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「異世界の朝は早い……」
クラスメイトほぼ全員と落ち合い、今からの仕事は全員でにらみ合う事、朝5時半からそのモンスターたちと学生が。
いや、当然ですやん、城の防壁のその『防』ってのは何から防いで守ってんのかと。正直相手が退いてくれないとどうにもならんのだ、あのね? 余白なんてないのよ。一歩でも出たら即アウト、だからクラスメイトたちで睨み倒すの、約30人がガチで。
「きゅうきゅう!」
目の前でマフ太郎が楽しそうに地面を泳いでく。なんとも可愛らしい姿だ。あれはきっと魔物だけれども唯一オタケのお手で懐いたのがあれだ。
そうしてお日様が登っていく……。
鼻ちょうちんのマフ。城の外で働く下層民の俺らはそれしかない、汗をかき……、それでなんとかガン垂れで引き下がらせようと、もう10時だ、鐘がなる。魔物も暇なんだろうな……、あと意地なんだろう。
防壁からニンゲン出たのにこいつら仕事してねえでやんのーー!?なんて、仲間内で言われるからやってんのかなって。コッチはな、本気でここしかねえんよ。いや分かってるって、お前らもそうだわな。うん――、その隠してる鋭すぎる歯を見てうなずく心の中。
木々が深い。
城から一歩出ると壮大なる森があってだ、これ程に恐怖させられる世界はないんだ。だってこの中じゃビッグフットなんて中の下なんだぞ、いや下の上か? なんでビッグフットかって言えば、そういうまだ未確認で訳分からん敵が普通にいるって事。
その小さい影が走っただけで十分なんだよ、囲われた深い深い、闇より深い中を見つめるなんざ正気になれない。異世界には闇が無数にあるんだ、深淵ってお前、何を指してんのか分かってるか――。
「戦いたくない、戦いたくない戦いたくない」
願う。その俺らの後ろには正規の畑があって普通の人間たちが耕しているな、城塞ニンゲンなんて言われる。そうだよ、その正気じゃない世界と暮らして来た奴らだし俺らより裕福な下民で。それより前にいる――前線に立たされるのが俺であり。
「――ふぐぅ!?」全員に緊張が走った、異世界の森の鳴き声は激しくて切ない。
人の言葉がこれほど響くとは思うまい。
笑い声。狂ったような。実際毎日が死の叫びだ、魔物同士での戦いが響く、そこは終始泣いているし時には怒りが聞こえ、良ければ情愛たっぷりの命乞いが聞こえ続ける森。
すると、やっと撤退、もう11時で。
そこから働かされるが時間がないから急がされて俺は黒パンをくわえ。
「あんたらそれでも恵まれてんだ、だからもっと精進しなぁ――ッ」
チッ……、るっせぇなぁ。
その偉そうなイカツイおばはん相手にマフ太郎が抗議のお手々たたきだ。もっふもふだ、異世界なのでなんとも言えないが、ゴマフアザラシの幼生体に見える。
フカフカの白の毛皮が覆い隠して、ずん胴、2本の足だかヒレだがでヨチヨチしてて。うんしょうんしょとお腹を引きずる姿。
「小さーーい、可愛いねぇ、マフ太郎~」「お手々も小さいしねー、ゴマ子はお目々だけは大きいのにねぇ?」
可愛いーーーぃ☆
この農作業の癒しだ、数少ない異世界での癒し。
しかし特権階級たる俺くんはだ、その小さいのを禁止して、まずは俺が抱っこしてだ、「はぁい、お前らぁ……? じゃあお仕事の時間ですよー、しーっかりやろうぜお前らぁア!」
ナデナデと。
女の子たちの怒りのカオが心地よい。やーー、良いな。その顔は小さく眼は大きい、常に少し潤んでるし可愛いのポテンシャルは1番なんだわ、正直アザラシがここで止まったなら飼育数が爆伸びするだろう力。
鼻ちょうちんを吹くお馬鹿顔も。
そうして当然ヒレっぽいがお手々が可愛いんだ、何か……絶対デブになるのに、餌付けしてしまう。ぽっちゃりの誘惑。
あとマロ眉。それと似ているけど決して道が交わらないオバハンが俺を叩きながら、イタイ「ほらほらしっかり働けー? 見ててやるよ。アンタらの身元は保証してやってんだよ、ありがたいと思いなぁ!」
うっす。異世界行ってもオバハンはオバハン。しゃがれた声と一切譲歩しない雰囲気、顔のシワ。
彼女はここらを取り仕切ってるギルドであり城へしっかりとココらで仕事させる認可を貰い、不平を言っても一切取り扱ってくれない、公平とか公正とか一切ない、それで警官もどきに行くと逆にしばかれる、まぁざっくり言うとヤクザだわ。
大阪がヒョウなら異世界は羽が生えたサメ。もはや可愛いネコ科を装う気すらないと。
カノジョへ上がりを上げて手間賃をいただくし、イカツイのが時折出入りするし。よっしょと、でも気にしないんだ。この手入れも何もされてない場所でもそういうのが必要なんだわなぁ……。
「ぅっし――、ぅっし――、でも俺らが恵まれてる、ねぇ」「確かあれだろう、唯一の再抽選枠らしいな」
「あぁあれだ? 流れものにびっくりした神様がなんか、とりあえず新しいのササっとつけちゃうらしいな。俺ら聖典外とかいう生き物らしい」
「でもでも、それでももうちょっとよ~、実用的なの用意してくれませんかねぇ……?」なぁー? そうだよな、マフ太郎~?
「オィ、今女神さまに文句言ったかい――? うちらの女神さまは臨機応変にが難しいからねぇ、仕方ないんだよォ!」
いや、それ認めて良いのか。全知全能「臨機応変は不可」、あー……、聖典にも書いてあるわー、()じゃなかったわぁ……。作業の準備してる間に構って欲しいのかマフ太郎が白いお腹を見せたが、体重に逆らえず仰向けになるから。ほーら汚れるだろー。
土を払ってやって。まだ遊べという。
「正直でも、俺らどんだけ容量なかったんだろな~、その分だけ不遇が少ないって言われてるけどさぁ……」
腰イタイイタイなのですー。よっせと。すると典外孤独と。誰かが言った、上手い事言ったなと。
スキルは目いっぱい突っ込まれてるけど限界はあるな。魔力も低いし耐久性は低いし、頭は高度に見えても実現する方法を持たないし。
ただ少しだけ体の発達は良くてだ、栄養価のある物を食べて来てて素質は十分、身長も高めで慣れるか慣れないかだけが問題だったんだわ。
「アイツらさぁ、ゲーム感覚だと早いよなー……」「あぁ、ちょっと魔法を面白く使うってなったらあっという間だったんよ」
フフフ、それでだよ? なぁ諸君、その現代人の優位性でも使えたのは何だと思う。実はでも俺達はエースだったりするんだ、さぁさぁ、ホントの魔法のお時間だぜ、掘れるなよ?




