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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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グレーの猫の役割


 ……言ってしまったわ……



 シャーロットはクラレンスを真っ直ぐに見ながら自分の想いを告げた。……自分の頬も、耳までもが火照って熱い。

 ……しかし彼はそのまま暫く動かなかった。



「あの、……クラレンス様……?」



 心配になったシャーロットが呼びかけると、クラレンスの顔がぼんっと真っ赤に染まった。



「シャーロット嬢……。……本当に、……私で良いのでしょうか。これは、現実なのでしょうか……」



 まるで自分に言い聞かせるかのように早口で呟いた。

 普段見せないクラレンスの動揺した様子にシャーロットは胸がぽわりと温かくなった。



「クラレンス様……。私は貴方が良いのです。突然現れた白猫を守ってくれた貴方が……。私はそんなクラレンス様と共に居たいのです」


「ッ! シャーロット嬢……」



 シャーロットが頬を染めながらニコリと微笑むと、クラレンスは立ち上がり彼女のその前に跪いた。



「───私は5年前から貴女を、そして白猫ロッティにも何故か好ましい感情を抱いて居ました。……私を選んでくださってありがとうございます。……シャーロット様」



 クラレンスはそう言ってシャーロットの手を取りキスをした。



 今度はシャーロットの顔が真っ赤になった。そしてクラレンスはそんな彼女を愛しげに見つめた。

 そして見つめ合ったまま2人の距離はゆっくりと近付いて……。



『……はーい、そこまで!!』



 それまでシャーロットの隣のソファで寝ていたはずのグレーの猫モリー、……魔女ブレンダがムクリと起きたかと思うとシャーロットの膝に乗り2人の間に素早く割り込んだ。



「ッ! ブレンダ! ……起きていたのね」



 見られていたのかとシャーロットは少し動揺し手をクラレンスに取られ固まったままグレーの猫を見る。



「───当たり前だろう? 結婚前の男女を2人きりになんてさせるはずがない。……いわばこれは2人がゆっくり話が出来るようにと私とトラヴィスからの気遣いだよ」


「ブレンダと……お父様の?」



 グレーの猫はシャーロットの膝に座り込んで2人の顔を見た。



「───一応、トラヴィスなりにこの3年の事を悪いと思っていたんだろう。……クラレンスには3年前の約束を果たす為、そしてシャーロットも今回の件でクラレンスを気に入っていたようだからね。その為の軽いお膳立てだよ」


「───公爵閣下が……。ずっと私の事も気にかけてくださっていたのか……」


「シャーロットの心次第だったがね。とりあえずこの娘が素直になれるような状況は作ってやったのさ」


「ブレンダ……。ありがとう」


「───ああ。だから……」



 グレーの猫はムクリと体を起こし、未だシャーロットの手を握り続けているクラレンスの手を前脚でバシッと叩く。



「この手をお離し! まだ婚約もしていない男女が密室で手を取り合うなんて、このブレンダが許さないよ!」


「! ブレンダったら、そんな身も蓋もない言い方しないで」



 シャーロットはまるで自分達が密会中かのように言われて恥ずかしくなった。



「その為のお目付け役だからね、私は」



 ブレンダはフンと顔を逸らす。その様子を見ながらシャーロットは照れながらも手を離した。

 しかし手を離されたクラレンスはショックを受けた顔をした。



「……公爵閣下は私を信用してシャーロット様と2人にしてくださったのでは」


「はん。今回2人きりになれたのは私が一緒にいるからに決まってるじゃあないか。そうでなければあのシャーロットに過保護なあの男がそんな事を許すはずがない。

……今までエドワルドとも2人きりなんて一度もさせてはいなかったからね」



 始めショックそうな顔をして聞いていたクラレンスだったが、シャーロットがエドワルドと2人きりになっていなかったと聞いて安堵し嬉しそうな顔をした。



「───それは、公爵閣下に心から感謝を」


「───まあ、あの男はアナベルとシャーロットに関してはとことん溺愛してるからね。その点は信用している。……たまに馬鹿もやらかしたけれど……、まあそれも愛故にだと考えれば許容範囲なのかもねぇ」



 『馬鹿』とはミシェルの母との契約結婚の事だろう。娘シャーロットを守りたくて『オルコット公爵家の力』の持ち主である公爵夫人を得ようと暴走してしまった件。



「……それについても、お父様とこれからはお互いきちんと話し合っていこうと決めたの。

……クラレンス様も、お互い色んな事を話し合う関係になってくださいますか?」


「勿論です。私は貴女と分かり合いたい。言葉を交わさなければ通じない事は今回白猫ロッティと過ごしてよく分かりましたから」



 シャーロットはキョトンとしてクラレンスを見る。



 ……確かに、白猫の時は言葉が通じずに苦労した。

 そしてそれはクラレンスが白猫の言葉を理解出来るようになった後、父や副師団長ダニエルと全く話が噛み合わなかった所を実際に見て感じたのだろう。


 ───実際に正しく言葉を交わす事の大切さを。私達は父や白猫の事から深く理解したのだ。



 シャーロットは頷いてクラレンスを見て微笑んだ。


 クラレンスも頷きシャーロットの手を取ろうとして……、グレーの猫にペシリと叩かれたのだった。


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