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異世界第11話




揚げたてのワイバーンの唐揚げを頬張る。

ワイバーンは筋肉質で少し硬いお肉だけど、この店は下処理が丁寧なのか柔らかくジューシーだ。

噛みしめるほどにサラッとした肉汁が溢れてくるのと同時にニンニクの風味が鼻を通るのを感じたら、勢いよくビールを喉へ滑らす。

ん〜〜、ボーノ!!たまらん!


今エヴァの見た目は魔法で17歳くらいに成長している。この国での成人は15歳。堂々と飲酒できるのだ。


そして普通に夕食を食べてきた後だけど、ここの店の料理は別腹だね。

そもそも公爵家の料理も美味しいんだけど、どれもチビチビした量で少しずつ出てくるからお腹いっぱいにならないんだよねぇ。

要は、私はフレンチより大衆居酒屋が好きなんだよ。質より量でしょ!

と思いながら美味しく食べていた唐揚げを、隣の席に座っていた男が勝手にパクリとひとつ食べだした。


は?!!何こいつ?!

この国に多い茶色い髪と瞳の30代後半だろうか?おじさん一歩手前って感じの男性が、ワイン片手に


「あ、コレも合うな〜」


とか普通に言いながら、私の唐揚げを咀嚼して飲み込んだ。

あ‥私キレそう。って思った瞬間、その男性が


「ごめんごめん!こっちのステーキも美味しいよ。食べる?」


と、笑って勧めてきた。

私の怒りゲージが一気に下がりだす。

え、それワイルドボアのステーキじゃん!

ちょっとお値段のするそれは悩んだ挙句注文しなかった品物だ。


「え‥いいんですか?」


勝手に唐揚げを食べたのはそっちだから、こっちももちろん食べる気満々だけど一応聞いてみる。


「もちろんどうぞ。このベリーソースも美味しいけど、まずは塩胡椒で食べるのがオススメかな」


まずはって事は次にベリーソースでも食べていいのかな?と卑しい心を滲ませながら、塩胡椒で食べてみる。

うっ‥美味い!!ワイルドボアのお肉は歯を使わなくても噛めるくらい柔らかい。

噛んだ後にはワイバーンとはまた違った上品な甘さの肉汁が溢れんばかりに広がる。

そこに塩胡椒が効いてキリッとした旨さに変化していき、最後にはとろけて口の中から無くなっていった。

‥ほふぅ。


私がとろけた顔をしたからか、隣の男性は笑いだして


「ベリーソースでも食べてみてよ」


と、期待通りの言葉をかけてくれた。

うふ。では、遠慮なく。


‥そうしてその男性と会話をしているうちにワインも飲ませてくれて、私はちょっとほろ酔い気分になってきた。


ちなみに成長の魔法は30分が限界だったけど、お母様が出産した時にクロードの力を借りてからは、なんと2時間程魔法が続く様になったのだ。


そろそろ2時間たつかな〜と思い、隣の男性にお礼を言って席を立とうとしたら手を掴まれた。


「僕をこんな気持ちにさせておいて、君はもう帰るのかい?」


ん?!!こんな気持ちって何??

ちょっと私食べ過ぎた??もしかして怒ってる?!


「君は悪い子猫ちゃんだね」


と言いながら、掴んだ私の手にその男の顔が近づく。

唇が付くか付かないかの寸前に、ジョルジュが私の腕を引っ張って抱き寄せた。

ジョルジュは現在13歳。17歳に成長したエヴァよりも少しだけ背は低いが、腕も胸板もちょっとゴツゴツしててちゃんと男の人の体つきをしている。

私はほろ酔いで、ジョルジュの腕に引き寄せられるがままに彼の体へ重心を乗せて密着する。

そしてジョルジュはその男に言った。


「……こいつ門限あるから」


そのまま私の腕を引っぱって店の外までズンズン歩きだすと、ジョルジュは私を置いて何も言わずに店に入って行った。


え、門限は無いけど‥。てゆうか無断で抜け出して来てるし。ジョルジュはどうしたんだ?と、私はフラフラしながら今のは何だったのか考える。

もしかして、あの男は私をナンパしてたのかな‥?

え、全然気づかなかった!まじか〜‥

そう思いウロウロしていたら、ジョルジュが店から出てきて私の手を掴んだ。


「……じじぃが家まで送ってけって。どこ?」


え?!まじで?!!

その優しさはありがたいけど‥どうしよう!

エヴァは一気にお酒が引いて顔が青くなった。


この土地の領主であり、国王の弟でもある父のアイゼンハワー公爵家はここから徒歩1時間以上はかかる。

そもそも、もうすぐ2時間で魔法が切れそうだし!3歳になっちゃうし!やばいやばいやばい‥

私は今すぐ瞬間移動で逃げたかったが、それはしちゃいけない。どうしようどうしよう‥

エヴァの頭は最高潮にテンパった。


ひとまず私は、ありがとう大丈夫だよ、お姉さん1人でも帰れるよ、って安心させるために繋いだ手を解いて彼を抱きしめた。

そして、私は酔ってないよとアピールする為に、余裕のある大人の優しい声を作り、彼の耳元で呟いた。


「大丈夫だから。ありがとうジョルジュ、また来るね」


抱きしめた腕をほどき、ジョルジュに笑顔を向けて


「おやすみ」


と一言発し、エヴァは駆け足でその場を去って行った。



「……………。」



彼が何を思ったかはわからないが、そのまま呆然と立ち尽くしてたらしい。店から出てきたナンパ男に背中を蹴られつつも、膝をついたまま店前で呆然としていたとマスターはあきれて言っていた。






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