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「基本的になんだがな? この世界の魚釣りはかなり浅いんだわ。何せ糸は貴重、っつうかもう自作でさぁ? そこらの絹糸をとかだし、それが切れたら終わりだからあんま工夫をこらせないんよ。正直でも……勿体ないんよな~~、やろうと思えば異世界の素材で幾らでも行けるんよぉ」
確かにな、重しをつけてる様子もないんだよ。竿もそこらの都合の良い木をちょっとして使う程度、そうなると素人考えでも浅いわなと。それに深くうなずき大勢の前、魚釣りが趣味の友坂は堂々熱弁して。
「この世界の貴族ってのはだ、必ず絶対モンスターを狩るのが趣味で仕事であり、領民から課せられたいわば義務だ。でも当然だが似合わない奴もいるよなぁ? あと商売人とかはそもそも趣味にしにくいし、接待ってのは難しい事になってるんだぜ。そこでだ、釣りだよ。釣り。良いかい、一緒になって命を扱うってのは結構かなり重要なんだよ、中世では鷹匠ってのが流行ってたらしい。商人も貴族もがかなりの奴らが良い鷹を求めて専属をつけてたって、そう俺はコモコモから聞いたんだ。でもここではかなり厳しいわけだわよ」
うんうん。確かにな。勝手な妄想だが鷹狩りのタカ一匹で百万とかかけてたはずだ、その代替えは幾つかあるが、もう鷹では対抗しえない相手ばかりと言えるかと思える異世界「だからひっ迫してんだ……、そこで釣りは良い。これは発展が考えられるしあと何よりスポーツ感が出るんだ、命を扱うからだ。これ以外に覇権取りそうな趣味が思いつくか? どうだ?」
命を扱うというのは確かにそうかもしれないなと。釣りのために入る森ってのは危ないけれど実際すぐそこでもやれるしギルド管理での湖もあるんだわ。全員が真剣に考えに入っているという様子を見て、友坂は口角を上げ「そうなるとココが分水嶺だぜ、爆発目前、一つのきっかけで一気に波及する確率が高いな。そうなるとだ? 今必要なものが分かるかぃ――」
ニヤリと笑うから、言って欲しそうにしてて「あー……、浮きに重しに? 竿? あとなんだ……、あぁそうルアーだっけか?」「そうだよそうッ! でも一手目はリールさァ! もしリールさえ作れれば変わるぜ、リールが良いよリールだ。なんせ糸が回収可能になるからな。これで糸の発展が考えられるし継続性が出る、この継続性こそが趣味への布石となるんだ! こういうの絶対に貴族好きになるって、ゼッタイ、俺はぜひぜひ推したいねぇ!」
もう自分で作ったのかよと、少ししょぼいが思った以上によく動くし、あとキモいのをぴらぴらさせるんだ。どうやらルアー――あの魚の形した疑似餌、あれを売って更に儲けるという算段らしい。
うなずく。広がりがあるな。簡単な1次産業の強化にもなってるし先ずはリールを擦って、ひとまず落ち着いたら改良しつつもルアーとかで更に儲けをいただく。
しっかりと2段目以降も考えられた商売だよ。確かに悪くない、が、かなり技巧を擁するという事で。
「窯、かぁ、分かったわリーダー。じゃあ俺がゴーレム技術でやってみるけど――」いや「まぁちょうど良いかもな、案としては2つとも窯が必要って事で」
最後に残ったのは俺の案と、そうして違法改造したパン焼き窯だった。
それで決戦となるんだ。結構良いのがあったけど、例えば石鹸の製造とか。むしろ俺のが残った事が驚いてるくらいだった。基本的に異世界で最も必要なものは文科系。
最後の詰めの議論で。
「俺はやっぱパン焼き釜だな。一応これも税金って聞くけどさぁ……、良いだろう?」
「俺もだ。少々はかいくぐって行きたい、せめて1年くらいはなぁ」
「俺は、陶器だな」「いや珍しいっても陶器が売れるとは限らんぜ~? なーんせスプーンあるのに使わねえから~」「そうそう、密造だからマズイってのは分かるけど、あれ週一とかでキツイだろ~?」
パンは焼くのに専用の業者を通す必要があったんだ、それは魔法が出せるこの世界でもで。色々火事が起きるのが問題とか言ってるけれど、まぁ吹っ掛けてるんだ。そういう色んな所から税金を取られている俺らは。
前の世界だと水車での粉挽きにもかなり税金があったというし、コッチじゃそれは無理で全員土魔法で処理するけども。ただコッチはコッチで、夜中になって火を外へ灯すのも金取られるんよな。
「税金の対策でさ? 1回焼いて1週間、2週間もさ? それでパンを置いといたらやっぱキツイわよ、ただでさえ不味いのに」「あぁ、うん。ただやっぱ違法が見つかったら怖いよな、とはさ――」「言うて市中引き回しだろぉ? よくパン屋のおっさんが引きずられてんが、そんな怖くねえわ~~」
それだけ税金はつらいという事。頭から罪状ぶらさげられて町中を裸足で歩かされ馬鹿にされるだけだ、いや、普通にマジクソとか投げられてて時折死ぬほどケツ殴られてるがな。それでなんでパン屋なの? それはね? よく勝手にカサマシしてて土をブッコむからだよ?
