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「上から来るぞ――」
さっと並び直すイケメンたちが焦げた天パで拝謁して待つ、待てば静まるんだよ。だってそいつらは勇者の一行、今のクラス女子たちは勇者部、「それで本命の女子はまだ……こっからなんだよなぁ」
焚かれるスモークが……、空が闇で覆われた、あの合唱が始まるのだ。
そこに用意されたのはちゃちい簡易の着替え室みたいな、それでなぜ、指から出てくるのか分からないよ。硬い硬い門を開くその、女とは思えぬ演出の指10本。それが堂々と門をこじ開けゆーっくりと天地へと、闇から見えるのはピンク・リューク。
デスノート、リューク死神をピンクに変えた存在。
そうしてそこから覗くは阿佐ヶ谷姉妹の姉。むしりたての鳥の羽を突き刺して。
シワがもう既に始まっている、16歳というのはあまりにも無理筋過ぎて。その瞳は輪廻転生をすでに見据えているのか、阿佐ヶ谷リュークが転生しまかり通る。大きい方だ、間違いない。筋骨のある渡辺が。
「満を持しての勇者さまっ、登・場・でーーす!」
口をへの字にしてシワが寄る、175センチ体重51キロ。モノホンよりも遥かに大きい。
大歓声を受けて出てきたのは阿佐ヶ谷、アネ。ヘルメットヘアーをもってビキニアーマーを備えて纏い、仕上がった筋肉を見せるんだ、だがおしとやかで恥を忍ぶカノジョは腹筋だけだ。その腕や脚やおシリなんかは鮮やかピンクの毛皮が守ってる、それがちゃっちぃ感じを出すけどでも高級品で。
いや……ホントこじんまりし過ぎてて、高級とはってなる感じで。メインなんて初めてだしフォーマルに行こうという意思を貫いてお焼香の感じで真剣にアゴを引いてこれでもか――とシワを寄せ「よ、よろしくお願いします、私は八島 衣津美。ゆ 勇者の八島 衣津美でございます!」
ウォオオオオオオ!? たはー、勇者って言っちゃった。顎の脂肪が波打ちいったり来たり。話し続ける、少したどたどしい、何度立っても緊張する姿は。でも目立ちたいのよ……、この美しいドレスを装い、エレガントな雰囲気を演出しているハズで。細部にはこだわりを見せるのに、趣味は至ってシンプルでかつ地味。
良いわよね、でも分かる人には分かって欲しいの。色々話す事はあって全部全部覚えて来たわ、でも……、あら? 少し空気がね。長いからかしらねぇ。
「えと――、じゃあ。しょ、正直、あの、見えないって言われますけれどね。私は頑張ってます、あの……、はい、あの……」
そうして突如として恐縮しながら剣を持ちて、よいせと重みを見せれば「でやぁあああ!」
えー、昨日の昼頃、50台と思しき女性が長い長い刃物を持ち、暴れたとの事です。山の中で突然向こうから走って来て、薄暗い中でしたが刃渡りは90センチもの、歯ぐきが見える程で眼鏡がズレてて、その顔は本気に満ち溢れおり、弱そうだったけどあり得ない位に場違いで怖かったと。
警察では腰を抜かしてもう戻らない、PTSDと診断され魘されている目撃者から更なる事情を――。
がつぅう!
いやいや、本気で地鳴りがすごいんよ。いやいやいや、スキル一つで世界が変わるって
「うわ、わぁあああ!?」
飛んでくんだ、キャッチ用の魔法使いさんたちが大慌てで拾って来るから。世界崩壊しそうなんだわよ。
あらぁ……? 私何か、やっちゃいましたかー?
見ろよ、これがほんとのやっちゃいましたか、だぜ。
眼鏡上げて、素でぶっ飛ばした、阿佐ヶ谷アネの一撃で全てをだ。もう誰か、いや、なんか、はぁ……はぁ……もう良い、ララてぃあ歌え……、しゃれならんっ――。
城の奴らが首を振っている、手加減して欲しかったのに。クレーターの空いた城門を。
これで揃ったな。彼女らがほぼ全員なんだわな、城に残してもらえたうちのクラスの全部。内訳はこの、阿佐ヶ谷勇者と、勇者部を名乗る森三とがんばれるーにゃと少し。あとは。
「そうして私の大事な大事な人、私とこの世界に来てくださった希望です、上定くんなのーっ!」
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーー!
いきなりのご使命に非常にうろたえるイケメン君、良い加減なれろっての……。
民衆たちが色めきたち、その唯一残ったイケメンは。
「わ、私も諦めてませんからーっ、勇者部だって頑張ってるんだもん」「そうよそうよ、私なんて小学3年生から見てたのよ!」「上定くんはぁ……癒しなの……ぉッ、誰かの物なんかじゃないからっ」
ねーーーッ?
がんばれるーにゃが続く、森三の者がパワフルに迫る。大汗が流れるイケメン様は。
ち、ちがぅぅ……。「いやー……、これもう。秒読みかなーっ?」でも争ってるじゃねえか。誰応援するぅ? 誰だ誰だ、誰が良いかな、やっぱ似合いのカップルが良いよなぁ?
全部乗せはどうだ。
微笑ましく、何かもう分かった気でいる民衆は。いや、それは油が多すぎて俺でも胃もたれしそうになったわ――でも関係ねえわ、良かった。でもね、アイツはその民衆の目にさらされて囲われて大汗を流してるよ、公認。
すでに賭けの倍率は決まっていてだよ、ナイスバディの森三かファッショナブルながんばれるーにゃか、細身でお姉さん(同年代)の阿佐ヶ谷か。
奴にはそれしかないから。そうだ、それしかもう……。
「なぁ、それで楽しいかよ上定くん? 城の生活はよぉ?」
―――――「あ、あぁ? 当たり前だろう? 毎日が信じられない程ワンダフルでスイートさァ!」
ルー大柴でも飼い始めた? 心のリトルビッグパーポーか、異世界だもんなー。
「いや、でも見れば見るたびに、なんか……」く、くくく。
憔悴してんだよね、いやマジで。




