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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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王太子妃のお茶会


「……本当にその姿で王宮に行くの? ブレンダ」



 シャーロットはブレンダにそう話しかけた。



「……ふふ、そうさね。まあ心配しなくとも騒ぎは起こさないさ。……何もされない限りはね」



 ……それが心配なんじゃないの。



 シャーロットはそうは思ったが何も言わなかった。……言ったところで友人とはいえ魔女であるブレンダを止められるはずがない。



「お嬢様。そろそろお時間でございます」


「今行くわ」



 執事に呼ばれ、シャーロットは部屋を出て馬車へと乗り込む。侍女はグレーの猫の入ったゲージを持って共に乗り込み王宮の王太子妃主催のお茶会へと向かったのだった。



 ◇



「───ようこそ私のお茶会へ。オルコット公爵令嬢」



「王太子妃殿下。ご招待いただき、誠にありがとうございます」



 王宮のお茶会の開かれる庭園に案内されると、そこにはまだ他の招待客はおらずメリンダ王太子妃自らシャーロットを出迎えた。



「───私は貴女とゆっくり話がしたかったの。だから貴女だけ他の方よりも先にお招きしたのよ」


「まあ。それは光栄にございます」



 シャーロットは淑女らしく微笑みを浮かべ返事をした。

 先日友人アマリアとこの茶会の話をしていた時にシャーロットだけが指定の時間が違う事を知っていたので驚きはしなかった。



「───結局貴女と王家との縁は無くなったけれど、私はこれまで義理の妹となるはずだった貴女ときちんと向き合っていなかったわ。……聞いているとは思うけれど、初めは貴女が殿下の元婚約者候補だったと知って少し近寄り難くて」



「───昔そのようなお話が出ていたのは事実でございますが、私は公爵家の一人娘ですし形になる前に無くなった話でございます。

 そして王太子殿下は妃殿下と巡り会われ『世紀のロイヤルウェディング』を挙げられました。それはこの王国中の少女の憧れでございます。……勿論、私もその一人ですわ」



 ……これに関しては完全に事実である。公爵家側は最初から最後までそれを断っていたし、レイモンドにしても国王の命令で仕方なくこちらにアプローチしていただけ。

 そしてレイモンドとメリンダの運命の恋からの結婚というロマンスに、当時愛のない婚約を強いられていたシャーロットが憧れたのも本当だ。



「ええ。貴女を避ける私を見て殿下から叱られましたもの。……そして、王妃殿下の事も貴女に迷惑をかけました。私はある意味貴女に姑である王妃殿下から守ってもらっていたというのに」


「それについても私も妃殿下には何度も助けていただきました。そのお優しいお心にいつも感謝しておりました」


「───それも事実を知ってからの事ですわ」



 そうお互いの事を話した後、王太子妃は暫く黙ってシャーロットをじっと見た。



 ……やはりこれまでの私たちの蟠りの話をする為だけに、呼ばれた訳ではなさそうね。



 シャーロットもメリンダ王太子妃をジッと見ながら彼女の次の言葉を待った。



「───この王国では、昔から不思議な力で守られていましたわね。そしてそれはオルコット公爵家の持つ力だと、近隣の国々や私の祖国の王家でも知られた話でしたわ」



 シャーロットは表情を変える事なく王太子妃の話を聞き続ける。



「───この王国の……オルコット公爵家の持つ力は、他国ではかなりの脅威ですわ。けれど王国も公爵家も周りから攻撃などをされない限りはその力を相手に向ける事はない。

……けれど私の祖国では昔からその力に対抗する為に魔術の研究に力を入れ、たくさんの魔術師を輩出しておりますの」



 王太子妃はチラリとシャーロットを上目遣いで見ながら言った。


 シャーロットは、先日の王妃に仕えていたあの魔術師の事だわと考えながらも黙って話を聞く。



「……そしてその魔術師達の力合わせればあなた方の持つ魔女の力をも超えると考えているの」



 それを聞いたシャーロットは背筋がゾワリとした。



「───それはこの王国よりも……王太子殿下よりも、祖国を選ばれるという事ですか?」



 挨拶以外で初めて言葉を発したシャーロットを王太子妃は凝視した。


「───それは、貴女の家の力を確かめさせてもらってから。

 シェーラ! カーラ!」



 王太子妃が名を呼ぶと、後ろから現れた侍女2人が後ろに控えていたシャーロットの侍女から猫のゲージを奪い取り、中で寝ていたグレーの猫モリーに魔術をかけた。



「! 何をなさいますの!?」


「───魔術でその『猫』を私に隷属させたもらったのよ。この王妃殿下の猫は、これこらは私が飼わせていただくわ。義母の猫を義娘が預かるのは当然のことでしょう?」



 突然のメリンダの暴挙にシャーロットは信じられないと震えながら言った。



「───それは、勿論そうでございますが……」


「お義母様がこの猫を『魔女』だと仰ったそうね。どんな経緯で公爵家の魔女が王宮の猫になっていたのかは分からないけれど、これで世界を揺るがす力を私が手に入れたわ!」



 王太子妃は侍女から猫モリーを渡され、グレーの猫を腕に抱き満足げに見ながら言った。

 その様子をシャーロットは冷めた目で見つめて言った。



「───その力を、隣国の為に?」



「───馬鹿にしないで頂戴!」



 シャーロットの質問にキレるほどの鋭さを持って返された。

 王太子妃メリンダはキッと目を釣り上げてシャーロットに言った。



「───今の私はレイモンド殿下の妻よ。私はあの方の為に力を使うわ。

……安心して。力を奪ってもオルコット公爵家は悪いようにしないわ。これから王妃となる私が貴女に特に目をかけてあげるわ」



 メリンダは勝ち誇ったようにそう宣言した。



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― 新着の感想 ―
えー それ本当に本心かなあ 貴族とか王族でしょ 保身のためなら泣いて土下座くらい朝飯前だと思うけど つまりいざとなれば国内の重要メンバーを嵌めて潰すくらいのことを平気でやる人ですってことなんだから ち…
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