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「開・門!」



 重厚なる地響きが。


 町を揺るがすような。幾重にも張り巡らされた防御魔法が解除されていく、それは普通じゃないんだ、熱波にも氷河ともとらえられる四期聖しきせいの威圧。この肌へ耳へ、町中の隅々にまで。

 吹き抜けて。


 大通りや大きなギルドはもちろん、大衆酒場をも駆け抜けては小さく入り組んだ裏路地のわずかな花を揺らし、その暗部にまでも、一気に噴き出す感覚が。

 それは正に王の息吹。誰もが振り向きて。

 そうして集まった者達が固唾を飲むのを前にし、扉を通りゆっくりと橋を渡ってくる。先頭のヨロイたちが……、そこからドンドンと華が出て行き、馬車が始まり華々しいメンバーが。


「姫様……、姫様だぞ」「王子さまもいる」

 抜けるような青空の下、それは豪華な鎧をまといて人外をも駆って堂々と紋章を掲げた、その穂先で太陽を突き刺し。


「それであれが勇者サマたちか――」「勇者サマーー、この頃は……っ、お加減はどうですかーーっ!?」「私はあなたを待っていました、私は……私はぁああアア!?」

 言葉ももうただ投げて溢れるような、必死に叫ぶ街の連中。この時ばかりは上層下層など関係なく人が囲むんだ。今の人々の希望の全てがアレらなのだから。

 このモンスターが跋扈して魑魅魍魎たる大地で、暗黒迫る世界にはそうしてやはり光るアイツがいたんだ。


「任せてくれよ、国民たちぃ!」

 きゃあーーーーーーーア!? ひと際高い女性たちの声。浴びる程の羨望の瞳が、もはや学校などというレベルにない。見目麗しい実力者の男として、しかもそれは異世界からの転移者であり生え抜きであって。以前の世界でも国が指定していた血筋という。

 白き鎧、風切る羽の兜、一級品を太陽に煌めかせて。

 その姿を一目見ようと女子達が前へと群がるから、ひしめくから。


「あぁ、かなり良いスキルもらったんだっけかぁ――」

 人々に圧され、転がされかけて俺はため息をつくしかない。ウソも真実も今や異世界な事実なんだわ、貴族の男たちをも引き連れるよう先頭をゆく姿は圧巻。

 それらは正に勇壮であり勇姿で。しゃくだが他のもイケメン揃いだしなぁ……、幾つの光を生まれながらに与えられたのかと。勇者の一行。その中にいても遜色ない美形はすごいだろうなって……この、女たちが色っぽい声を上げているのを。


 元は同じクラスだったがもう道は別たれてしまって。一応俺らも群衆の最前列だが、46名の異世界人、その中でも選ばれし者たちは今も城から出てくる。



「ではね……、さぁこちらへ」

 お姫様が堂々と高らかなる頂上へと、まずは立ったんだ、陽光を反射するどんな繊維よりも綺麗な銀色。与えられた赤きカーペットの上、そうして我がものと呼び寄せて見せて「さぁ、見なさい? 彼らが魔王を倒す者たちのカオ、いかがです――?」

 不敵な笑み、素顔で国民へと話しかける随一の美少女が。そうしてその大きな肖像画も一段格上だよ、綺麗で華やかなる額縁と装飾と、背景までしっかりと描かれてワイドだ。

 熱く熱く、国民へと団結を促すから。パブリックビューイング。


「もう名乗る必要もありませんわねぇ? 私の名前はローレタナ」

 威圧、威厳。肩書をなぞっていくが、それはそれほど王家の中では高くなくとも彼女の言葉一つで全てが熱狂し、そうして指一本で静まり返らせる「そうしてまずは1つ目、今日は顔見せですわよ、その次こそはダンジョンへ――。そうですわよ、2つ目。この王家の勇者たちは初のダンジョン退治へと向かいますので――!」


 おぉぉおおオオオオオオオ!?


