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「あはははハ、マジで似合ってるよーー。ひっさしぶりに見たけどさぁ、偉くなったもんよ、なぁ? 渡辺ぇ」

「あぁ、あなたは、誰かと思ったら……?」

 ふふんと、明らかにコッチを馬鹿にする仕草を、渡辺じゃないって言ってるでしょう?とかはもう言わず、「あなたみたいなのとは違うのよ、全てが違う。毎日がパラダイスだわ、これが始まりの鐘、響く私のサクセスストーリー……」


 らら、てぃあたた、てぃあたた、てぃあたたた~「素晴らしいのよ、分かるかしら。ゴシック建築の様相を持つ、荘厳で格式高い尖塔の上。その頂上で私は見ていられるの、朝日が満ちて欠ける月をもね……。私が重なる、この本当の意味での高貴なる中で暮らす、喜びが満ちる染み込んでいく……」

 手をハネのように広げた、王宮では王をもしのぎかねないVIP。


 だって私を見た時の神官さんたちの目の色が忘れられないわ。良い服や良い食事が次々と運ばれて来て、それで生演奏もしてくれて私の為に詩も書いてくれたわ、私も発表したの。こんな王城で、私の為の晩餐よ。

 恐縮はするけどね、それでも自分はこれを受け取れるべき人間と。今やっと。

 恥ずかしいのだけれど突然求愛なんかもされちゃって……、ふふふ。誰もが私が生まれた事を褒めたたえるの、生まれてくれてありがとうって。でも時折怖くもなるわよ、特に目が覚めて色々する時とか。


 映る……、私でも凝視してしまうもの。でももうそれが普通なのよ、慣れるべきだわ衣津美。

 そうでしょう、だって本当に彼らは私を必要としてくれてて。


「いや、その前に顔をなんとかしろよ、そのドギツイ化粧をやめた方が良いと思うけどな」

「いや、え――。」「悪いけどもう少しだけ似合うのあるでしょー? 多分さぁ……、それ、この世界での基準だってば、でもアッチは俺らと同じ転移組よ~?」

 その言葉に狼狽し、すねたような顔をするから。

「あぁ、うん。そう思ってた。やっぱり、アンタだけは本気か……」

 うん悪くない。

 そう言って笑って来るんだ、腐れ縁というやつよな。お互いなんか、微妙に浮いてたし。



「あ、あの、聞きたいのよね、あぁーーえと、確かアナタ今はトモオ、だっけ? それでスキルがすごいっていうね、これ私RPGだとかはしないから、ぽ、ポケモンくらいだからね」

 王家からも堅く言われているらしいが、うへぇぇぇェ……ぇ? コイツはバケモンだわーーー……。

 その秘匿してたのを晒して来た物は、格別ヤバいのだったわ。

 お前、違う。お前だけはレベルが違う、勇者。



「勇者ヨ――」「そ、そう? やっぱり、違うかしらぁ。ンフフフ。王宮の人たちが研究したいってしつこくてぇ――」

 遠慮するカオがもう、超幸せそう。

 異世界の空の下でボブカットの黒髪を揺らし、揃った前髪を払って。地味でデッカイ。


 変わってねえなと、いや、でも本気で君が希望なんだよね。ここで頑張ってもらわないとだ挫けてもらっちゃ困るわ。お互い日陰者だったし、それで俺に声かけて来てさ。

 そんなメリットのない。



 まぁ、今の時代って何気に自分の価値を落とすのは難しいんよな。男だけ、女だけって有りっていうまやかしもあるし。青春でそれはきっとでも――。


「これなら世界はお前の物だぜ、なんだって通るわ! 八島 衣津美、堂々としてろ、こんなの男なんて話じゃねぇよ、オマエは輝いてる、だから胸張って青春して良いんだぜ、自分らしくしてろよ」

 それに安心した笑顔をするんだ、まぁさっきまでただの女だもんな。

 そうしてだから俺はトモダチ君にもさ、その隣の色男くんへ――いや大汗ダラダラだな、でもしっかしスゲェよなぁ? なぁなぁマジこれスゲェよなぁ……って?俺は推して圧して押して。