大体でも予想外に俺の案がせってるな~って。すると終盤で差が広がり始めると。
「バカだなぁ……」言って一人が声のトーンを落とす「陶器でもってご家庭で焼けるモン作ればしまいだろ? 公然としてて良いんだわ、リーダーが考えてんだよ」
ア――!? ん?いや、全然考えてなかったわ、あーそういうのもあるなぁ「その通りだ、よく気づいたな」
「何よりコッチはえとなさんがいるから火力は無料で十分のはず、各家庭で蒸し焼きまで簡単、あとまだあんまり食器を使う気配がないんだよな、この人ら」
ビジュアル的によろしくないよな。
うなずく。まだ手づかみで食ってる方達だ、パスタでも汁ものでも、だから俺らのお箸を大道芸と勘違いして銅貨投げてたくらいだし。食材を切るものはナイフのみで各自持参、会食になると本気で修羅の場と化すし。
「それで、だ? 誰か日本の陶磁器とかの作り方分かる人いるかー?」「先生確か知ってなかったか?」「うわ……あの人か。リーダー頼むわ~」
「いやいや、誰かやれや、その程度はさぁ」
「恋してた女があんなんになった気持ちがナァ……、お前に分かるかーーっ!?」
怒号。まぁ良いじゃん、そういうの。綺麗な人だよ、完全な駄目オンナだけどな。マフ太郎を撫でるよ、えとなと楽しく工芸したかったんだよ~。
喜ぶかなぁと。お前も作ってやろうなぁ?
「じゃあ私が王城で知識もらってきますね、窯って多分だけれど、空気の通しとか悪いと危なそうだし。イヤなら爆破してやりますし、まぁ――その程度なら渋らないでしょう」「ま、まぁ、アイツら日本の技術に興味津々だからな、良い感じに誤魔化せるかも」
とりあえずそれで行こうと。昼休み。俺の威厳を見せつけてこのユニオンの建造物・第一号は俺の名前がついたぜ。
やったあ!
「ふふフ――」でも気になるのはな、ずっとコッチをくすくす笑ってた事だ。なんとなく嫌な気持ちになる、むしろここで立ち向かうべき時だろうという。
未だ慣れてないしな、あの愛想笑いで俺に媚びて来る姿も。いつかまた逆になっても困るんだ、俺にはこの世界での使命があるよ。ここでハッキリさせといて。
「あぁ、あのさ。何がおかしいんだよ」
その真面目な顔に驚いた様子で、女子の一人が引いて「それ、お揃いよね。えとなもしてたわ?」「え? あ?」「やだぁ、ウソ、この子知らずに持たされてたのぉ?」
俺のこの、外套へ張ってあった小さな花牡丹っぽいの、どうやらエトナが知らない間にこさえたらしい。少し恥ずかし気に俺は頭をかいたんだ。どんだけ改造されてんだかー?って。
女子が制服とかを手直して無理にでも使うのはこのユニオンの一つの習性のようになりつつあったし、この制服はあの日からまだ引きずって。それでも変わり続け。
笑う女子の前で俺は恥ずかしくて頭をかき、「お、お疲れぇい……? どうだい、柵の調子はさ」「命令通りよ、おっけーよぉ、はぁ……はぁ……あぁーー」
腰が痛い痛いなのですー。
基本、この集落の防衛やそういった事も俺らがやらなきゃならない。しっかりとした柵を作り上げて維持する必要。そういう面でも陶器は良いハズだ。
とりあえずは少しずつでも進んでいく、いや、進ませていくんだ俺が。




