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「はへー……、確かにAクラス以上だけが残ってるか、やっぱすんごいな~?」
あっという間に一体をほふったんだ。良いスキルなのだろう、恐らくは。なんせ一人で倒せてるし流石は今の今まで囲われていただけはあるな。実物の上位スキラーを見れるのは滅多ないが、これがあの選抜組とされた存在感よ。
「でもね、これじゃダメだ――」
一人息を吐く。まぁぁ……、確かにね、それは剣士としてはどうだろうかと。だって細い腕と細い体。あと少しだけ大きすぎるかもしれないその胸のたわわが。80中盤あると見てる。一閃、たわんで、その直後にスキルにものを言わせての2匹をほふり倒し。
「ふぅ――。よっしーぃ、これで良いねー、片付いた。大丈夫だったかなー?」
スポティッシュで快活、しかも170を超えそうなその長身から腕を差し出して。
うん、大体言いたい事は分かった。
汗をぬぐって私じゃあ行くねという屋舎陣 かぬやの、それを掴み俺は。
「いやいや、このまま行こうぜ、俺も少し仲間として付き合うよ~」
「え、でも……、君じゃ無理じゃ?」「平気へーきぃ? このくらいなら俺らでなんとかしてるし、見くびんないで欲しいなー、強く生きてんだぜぇ?」
「うそうそ、え、こんなん……、一緒でダンジョン行ってくれるんだ。ホントに命懸けだよー? 私の方はあんま助けれないと思うしぃ……」
カノジョは最上級のSは無理でもAは可能ってところ。せいぜい1人では2階層くらいかなと踏んでるよ。そこは結構深くてな……。
あと1人なら。
「じゃ、じゃあさ、他の人、いないの? あの……、それなら女の子とかー。君、嬉しいけど手伝ってくれるのは一人だけで」
その言葉にうなずくと、少し考える様子。ただ俺は急がしてだ「仕方ないさ、だって残りは全員素人でかつスキル弱者だぜ? 付き合うとは思えないな。でも君はとりあえず深い層じゃないと駄目なんだろに、強くなるんだ。じゃあ行こうか」「いや。いや、うん、そうだけどさ、あの……」
「それにあんた城へ帰らなきゃだろう? さっさと結果出さないとだぜ。なんせ無断外出で問題出るだろう、ただ俺らはあんまり良い武器ないからぁ……」
一応いつもしっかりと武器は持っているんだ、色んな犯罪や追剥が頻発するので。強力なその棍棒に眉根を上げてしまう、正直これでは……。
「それで実は俺は、本当のダンジョンの場所を知ってる。それでさぁ、君のスキルを教えてくれよ、屋舎陣さん?」
「え――!? あぁ、えと――。でも教えるなー……って。うん……。もしバレたらそこを突いて来るからって……」
目をそらしている、かなり警戒しているご様子。
まぁそうか、こんな暗がりに二人っきりで入るという。実際少しは気づいたかと。ただ実際こっちもなぁ、紳士的ではあるんだけどなとは。目的の為だし。俺は一人で気づきにくいその、アリの巣穴を大きくしたような、ひたすら暗いしモロモロの砂壁の。
上も下も脆そうなのをくぐって。
「ただ屋舎陣さん、俺は後悔しない為に言ってるんだわ。ダンジョンを知ってる俺がいないと一回目で死ぬことになるな。そこは分かるハズ、だってAクラスっつってもスキル対比12。要は12体が来たら死ぬんだよ。しかもスキルメイトっていうの……知ってるかい?」
戸惑う少女を前にしても攻めれるぜ、俺は結構前と違って普通にしゃべれるんだよなー。キマり顔の紳士で話す俺さんは。それでもやはり聞き出せないか、どうしてもそのスキルを聞く必要があるがな。
ただ見ていただけでは恐らく近接スキルだというのだけは分かるぜ。あと妙に剣で強い部分のが。
一番最初だけど、それだけ聞ければこの子はもらったも同然だ。そうだ、あの城から少しでもな。
じゃあもう一押しで、爽快にそのゴブリンを切り裂きながらドアを開け放つ俺さん。正直すんごい臭いで目を剥くギャルは、全くこういうの知らないんだろうなってのも……。
「さぁ、入るぞ。しかもこのダンジョンは隠れた上級なんだぜ――」
息を飲み、それでも死体耐性はあるらしいギャルは、ギャルっぽく強気で「いやー……、うーーん……。そこも分からないんよねー? 実は。教えてもらってないよ。だから当面は強くなるって事でさー?」
仕方なく入って来る感じで剣を抜き。まぁとりあえず、まずは俺の方は見てるだけでも良いかと。自然な説得が大事だ。ただしだ。
「すごいな……、本当に良いスキルを持ってるんだ」
切り裂く、相手が複数体吹き飛ぶ、これを繰り返すんだ。繰り返せる。なんかでも魔法使いのような気もするんだがなぁ……?
