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異世界第16話





王宮のウィンチェスター城にある、とある一室での事。


宮廷医師団統括のバークファン侍医長に、先程アイゼンハワー公爵家から戻ったハンス侍医が嘆願していた。



「バークファン侍医長、お願いが御座います。現在、槍の塔に隔離している患者述べ8名を、アイゼンハワー公爵家のご令嬢であらせられるエヴァーミリアン様及び、この度公爵家専属医師となられたクロード様に治療していただくべく、本日お2人をお招きしております。事後報告で誠に申し訳ございませんが、バークファン侍医長に治療のご許可をいただきたく存じます」


バークファンは中性的な顔立ちの男で、窓から刺す光を背に綺麗な姿勢で机に向かっていた。

机の上にある山の様な書類に目を通していたが、ハンスのいきなりの発言に耳を疑い書類から目を離した。


「…ん?いゃあ〜、ちょっと何言ってんのか分からないわハンスちゃん。どうしてそうなったの?」


「…経緯と致しましては、公爵家での勤務の際、私の常識を逸した魔法での治療をこの目で拝見したのです。本日エヴァーミリアン様が丁度王宮にいらっしゃるとの事で、是非にと私から提案致しました」


「魔法…って癒しの魔法?え、まさか公爵家の令嬢も光の精霊と契約したの?」


「いえ、癒しの魔法ではありません。アイゼンハワー公爵様から詳しい事は伺えませんでしたが、医師のクロード様が時の魔法を使用し、患者の体内の時間を巻き戻す事により完治させる治療法でした。エヴァーミリアン様も同様にでございます」


「ふぅ〜ん。クロード……知らない名だな」


バークファンは手元の書類にまた目を移し、ペンを握る。


「いいよ、ハンス。許可する」


「え……」


「ウィンディーネの槍の塔に隔離中の患者8名、アイゼンハワー公爵家専属医師に治療を許可する」


「ありがとうございます!」


一瞬窓がガタガタと強風で揺れだした。

どうやら今しがた竜騎士団の群れが、城から北東の空へ飛び立った模様だ。

バークファンは綺麗な所作で書類にサインをして、ニヤリと薄く整った唇の端を吊り上げた。


「くっくっく、癒しの魔法と時の魔法か。随分と面白い風が吹いてきたな…」






―――――






一方エヴァーミリアンは、ルイス王子に別れを告げて

、約束の槍の塔へクロードと侍女と3人で向かっている途中だ。


「や〜、無事作戦は成功したけど、あの後護衛が集まってきてビックリしたね」


「小童と女がギャアギャアと何か騒いでおったからな。皆、何事かと思うであろう」


「ギャアギャアって…。まぁ、それ以外にも、剣の塔全体にセレナーディアの花がギッシリ巻きついてるのに、皆んなビックリしただろうしね」


「あぁ、見事に塔が真っ青に染まっておったな」


「ふふ、こりゃあサラマンダーの剣の塔ならぬ、セレナーディアの花の塔に改名だね」


エヴァは満足しながら、自分の泣き腫れた目に手を当てて、時の魔法で時間を戻した。

うん、スッキリ。


「それにしても、ルイス王子はあの短期間で炎をあそこまで操るなんてねぇ…。末恐ろしいわ」


「うむ、彼奴の魔力量はエヴァに匹敵する量かもしれぬな。このままいけば、炎の精霊イフリートと契約する事ができるかもしれぬぞ?」


うぉっ!!さすがクロード!!鋭いわぁ…。

そうなのよねぇ、“恋マジ”のゲーム中盤でルイス王子はイフリートと契約するんだよ〜。


ルイス王子は炎の精霊イフリート。

弟のルークは水の精霊ポセイドン。

剣士のアルフォンスは風の精霊ジン。

執事のフィンセントは大地の精霊アテナ。

先生のジョルジュは闇の精霊……あれ、名前なんだっけかな?


…と、まぁ、それぞれ契約する事になる。

そりゃあ大精霊と契約するんだから、魔力量も多いよねぇ。

そんな将来の絶対的強者達に、私は断罪されて死ぬかもしれないと思うと……ゾゾゾ。

うおおおお!!!なんとしても負けてはならないわ!!帰ったら修行よ、修行!!!

圧倒的に力をつけて、断罪されても生き残る術を持たなければならないわ!!!


エヴァが両手で震えた自分を抱きしめて歩いているうちに、3人は目的のウィンディーネの槍の塔まで辿り着いた。



「あれ…?午前中のお医者さんいないね」

「ハンス侍医でございますね」


すかさず後ろから優秀な侍女が正してくる。


「そうそう、ハンスさん…」


サラマンダーの剣の塔とは違い、塔の下に護衛兵はもとい、人っ子一人いない。

…と思ってたら、

10歳くらいだろうか?少年が1人塔から出てきた。


藍色の髪は短い長さで整えられて、風でサラサラなびいている。瞳は金に近い茶色で、目鼻立ちの整った物静かそうな少年だ。



「アイゼンハワー公爵家ご令嬢のエヴァーミリアン様と、お連れ様の公爵家専属医師のクロード様でいらっしゃいますか?」


あ、そういえば、クロードのこと大精霊とは流石に公にできないから、表向き公爵家専属医師として皆んなに伝えてたんだったね。

うん…お医者さんか。結婚できたら一生安泰だよね。ますますズルイ男レベルが上昇したわ、クロードよ…。


少年に、はい、そうですよーと返事をしたら、彼から白い布を人数分受け取った。


何だろう?これ。


「この度は、宮廷医師団副統括ハンス侍医から全て承っております。自己紹介が遅れて申し訳ありません。私、宮廷執事見習いであるフィンセント・クリューガーが皆様をご案内させて頂きます。そちらの布を口元に巻いて、どうぞ私の後から続いてお進み下さい。」


あら、ハンスさんって副統括だったのね〜。真面目で丁寧な物腰だったけど、偉い人だったのか。

うんうん、そして君は執事見習いのフィンセント君ね。そんな幼いのにしっかりしちゃって。

って3歳の私が言うなってね!

ん………?フィンセント………



…………フィンセント・クリューガー?!!!!




こんな所で出たーーーーー。攻略キャラ。









セリフの語尾の「。」直しました。

いつも読みづらい文章を読んで下さり、

本当にありがとうございます。

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