く、爆弾を連続投下して更に機関銃を乱射で撃ち放った様な爽快感が胸を支配した。


「……人の顔を見て楽しんでますよね?変な人だと思ってたけど、意地悪な人なんですね」


真っ赤な顔をしてフィンセントは呟く。


「え…意地悪?…………確かに意地悪ね。ふ…ふふっ、自分が意地悪な人だって初めて気づいたわ」


前世も含め長年生きてて、こんな自分の面があったなんて全く気付かなかった。まさか、それをフィンセントに教えてもらうなんて…。なんだか無性に面白くなり、エヴァが笑っていると


「ふっ…、悪口を言ったのにどうして笑っているんですか?」



あ……綺麗……………


フィンセントが笑った。



「ガッタン!!」



エヴァは椅子から転げ落ち、顔を真っ赤に染める。


「だっ…、大丈夫ですか?!お怪我は…「ありがとうございます!!!」」


「え……?」


「フィンセントの笑顔が見れて…感無量です!!!」


エヴァは祈るように手を組み、涙で目元を潤ませた。


「ボボン!!!」


「なんて綺麗な笑顔なんですか……!!」


「ボボボボン!!!」


「どうかもう1度…その素敵な笑顔をもう1度ぉおおおおお!!!」


「ボッカーーーン!!!!プシューーーッ……」



…………。


再び茹でダコになって停止したフィンセントと、彼に祈りを捧げて懇願しているエヴァとの異様な光景はしばらく続く。


笑わない無機質なサイボーグフィンちゃんは、エヴァのチート(爆弾投下&機関銃)攻撃によって再起不能になり、少しだけ感情表現の出来るフィンちゃんに生まれ変わったのだった。




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