「そ、ソうだヨ?」



 心がバッキバキに折れてるだろうなぁ……。

 ヒヒヒヒヒ――――――。


 ハッキリ言おう、この2つの路線は全てに得だ。異世界行ったならワンチャンス狙うのは当然、全員がチャンスを狙っているさ。

 引き当てたやつは万歳だよ。

 それで俺は別に何もしないけれどただ元の仲間を鼓舞して世界を救う手助けをするのもやぶさかでないなと。俺は得しかないし、世界も得しかしないし。



「いやー、羨ましいよ~、それでさぁ、上定くんはもーっと頑張れよ? なんせいつかは勇者さまだけと旅立つ男だ、たった一人の男になれるだなんてぇ~」

 どんな激しい夜なんだろうな?


 ぐざぁああ!突き刺さる会心の一撃が。いつかはどのタイミングかで、彼らは魔王城を目指さねばならないという。


「ぼ、ぼぼぼ、僕は、彼女と、はぁ……はぁ……!? 2人っきり――」「違う違うぅ、勇者部の全員がいるってぇ。抜け駆けはぁ、ダメっしょー?」へへーへ。

 その完全なる大島よ、お前はネタ抜きでネタだなぁ? 真田さなだよ~。

 震える。

 当然だがそのとき姫さんが同行する訳もなく、それでおおよそハーレムが来るんだわ。後ろから落ちる影は、5体。


 前は死神、心底震える。そのピンクの園が迫り来る。昨日はお愉しみでしたね? うんまぁ――、ベッドごと壊されない事を願うんだな、その人格がさ。命懸けでたたせてみせてよ。


「あぁ~、更に更に上定くん殿はご立派よな~、しかも死にたくないって気持ちやーーっと捨てれたんだなぁ?」「え、な、何言ってキサマ、これ以上ヘンなことを言」「だってもうパレードしちゃったし~っ? 勇者サマが真面目だしぃ。これ、もう勇者の為なら命捨てるしかないよなぁ? 例え八つ裂きとか、あとそうだ例え丸呑みでもォ――」

 恐怖に震えている、そこそこのスキルだしパスしちゃったんだよな、コイツ。だからこその勇者一行よ、俺よりかは遥か上でも中途半端に強いんだわ。

 旅で一番危ないんよ。


「し、死にたくない、死にたくない……」

「弱いオレは仲間達と待ってるわー、それで死んだらさ? 仲良く隣に葬ってやるよ~、準備しとくぅ~」

 過呼吸。過呼吸だ。空気を求める、勿論だが勇者の隣で永眠だな――。阿佐ヶ谷とラブのマークしてから昇天させる俺を見てさ、オマエの人生はもう決まったんだよ、上定くん殿よぉ?

 そうして周りから這い寄ってくる、たくさんが涙ぐんでいて「そうかそうか兄ちゃん、ありがとうなぁ――」



 姫のライブ終わり、熱い熱気に包まれて、彼らにとっては最早ヤツは既に英雄。それは栄光の片棒を担ぐ存在。貴族とは……戦う物と定義されている。


「あ、あの、僕はまだ決まった訳じゃ」「何を言うんだ、もう貴族サマなんだろぅっ? だから贅沢なんだ、ホーント普段から偉そうだがよぉ~、魔物狩りだけは義務で当然だからなぁ」

「めっちゃ危ないんだよ、じゃあ俺らはよう、しっかり税金納めるからさ! 頼んだぜ!」「なんかあれば言えよー、建てれるもんなら王宮の中でだって建ててやる!」

「おめえのカオは忘れねえよ……っ、俺が隣町にもばら撒いといたわ。そいつらも更に隣町に行ったって! だから全員で守ってやるんよ、ナァ!?」

 おぅよッ!!



