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「くぅう!? 大丈夫? ねぇ皆さん大丈夫ぅ?」
唯一の声がな――。爆炎の中でも唯一健在な勇者は、でもそこらはもう。
防御したその内で震えている、大半はなんとか間に合ったがそこら一帯をクレーターに処してて。
「ふぅ……、ふぅ……、さすがに、驚きましたわね」
撤退命令を間一髪で出してた姫が銀光を撫でた。
ただとても臭い……、いやこれは胃液だろう、うぷ――こいつ。すんごいヘイトしたくなるデブ、酸っぺぇぇ、相互的に俺のも口の中からくるし。先生果てちゃったし。
でも少しだけ核が露出したのをシールド内で直している気配があるなと、核だけシールドしたのを見てたぜ俺は。でも行けないんだ、まだまだ戦う気満タンなんだよ相手。コッチは手詰まり感があるんだわ、全員で行くと大量殺戮くるし、やはりもう少し作戦を練るべきかと全員が。
「多分あれ、違うわ。はぁ……はぁ……、スキル解釈が違うんだ。パーティー内で力が最強っつてたけどさ、オール・ユーコントロールか、それほんとはオール・クリーチャーじゃないのかよ? 意味が違うんだよ……」
ずっと引っかかっていた。
大島は今も戦えてんだよな、あのパワーヤギ相手にさ。それは相手と自分が全対象なんだ。でもそれがフルで発動しない理由があったはずなんだよ、何度かモンスターと実践しててアレならば――。
「おぃ大島、お前アイツ行け! リーダーの奴だよ絶対いけるから、お前の出番だよッ、なぁにビビってんだぁー!?」
「おぅおぅ、このアタシに指図かよ、しかも大島じゃねえって! でもさ、おっもしれ~~、へへへ。やってやろうじゃん――」
ニカッと笑い突進する、分かりやすい、そうして組んで。でも駄目で、泣きそうなその顔はやはり女か。しかし。
「叫べよ真田ァア! お前のは気合が足りてないんだ、2重の範囲が作動してないんだよ、さぁ叫べ思いっきり――ッ!」
「わっけ分かんねぇって、範囲ぃ? はぁ……はぁ……、でも、じゃあ、ストレングスぅうう・インフィニティぃい……、どりゃあ」
あ、アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
やっぱな、こいつは怖気が走るな。あとで教えておこうと思う、アイツのは最強にヤバい能力だと。
組み合った瞬間に浮いたモンスターのその顔が忘れられない、えっ――って浮いてしまい、ぶん投げられる、生きて来た中でそうない経験、そこへ重厚な斧の刃先!
今一瞬だが赤い静かな衝撃波が、多分あれが2重目であり。
「おっほぉ、行くわ、もっともっと行っけるぅうう!」
大地が裂け散らかした、それを調子に乗らしたらもう手に負えないだろうよ。シールドがあるにはあるけどもだ、一番の重装備が普通に掴みに来てパニックだよ。バリアに守られてても必死に他を考えねばならないのは悲惨。
そうなると崩れ始める敵の陣営は、その隙を突いて自爆を生身で耐えてみせた勇者がデブの相手して残りはヤギへと殺到し。
「おぃ、どうしたよ、自称リーダーだろがぁ、しっかりと抑えろよォ!?」「バカを抜かせぇ!? こんなのは聞いてないぞ、一体何をすればこのような――」
ふしゅ――、前な、軽いけど一番のデブらしい重さを持った、超えて来るパンチにぶっ飛びかける。奴は掴みさえすれば最強。効くか効かないかじゃないんだ、押し付けられるハイパワー。更に一撃を、純粋なチカラこそがパワー、攻守ともに順調に圧してみせれる原動力となりうる。
「でも確か、こいつらが前座で、危なくなると合体するんだっけ?」
その大きな大きな化け物たちが、一つの禁忌へと至ること。
わ、我らハ……、こうする事が運命。
ダンジョンコアの前、母なる力の前で。本当に……、本当に良い事か。
考えるナ、考えるナ、考え……、る、ナ。がぁ……、ぐぁあああ? 飲まれる……。全ての体が、意志が。望みが全てが。
なぁ、本当は人間へと下るべき……なのではないのか、これが残ってしまえばもう――。
「姫様ッ! 最終型と思わしきダンジョンコア露出!」「ダンジョンがキメラを選定しました、もうすぐ臨界へと到達します!」
