お茶会の招待
シャーロットはドキドキしながらアマンダを見た。
「───近衛騎士団のブルーノ モットレイ様よ」
頬を染めながら答えるアマンダに、シャーロットはバアっと顔を綻ばせる。
「───まあ! そうなのね。おめでとう、アマンダ!」
……では、クラレンス様が仰っていたようにブルーノ様はアマンダにアプローチをしていったのね。
そして、同じようにブルーノ様の事が気になっていたアマンダと想いが通じ合ったのだわ。
帰ったら早速クラレンスに報告しなければと、シャーロットはとても嬉しい気持ちになる。
「……実はもう彼にプロポーズもされたの。それで昨日は両親に挨拶にも来てくれて……。両親も思っていた以上に彼とは気が合ったようで、このまま話を進めていこうと決まったところよ」
「まあ、それでは昨日決まったところなのね。話してくれてありがとう、アマンダ。本当におめでとう!」
「……ニャアーオ」
その時窓の空いていたベランダからグレーの猫がのそりと部屋に入って来た。
「……あら? シャーロット。公爵邸で猫を飼い始めたの? ……? あら、この猫ってもしかして……」
グレーの猫はゆっくりと近付き、たんっとジャンプしソファに座るシャーロットの膝に乗る。
「───そう。この子は王妃様の飼われていた猫よ」
「! ……やはりそうなの? 確か王妃様は療養の為遠方の離宮に行かれたのだったわね」
王家からの謝罪の後に王妃とエドワルドから責められたあの日。レイモンド王太子は母と弟に激怒していた。そしてその怒りは国王陛下にも向けられた。
そして王妃は遠方の離宮へ、エドワルドは辺境の地へ予定より先倒しで送られた。
国王陛下も近い内に退位する事になり、今の王宮はレイモンド王太子の即位に向けて動き出している。
「……ええ。それで王妃殿下は飼えないからと、私がこの子をお預かりする事になったの」
あの日シャーロットはグレーの猫モリーことブレンダを一時預かり連れて帰った。しかしその後猫を『魔女』だと騒ぎ続ける王妃を見て王宮に戻すのはよくないと判断したレイモンドから公爵邸で飼ってもらえないかと打診がきたのだ。
「王妃殿下はエドワルド殿下が色々やらかした事で大層お悩みになられていたと専らの噂よね」
「───そうね。国王陛下も王妃殿下に付き添う為に退位を考えられたそうよ。レイモンド殿下のご即位も思っていた以上に早かったわね」
レイモンド王太子はクラレンスより一つ年上。若くして国王になる事になる。
「───一時はシャーロット、貴女に王太子殿下との縁談の打診があったのだものね。もしかして今シャーロットが王妃になっていたのかもしれないわね」
「……『もしかしたら』なんてないわよ。そんな事を言っていたら王太子妃メリンダ様が気を悪くされるわ。
───明後日、お会いするというのに」
思わずため息を吐くシャーロットにアマンダは苦笑する。
「高位貴族のご令嬢方を集められての、王太子妃主催のお茶会となれば断る訳にもいかないものね」
そして高位貴族である2人は勿論それに招待されている。
「王太子妃殿下は今まではどちらかというと同年代以上のご婦人方を中心の茶会が多かったですものね。……もうすぐ王妃となるからこれからの若い世代との交流を大事にされるという事なのでしょうけれど……」
そうなると、筆頭公爵家の後継娘であるシャーロットや侯爵家後継のアマンダが招待されるのは納得ではあるのだが……。
「───シャーロットはエドワルド 殿下の婚約者として何度も王宮に行っていたけれど、義理の姉妹になる予定だったメリンダ妃とはそれ程関わりはなかったのよね?」
「───ええ。後で聞くとレイモンド殿下の元婚約者候補だったからと距離を置かれてしまっていたそうなのよね。
でも、悪い方じゃないのよ。王妃様に絡まれる私に何度も助け舟を出してくださったし。……まあそれも、初めは私が王妃様に可愛がられていると勘違いされていたようなのだけれど」
苦い顔で言うシャーロットを見たアマンダも苦い顔になった。
「……何も知らなければ、そう思うかもしれないわね」
「ええ。王妃様はレイモンド殿下は将来の王だから何も言わない。けれど自分の子供として育てたエドワルド殿下は目に入れても痛くない程可愛がっておいでだったから、姑としては私が気に入らない存在だったようなのよ」
「……つくづく王妃としての自覚のない方だったという事よ。
───王太子妃殿下がどう動かれるかは分からないけれど、筆頭公爵家の後継の機嫌を損ねて良しと考える程愚かでない事を祈るわ」
「ナァーオ」
グレーの猫モリーがアマンダの話に返事をするように鳴く。
アマンダとシャーロットは目を合わせた。……そしてふふと笑い合う。
「まあ、ふふ。今その猫は返事をしたわよ」
「そうね。この子は王妃様の猫だったからすべて見て知っているのよ」
「……猫といえば元々は王太子妃殿下が王宮に猫を持ち込まれたのよね」
アマンダが思い出したように言った。
「───ええ。明後日は妃殿下の猫とも対面出来るわね。……楽しみだわ」
シャーロットの白猫時代には会えなかった王太子妃メリンダの猫。
猫同士で会えなくて残念だけれど、と思いながら膝の上のグレーの猫モリーを撫でるシャーロットだった。