 親身な顔で言われて顔がまたほぉら……、求愛の顔になる。それで結構可愛い感じの近衛騎士団とかもいるんだが誰もアイツを触らない、助けようともしない。

 男の群れに連れてかれるんだわ、汗臭い中、ライブ終わりのオタクとかいう限界突破どもに胴上げされるのを嫌がってて。脇はしっかりと固められてて。

 俺の隣には美少女が、「あぁあの彼ですがね……、正直しっかりとしてもらわねば困る。スキルはそこそこでもあれでは……、ナァ遊んでいるつもりかと、この期に及んでなんだ――」


 かなり苦言を呈されているし。その美少女たる団長はどこへ言う訳でもなく、まぁ同郷だからと思ってんだろうけどさ。


「アイツ、そんな駄目なのかい」「私は好かん、それだけは確かだな――」

「だ、大体だなぁ……、ヤツはずっと練習もロクにしないんだ。なんとか言ってやらないのか、お前たちの仲間なのだろう? 我らも本気なんだぞ、異世界から呼んだとはいえ少し」

 結構な美人さんだなと、聞いてやると思った以上に可愛い顔もするんだ、ただその横に来た同じようなイケメンにはすぐに、「何をしているのか?」


「あ、あぁ……っ、あの――申し訳ありません、庶民相手に駄弁なぞとっ!」「いや、構わないよ。ただワタシも勇者の一行だ、口だけは慎んでほしいんだぞ?」

 厳しい目。

 とろけるメスの目で返す。

 俺とは面識がほぼないので挨拶もしないが、貴族サマだしな。誰にも冷たい雰囲気はイメージそのままだ、ただアレが取り囲んでいるというから今や至福の時だろう。イケメンなんよ。


 その総勢5人、国でも生え抜きだろうな。奴以外は全員ひざまずいて情熱的な。



「では勇者サマ……、我ら勇者の盾であり、勇者一行。全てを懸けてお守りさせて頂きます!」「おほぉオ!?」

 おっさんみたいなオホ声だすなよ。


 それでおみ足を磨くのがな……重そうなんよな、なんかクの字に曲がった足が、豚足、ギガ・ケンタッキー外れ部位、重税を取り過ぎた三角定規。そう、重量級。

 その下界の汚れを、それをしっかり優しく綺麗にして。しっかしイケメン部隊だなぁ……、まず間違いなくメン接があったろうおカオが、それでも優雅な所作がヤバいよ。爽やか系から熱血系、それに冷淡な感じのイケメンでさえ彼らはなんの憂いもなくひざまずき、熱い視線を勇者たちへと向けてる。


 いや、幸せだとは聞いてたけどさ……本気なのかよ羨ましい。

 勝ち組。そうして無事に無難に狙い撃ちで、阿佐ヶ谷はその空を舞い終わったアレをひっしりと抱き、かくかくと動くイケメンとともに城へと帰っていったんだ。

 やったぜ☆



「あぁ平和がやって来たな……、誰も傷つかないんだ」

 少し夜が迫った空気につぶやく。

 えとなと手を握るとすごく恥ずかしそうだが可愛いんだわ、いやホント。夕の茜色と星空、それにも負けない金色の髪が少し冷たい空気に映える。

 初手で彼女だけが弾かれてしまった、クラスの奴ら全員が何か……半笑いだった。勇者に頭ぽんぽんされちまったらしゃーねぇわなぁ?


 よし帰って良いぞーって号令出してクラスメイトの下校を促す俺は。


「じゃああいつに任せようぜ、スキルも強いしラッキーだ」「まぁそうだけどなんかさぁ? 可哀そうよね、上定くんカオだけずーっと死にそうだよねー?」

「まぁ良いでしょ。私も城内に残りたかったなー、きっと幸せだよぉ~」

 笑いながら人混みへと。

 あ、あのさ……、それでさ? ともっちお願いします。明日からもきっとね……?

 目線で。あぁ良いよ、任せろってカヌヤ。俺らであのお姫様へさ、この特訓の成果を見せてやろうぜ!と。


 彼女を目立たせる、俺はそれで良いと思う。まぁ……最終段階は近いしなぁ。

「俺は結構この生活に満足してるから」

 その言葉にほくそ笑み。


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