 事前の噂通りだが鼻息荒い民衆は。兄貴たちがよく話してたしなと、あの人らの情報はマジだから。


「しかしこれはまだ準備段階ですわよ? ここから確実に、そうして絶対的に増えて行きますわ、約束します。では4つ目は、そうして5つ目はね」その指が折られる、それこそが希望。王家が紡ぐ伝説の章であり――そうして可愛く手を振るので「おぅ、かぬや……」隠れて手を振っている美少女が一人、な。3段目以降の影に隠れているがまだギリギリ城内で残れている少女が笑うから。

 俺はどうしようか迷うけど、隠れて。



「ではでは、少し気が早いですがね? 我が王家が放つ勇者のご一行さまたちを見せましょう、お願いしますわ」

「はい、ローレタナさま。では行こうぜお前らぁ!」「ふん、見せてみようか……」「でも最低限は~? 気高くお願いしますよ――」


 髪をかきあげ走り出す、デモンストレーションだ。まずは男達が走って美少年が舞い踊るよう力を見せていく。その全てが超一級だ。間違いない、面構えが違うよ。魔力ってのはこういうのを言うんだよなと……、育ちっていうのは、異世界っていうのはこういうのだ。


 階級だよ、サラブレッドだ、それは魔術の剣技の知識の不思議の呪術の奇跡の装備の食の禁忌の権力のドラゴンたるすいを独占して継承し、凝縮した強者。決して町では見れない圧倒的な練度、色とりどりの色を見せつけ魅了し。異世界の貴族は並ではないと、そう顕示する、正に権力たりえるパワーで圧倒。

 すると俺らを見つけてしまい。



「お~、久しいねぇ……フフヒ。ともおクンは? 確か名前はそうだったよなぁ? でもいけないな……、何せもう違いすぎてて分からないよ、ただ君がどのような生物だったかは覚えている程度か」

「上定……」変わってないなと、性格がな。あの慇懃も過ぎたれば無礼者がむしろ今や。その黄金をかきあげて目を細め。


「惨め――。いやはやァ……この異世界に来てまで御苦労だよねぇ、そんな。全くなんせソレでいてスキルもあれだろう? でもおかしいなぁ……アレ? 僕は絶対キミには異世界が向いてると思ってたよ、だってなんだっけかなぁ……? あぁー……キミの趣味はぁ……」

 なぁ?

「ゲームだよ。アニメもな」


「ゲームぅ? アニメぇ? ハハハッ――、それってココだよなぁ? あれあれアレ~~~ぇ? お前みたいな奴がさぁ……それで強くなれなくてどーするよ、僕は自然とここにいるようだが……? なーんにも興味のない僕がなぁ、どうしようか……?」

 ナァ? どうしよう。

 変わってやりたいよな。

 力があれば、だが?



 城の辺境での草むしりがせいぜいらしいと聞いたと、どこへ行ってもB級なんだなぁって笑うんだ。いや、今はD級だが。

 そうだよゲームみたいな世界で、ゲームの主人公が持つみたいな名前のスキル持ってて、それでも俺は切り開く力を持たないからな。


 すると手早く彼女を見つめると狩人の目をして俺を押しのけ「えとなさん、心配していたんだ……。私は信じられないんだ、アナタはこちらへ来るべきなのに。そんなD級の奴と一緒にいたら価値が落ちるだろう、何せキミはA級の少女だぞ――」

 その手をでも、俺が押しのけ返すから、「オィ、悪いけど、俺の仲間なんだよ」

「フン――、なんだと?」

 じりじりとする視線、そうしてそれでも。


「でもさぁ、いつ見ても現実を思い知らせて下さるよな……」周りからの声が。そこに急いで走っていったのは甲冑で固めたガッチリしてる少女達だったんだ。ヤメろと、首を振ったんだ、それにほくそ笑む口元が「あぁ……無理だって、諦めろって事」「クラスメイトでもスキルだってな……、  はァ……。 やっぱそうだったわ、それでそんな体で強いわけねえんだわ」

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