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 そこの建物はまるで堂々としていて変な臭いもなく普通でただただ軋む木の音、結構響くんだよなぁ……。それでだ、剣をぶら下げたのに挨拶して2階でひと際大きな部屋へとノックして入り。



「おぅ来たかい……?」「あぁうん、オバサン。あぁいや、盟盤の娯楽者めいばんのごらくしゃのオバサン、どうですかい?」

 じゃらっと、まずは少ないが俺は袋を差し出して「んー、十分さね。頭に言っとくよ、上々だトモオ」「うっす」

 貨幣はすごく珍しい。何せその庇護者たる国が一夜にして消える場合があるから。

 だから魔石の量り売りが主流なのだが、何故かこのババァは貨幣が好きなんよな。


「これはドゥテルテ銅貨だ、それでぇ? コッチは……」

 コインを木の机に並べる音。

 静かな場所、コツリ――コツリと、こういう所ほど静かなんよな。むしろ。

 人が寄り付かない。

 なんせここはこの王都たる場所で第一党を誇る連中の根城だからだ。


 野良犬であれ貴族であれ、少なくともギルドを掲げれば良い。皆もが言うな、その口なき歯は斬れるぞ、されど――。そう言われる程にギルドは万能だ、特に一般のがドラゴンにしろヴァンパイアにしろその他ニクを持つ2足の生物を狩れる――大量に――その武器を持つことで王侯貴族でさえ危うい世界観。

 それでも妥協する。



 しかしここだけは確固たる意志を持ちて掲げる者はいない。『空白白書』。

 ニヤリと笑ったんだ、丁重にまとった白の分厚い手袋を直して、コインを再度見やるその【オバサン】と、そう自らを呼ばせる不可思議な女。

 そう、それは意志がないかのように無邪気な。

「……」震える程の。


 あの日、王がガチャを引いたので当然その領分は全て王族預かりとなる。ただしだ、王様ではない、王族。それにも色々あってだ。その隙を突いてとあるコサインスに取り入ったんだ、そうして命名したのがコサインス・マヨネーズだった。

 俺らから先んじてその命名権だけを買ったんだわ、一人に女あてがって無垢な俺らから情報を得るのが素早かったのなんの。


 それでこれが一波乱でありからめ手となる触手となりて。今も城内でその傘下として命名権だけを垂れ流しているんだよ。


 産地もここだ、王城であり。嫌味の様にたなびく品格のある赤と黄の、市場へ流布される包みの布を苦々しく見つめているだろうよ。

 しかも挙句に記念発行されたのがコサマヨン通貨であり、その辺境の王の血が問題となる。なんせな、そこに異世界記念コインと同じ紋章を刻みやがった。

 銀色のそれは掲げられて、ただの、ほんのただの異世界のいしが今や「あぁ、ぉら……、良~い気概を感じる光だよ、名前とは命だよね、そうだよ……」

 命だよな。



 名前を変えた、あの時に決断した彼女の、その姿形は変わったろうか。その光を。

 意思を見せるコサマヨン、今の名前だ。何世代も紡いだ名も今は。見透かすように笑ったのは。



 それでだよ……、問い詰められたら俺らを盾にしやがったんだよな。

 バカで何も分からない異世界人だからしょうがないと、そう言って王の間で堂々と。

 事なきを得たが。抜け目のないババァよ全く。


「フヒヒヒ、良い貸しになった――。あの頃から理解してたねぇ、お前は。腐れ縁でも縁は縁さね」

 でもそんなにすごそうには見えないんだよな、兄貴が慕ってること以外は。少しのコサージュが入った服と、シュッとした黒の全貌。痩せた姿。白髪と赤髪が混じるその髪を。育ちが良いのか水を飲む時ですらしっかりと髪の毛を押さえる様子は、こんな所にいなけりゃまともなマダムに見えたろうか。

 でも彼女の名前は知らないんだ、この啖呵を切ることで成り立つ世界でも。全く偽名すらも。



「あぁ、あの、それで前のオバハ……、お姉さまもありがとうございます、盟盤の」「ん? なんの事だい」「いや、おれらの農園の視察に来た。あれ確か隣の第3区の、その3枚目か4枚目ですよね? 何気にパイプになるなって」

 それに薄ら笑う。この世界は基本が紹介状文化だよ、一つ、たった一通の手紙で全てが目まぐるしく変わる。マイナンバーってのは他人が書くんだわな。

 それでもし一つでも区画が変わっただけでも様子が全然違うから。だからああいうちょっとした事で知り合いになれるのは良い事なのだ、この最大手のヤクザをバックにしてても。


 大きくなるんだよ――。コインを空へとかざして、とりあえず数えている間。町並みを見やる俺。

 コサマヨン。マヨネーズの発明は正に革命的で……、味気ない食卓を一変させてくれて、そのおかげで町からはブタが減ったな。

 豚って汚いし食用には良いけど街中でのさばらしてると危ないんよな……、害悪だ、それで今はニワトリが飛躍的に増えて良好。


 この街は――。


 この場所へ立つといつも問われている気がするんだ。敵を、味方を。人々の生きるを横から切り取るよう見えるガラス窓の外。

 そうして俺は飾られた、この上なく華奢で布をハネのように広げてある綺麗な鎧をなんとなく見ている。すると思い出したように青臭い、「それで……、えとなは元気かい?」

「あぁ、うん。変わりないよオバちゃん」「欲しいかい? でも、だけどあの子はついて来れるのか」

 その声に頭をかく。



 外を出たら、ぐずつき始めていた空。見送る窓から。

 きっと……、問題を起こすだろうねぇ。

 大きくなるんだよ。



「あーー、わっすれてたァ……」

 雨の中を行く、全てかき消す程の仕打ち、あぁーーぁ、きっと雨漏りだわぁ。

 それで雨に降られれば服をほったらかしてワラの中へ飛び込む。何人もが走って帰ってきてて、寒いけど彼女の属性でなんとかしている。とりあえず寝っ転がってるだけだな。

 あーーわりぃ! 浸水始まったわ属性くれないかよ、ってうわぁあ!?

 きゃあああ!? 見ないでーーぇ!?

 ぐえぇええーー。

 ナイスエロース。ふと神の名を叫びたくなるな、削り取られてしまったお家が。貧乏なその長屋とも言えないようなワラの家の群れが飛ぶ。やっぱり窓はこだわりたいね、下からは空がとても高く見えるよ。数少ないブラをしてパンツが眩しくて魔法なのか変な光が射す。白の希望。



「ふぅぅ……、見ましたね?」「……」

 私は、貝になるますです。

「どうだったですか?」「可愛かったわ」

 ぷいっと向こうを向くから。少しそのふわっとした黄金の髪の毛が広がる、湿気を気にし、背後で服を羽織る音。雨漏りの心配なくなったな。うん、しっかり直さなきゃねぇ……。フフフ。



 やがて玄関から入る幽玄なる地平と虹が。雨上がり、仕事が面倒になったと釣りをし始める奴らの声。

 ここは朝でも昼でも人口密度が高い、一度捕まれば近所の噂話の餌食だし。町で商売やっててもテレビがある訳じゃないしネットもない、その分だけ時間という概念が薄いんだよな。


 それなのに活況で、なんとなく過ぎていく。大道芸なんかが大流行りだがよく日本のをやってくれと頼まれたっけか。だから独楽コマを教えておいたわ、2人でしり取りしてて。さぁ、雨上がりは干した肉が安くなるぞ。

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