「そう、やっぱスキルだよねー……? でも反動がすんごいんよ……、はぁ……はぁ……こいつ、言う事ぜんっぜん聞かないから、私これをまずなんとかしないとなのよ」
でぃ、でやぁああ!
それはとりあえず不可能だと思うぞ。
何故ならスキル偏重だからだよ、そういうキメラを作ろうとしているんだよな。
この魔法とか神が溢れる世界の人間だってさ、いくらなんでも練習位はするさ。それは両方なんだよ魔と剣の練習。
彼ら曰く正しき魔を導くには健全な肉体あり、また、正しき剣を知るにはまずは魔法を知るべし。
でもだよ……? ここに呼ばれて来た俺らは騎士さまみたいに幼少期から剣を振ってないし。
「うぐぅ!? きっつぅ――」
そうなると特化でスキルを使うという、この使用のみにフォーカスされるんだ。だから好都合な事にそれはあっという間に、彼女の腕が限界に来てしまって。剣がこぼれて……。
「はぁ……はぁ……、いや――」非常に悔しそうな彼女は、まだたった30分でその瞳は希望を失い「もう、逃げようか? ね?」
正直頑張って背伸びすればまだそこに月の光が見える、でもその手は既にボロボロで。スキルは使い方にもよるがこれでは確かにまぁ難しいだろうなと。
あと何気に弱くしておいてくれてありがとう――。
「いーや、まだ頑張ろうぜぇ? もう少しなら俺が連れてってやれるよ。よしよし、じゃあ行くぞ――」
むしろ俺の出番だな。こんな素人レベルで終わるのか、限界超えるんだろと言うとムッとするから。ついてくるし。
「でも帰る道がさ……、アンタいるしこっちは遠慮してんの、大体本気で最後まで来る気なのぉ?」
でも彼は入って行くから、すくんだ。
だってこの暗い中で……。
現代でだってただの歌舞伎町のその裏路地に入るのさえ怖がるのにさ。
それでここはダンジョンなんだよ、そうして魔物の巣窟だ。それって人を殺すための穴だと言ってるんだよ……? そこはヤクザと半グレの事務所が3件建ってるの、その光のない路地に匹敵。いや――。
「はぁ……はぁ……」この臭い……、さらに変容したんだって。恐ろしい形相と嗅いだ事ない殺意、一段上がったような異臭。
奥に行けば行くほどに。
敵が牙をむきだしてきて。その大地をも異変が走ってる、デコボコで、汚く汁が垂れてる穴からは異様な黒い虫が湧いて来てるし、それはなぜこんなに異様に感じるか、だってソレは巨大化するからだ。そういう種がいるの。
時には共食いで、時にはスライムに寄生されて膨れ上がって、またふとすれば意味も分からずに。自分よりも膨れあがり2メートルを超えてドンドンと。
城内のお庭で見せてもらった時は、まだ。でも自分は良いスキルを持っているからなんだ。
なんだというのか。
剣でモンスターは殺せるよ、でも軽いよ。相手はどんな卑怯な事でもしてくるぞ、末路もヒトと同じとは思えない。
しかも見知らぬ男の子だもん。脂汗が広がる……、逃げて良い。逃げなきゃだよ――。