感知するその鼓動。世界が鳴いた、それは泣き狂った。
あまりに大きくて震え、禍々しい風で慟哭する森。
まるで木々がイライラしているよう。ソレはざわめきではない破裂するようなチャント、爆発するような自然音が響く。土が沸騰して終わりて水は自ら腐って、木が腹切りを成した。そうして全ての悪意の被膜が森から剥がれて行くんだ……。
森の死相が浮かぶ。
その後はまるで力を凝縮した渦巻きが顕現し……腕を出して。
歩いて、その邪悪なる臓器がうがつ独特の、邪なる鼓動でもう一度染め直して。
「森が……、今にも爆発しそうだ。こんなのどうなるんだよ」「森が血を流してるよ、ほらぁ!?」
それはダンジョンを引き連れて、巨大な何かが歩いてコッチへくる――「強いぞ……、これは」
歴戦すらも息を飲む、全てのあの臭いが交わった結果、濃密で圧縮されたダンジョンそのものが顕現したのだ。
その姿は、本当の異形とは逃げ場を失くす物。それは妄想の中ですらも、想定という物を全て踏みにじっていくんだよ。
それでも逃げたい―――。
「ま、マジで? マジでこれ、蜘蛛」「人間だ、アレは2足歩行だ、ただ本当に生物なのかと」「いやアレは鳥だろうに、どう見ても鳥で」
「ふぅぅ……、いいかしら全員、恐れてはいけない、何者でなくても恐れてはいけないわよ」
蜘蛛の一種か、だけどそれは尻尾が生えてるし2足歩行で人間なんだよ。しかもカオは左が鳥で右のは蜘蛛であり、揉み合う中央が……言い表せない何かだよ、顔面という絵の具を混ぜたような、歪んで。
腕は合計5本、妙にケバケバしい体毛が無数に生えおり、針と節のような腕を持つものの人型の肩を持ってて異様で。蜘蛛側のカオは何故かウロが空いている。目とも思えないが、よく覗き込むと目のような白いのが無数に内側――。
魔力もすごいんだ、キメラ……。この世の悪意の集合体。
よくそう、この世界ではキメラこそが恐怖の代名詞になるよ。それは俺達と違いその姿は合成されているのは悪意だ、ただの悪意。むしろ体は関係ない。
多様な悪意の総形であると。ある時は素の大男で、ある時は巨大な龍でありまたは犬もあるし天使の姿も。それは人類がまだ知らない新なる悪意、たった一度のオーダーメイドたる絶望。
「でも、私は行かなきゃいけない――」
剣を握った勇者は、前へと勇んで出るから。リューク阿佐ヶ谷は睨み合う、ピンクの姿もくすむほどの殺意と悪意へと己を刻むべく、その名を求めて。
「勇者ですよ、私、オォおオオ!」「フンぁアアア!」
斬りつける勇者剣をいなされて、パンチ! 阿佐ヶ谷アネの血が飛ぶ、早く……、早く援護をしなさいな!?
姫の命令に何人かが思い出したように魔法を使ったんだ、しかしそのぶつかり合う2つには全てが無駄に思えて。骨格すら吹き飛ばす勇者の斬撃をシャットアウト、その後のカウンター、流れるような多段攻撃で鋭い尻尾とクモの5本脚、それを勇者が回転して避けるが追うのも早くて。
「剣が……、へし折れただと――!?」「まだよ、まだまだです、はぁ……はぁ……、私はあなたを倒しますのでぇ――」
得意じゃなくとも、それでもそのコブシは――。大地を揺るがす阿佐ヶ谷とキメラの激突!
「うぐぅ!? 強いわ……、強すぎるぅ」「勇者様ぁ――!?」
「大丈夫よ、でも大丈夫だから私、兵たちを温存して! 多くの国民を守らなきゃよアナタは」はぁ……、ふぅ……。
ふンぅゥ――。
大きく両の腕を広げる。責任感はあるし傷つくのを怖がらない、女の子なのに。その血を払って大きな大きなキメラという2m近い化け物へと向かうから。
全てを守るためには騎士団が定位置をしっかり守る必要、そうして彼女にとっては騎士すらも民で。むしろ勇者が下手に奔走する事によって被害が出ないよう、逃げ道を遮らないようしっかりと地に足ついて。
「悪いけどさ、これは……、これだけは仕方ないわ。アイツが勇者さ」「うん――、そうだよね……」
あいつは人間たちの為に戦ってる、例え不格好なお相撲になろうとも。あんな足が震えるような相手でもだよ、しかも初陣のはずなんだよな、コレ。
今の俺達には大物過ぎる相手でも。




