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進み続ける異世界の原点  作者: 雲煙模糊
ティエラside
7/32

7杯目~少女の冒険が始まる~

 初めましての人は初めまして。

 クリスマス行事に勤しんでいる方はお疲れ様です。

 久しぶりの方はご無沙汰しています。

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ユニーク数:89人

 内訳(パソコン74人 携帯0人 スマートフォン15人)

PV:148アクセス

 内訳(パソコン112アクセス 携帯0アクセス スマートフォン36アクセス)

小説作成時BGM:さくらんぼ

「……んぅ……ぅ……ぅん? ここ……は……」


 見たこともない天井。

 いや、正確に言うなら見慣れない天井……というところだろう。

 修道院にいた時の天井はもっと高く、傷なんて一つも……


「あっ!」


 ベットから跳ね起き、周囲を見渡す。

 小さな長机に椅子が一つ、木製のドア、水浴びが出来る小部屋、壁には陽の光と心地よい風を入れるための窓……窓の外からは賑やかで活気溢れる声が聞こえる。


「あ、あれ? わ、私、なんでここに……」


 窓の外からは建物の二階や屋上が見える。

 床の下で物音がしている。

 部屋の中には自分以外誰もいない。

 修道院を出るときに着ていた服が見当たらず、代わりに華やかな洋服。

 杖と巾着は机の上に。

 脳が視界に映る情報から自分の置かれている状況を推測する。

 不透明な記憶と整合性を取りながら。


「っ! う、うぅぇぇぇ……」


 突如、少女はベットの上に嘔吐し、次々と浮かび上がる記憶の断片を味わう。

 どうしてベットの上にいるのか、どうして服が見当たらないのか、どうして記憶を失っていたのか……この街に着いてからの記憶が決壊したダムから流れる水のように溢れ出した。


「ティエラ様――? 目をお覚まし……って大丈夫ですか!?」


「ぅぅぅ……うえぇぇ……」


「あ、は、吐くならこの袋に!」


「す、すいま……うぇぇぇ……」


「いえいぇ……ぅぅ……私もぅ……もらい、吐きしそう……うえぇぇぇ……」


 恋も花咲くお年頃の少女二人、真昼間から胃の中で消化しきった物を全て袋に出した。

 まともな会話が出来たのは、それから三分ほど経ってからだった。


「す、すいません……」


「い、いえ、看病役の私も吐いてしまって……すいません」


 死という大きな闇に初めて触れた者が、対した面識も無い者と“嘔吐”という共通点を持つだけでこれ程気まずくなるものだろうか……そんな思いが脳裏を過るが、沈黙を続けていても何も始まらない。

 少女は腹の底からこみ上げる胃液に待ったをかけ、少しずつ言葉を紡ぐ。


「え、えっと……私は……」


「……あ、そうでした。ティエラ様が起きたらまず飲ませるようにと受け取っていた物が有りました」


 女中は簡素なエプロンのポケットから五つの小瓶を出した。

 透き通る青色の液体が振動によって水面を揺らしている。


「これは……気付け薬?」


「はい、そのように聞いております」


「け、けど、私、お金が……」


「代金は先に頂いておりますので、大丈夫です。ささ、どうぞ」


「え、あ、はい……ありがとう、ございます……んっ」


 五つ合わせてコップ一杯分といったところだが、飲むとだいぶ楽になったように感じがした。

 普段気付け薬など買わないため、相場が分からないが、安くは無いのだけは憶えている。


「それでは……まず、ご存知かと思いますが、ここはギルドの二階にある一室になります。ティエラ様はこのお部屋で三日ほど眠っておられました」


「み、三日ですか?」


「はい、三日です。ティエラ様が運ばれてから丸三日が経過しております」


「そ、そんなに……」


 ―――あのダンジョンに入った日から……三日も……ソレイさんたちは……


「あ、あの、私以外に運ばれた方は……?」


「……いません。あの方が運ばれたのはティエラ様だけです」


「……そうですか」


 ―――助かったのは……私だけ……


「……お気持ちは察しますが、パーティーを組まれていた方の生存はゼロという報告を受けております」


「……報告というのは?」


「クエストの報告になります。ダンジョン攻略のクエストは我々ギルドからの発注とさせてもらいまして、その内容は全階層の魔物の討伐と生存者の確認とさせて頂きました。かなり強引な発注でしたので、今頃ギルドの上の方々が魔物の手でも借りたいというくらい忙しいはずです」


「……私を運んでくださった冒険者を教えて頂いても?」


「守秘義務のため、冒険者の方の情報を他者様にお教えするのは禁じられている……のですが、ご本人様から教えても問題無いという言伝を得ていますので、お教えします。あ、ですが、今は別のクエストで不在にしておりますので、お会いするのであれば夜にでも酒場に顔を出す事をお勧めします」


「は、はい……分かりました……」


「では、ティエラ様を運んでくださった方ですが……通称“アイファングのハイエナ”と呼ばれる三等級冒険者、オリヘン様です」


 言霊という力は存在するのだろうか?

 かの受付嬢がふと発した言葉に力は宿ったのだろうか?


「アイファングの……ハイエナ……、オリヘン様……」


 時と世界を俯瞰出来る者しか理解出来ない理。

 しかし、彼女はこうして生きている。

 温かく、大切な、友人を失い。

 冷たく、残酷な、絶望を得て。


 彼女の冒険はまだ……始まったばかりだ。

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